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天辺までびっしりと弧を描いて納まる本の数に、碧生は眉をひん曲げる。そこへ、横に据えられた黒い球体に気がついた。見るからに地球儀であり、金色の光で大陸を成していてとても美しく、その特徴にあっと閃く。
「国際博覧会の関係者と取引でも? これ、当時の展示品にそっくりですが。レプリカですか?」
そう問いかけると同時に、ガアアッと、何かの声に身体が震えた。碧生は目を左右させ、その出所を宙に探っていく。と、タパタパと音が聞こえてきた。
奥の暗がりから壁に沿ってカーブを描いて飛行するカラスは、碧生の頭上を見下ろしてはカウンターに着地する。その先にはヴェーラが立っており、そばには言われた通り、アイスコーヒーが出されていた。
「よくそのように表現されますが、それは当館のただの“珠玉”なまででございます」
ストンと抜けてきた館長の声に、碧生はまばたきを思い出すと、もう一度それを見つめた。
ゆっくりと回転をしながら見せるのは、金色の光の点滅やうごめき、ゆらゆらとした筋だ。“夜の地球”として表すならば、飛行機から人工的な光によって大陸が浮かび上がっている景色を見ているようだ。
「光が動くなんて。意思でもあるようで、よくできてますね」
「さすがは豊かな感性でいらっしゃる。貴方からもまた、いいお話がうかがえそうですね」
館長はサッと、向いのアームチェアに手を差し伸べる。ヴェーラとは真逆で、横のカラスは酷く愛想がない。ずっと目を尖らせ、落ち着きなく羽を震わせると、端の止まり木にコツコツと歩いていってしまう。その間も、碧生を横目に見たままだ。
「えーっと? 衛生面は問題ないんスか、そこ?」
碧生がそこの二人を順に見ると、ヴェーラが自信満々の笑顔でうなずいた。
「ご心配をおかけして申し訳ございません。でもご安心下さい。ポストマンには水晶が備わっております。純水のように透明なそれは、“表現者さん”のお悩みを捉えるだけでなく、あらゆる場所の浄化にも対応しておりますので」
そう言うとヴェーラは、カラスが歩いたところに手を添えた。キラキラと細かな白い光が、カウンターにまたたいて吸い込まれていくと、碧生の驚く顔がそこに艶やかに浮かび上がる。
その時、ギイイッと椅子が軋んだかと思うと、碧生はまたその瞳に捉えられた。
「今のご自身のやり方を見直そうかどうか、というところで立ち止まっておられるようですが、碧生さん。貴方は“なぜ書くのですか?”」




