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*新作 完結* 本棚の向こう側  作者: Terra
◆ 一途の軌跡はぐねぐね ◆
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         *




「あっ……」


 まばたきした時には、棚裏につけられているはずのストッパーがズレてしまっているのが見えた。ただ、それだけだった。


 碧生はそれに触れようとするも、伸ばした右手にブックマーカーが、左手にはノベライズ本が遮っていた。しかし店員を呼ぶ気になれず、羽織っていたシャツの胸ポケットにブックマーカーを差すと、ストッパーの位置を適当に直し、本を棚に返した。


 席に戻る頃、アイスコーヒーを置いて戻るいつもの店員とすれ違った。

 ノートパソコンにつくと、デスクトップにある作品をまとめたファイルを開き、その中の一番古いデータを選んでいく。そしてスマートフォンに連絡先を開き、ある名前の下の通話ボタンをタップすると、さっさとイヤフォンを着けた。


 延々とコールが続くのも無理はなかった。もしかすると出ないかもしれない。そう過ったのも束の間、プツリと音が途切れた。ふと、バタフライピーの色の変化と重なるように熱いものが胸で溶けて広がっていく。


「んもう……睡眠妨害してまで何ぃ……」


「ごめん、帰国いつだっけと思って。迎えに行く」


 パートナーの声が止まった。十六時間時差の中を叩き起こしてまで訊きたいことでは、絶対にない。でも、付き合いの長さは期待を裏切ったことはなかった。


「三十一日の昼に飛ぶから、そっちに着くのは次の日のおやつ時だねぇ。何でよ」


「書いてほしい。また一緒に」


 何もかもすっ飛ばした話し方をしても、この人には通じる。それでも、読み込みが長いコンピューターのように、声は一度聞こえなくなった。その間、碧生は無意識に手にしていたスカイブルートパーズと向き合い続けた。


「……条件アリ。私情を挟んだら終わりだーってビジネス的にやるなら却下。あとグロイのと、流行りを追いかけまくるのも。えーっとそれから――」


「絶対しない。誓う」


 碧生は被せて跳ね除けると、ブックマーカーを握った。時間に空白ができると、パートナーの顔を石の中にじっと見つめ、ふんわりと口を開いた。


「俺が書くのは、“思い出になる小説”」






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