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「小説は文章しかないから、とにかく特徴をしっかり書いて分かりやすくしたい。あと映像やから分かることも、小説やと文章にせなダメでしょ。だから何が理由でキャラがそう動いたとかも、僕は気にして書きたいところ」
どの書き方も、自分の頭に流れる映像を読者に見てもらうためであり、最終目的は楽しんでもらいたいの一択だ。だが緋向は、深々と息を吐くとレモネードを飲み干すと、言い足した。
「そない言いながらも、そうやって色んなキャラの動きを考えて書いてたらね、あのジャンル書いてみたいなってなってまうんですわ。で、その欲に負ける」
そこへ、カラスの声が響いたかと思うと、大きく羽ばたく音がした。何事かと緋向は顔を上げると、頭上を広々と周るカラスがもたらす眩い光に、キュッと目をつむってしまう。ぼわああと何かが低く迸る音に続き、カッと燃えるような赤い光をまぶた越しに受けた。
とろとろと目を開くと、館長の左手にゴールドと赤の光が煌めいた。
「情熱的なガーネット」
ふわりと差し出されると同時に、赤い石が揺れるブックマーカーに光の筋が走る。
緋向が目を奪われ、なかなか触れられないでいると、館長はそれをカウンターにそっと立てて見せた。
「多くの疑問を抱けることもまた、一つの才能ではありませんか」
緋向は幾つもの細かい光が集まる館長の瞳に、若干たじろいでしまう。
「このパワーストーンは努力を実らせ、前向きになれる力と情熱を高めてくれます」
「……もしかしてこれ、玄関灯をモチーフにしてます?」
「よくお気づきで。当館は、そのお心をパワーストーンという形のランタンに仕上げて差し上げる場でもあります」
緋向は息をこぼすと、小さな街灯になるブックマーカーの足元を揺らす。先端のガーネットが炎のようで、胸が熱くなる。
「ほんでも僕、ここんところあんま本読まへんくて。もっぱらフォロワーさんのウェブ小説ばっかり。紙の本を買って読むっていう時間がなかなか……それに、これはめっちゃ魅力的ですけど、僕が持ってておかしないですか?」
可愛い雑貨がこんな自分に合っているのか。その気持ちを妨げるように、カラスの声が甲高く響き渡る。何かを強く訴えかけるよう雑に羽を鳴らす態度に、館長がしーっと息を立てると、また緋向に向き直った。
「相応しいですよ。貴方の誕生石でもあり、まさにそれらしい」
あっと、緋向は口を開けた途端、気になっていたものが湯気のように消えていく。
「原稿の上では役者になれと聞いたことがあります。ならばその情熱はよく働くでしょう。あらゆる視点に立ちながら、何かを感じ取るところを見せる。それは誰かだけでなく、貴方にとっての道標にもなる。本当は夢にお熱いのですから、様々試してみて下さい」
試す――その言葉がトツと、緋向の胸に打ち留められた。夢までの道のりが遠い理由をガーネットの中に探っていく。するおt、シュワシュワと何かが注がれる音がした。
「緋向さんのお話をうかがっていると、日頃からたくさんのことを、とてもよく気にかけておられるのだなと思いました。それをもっと周りの方々に知って頂きたいものです。ご自身の立場や、例えば度々気にされている年齢などは、実は関係ないのかもしれませんよ」
ヴェーラの声に導かれるように、緋向はブックマーカーを握った。周りからの光を授かるその輝きは、より漲っている。
誰かを楽しませたり、笑わせたりしたい。それを成功させるために、まだ試せていないことは何か。沸き上がる疑問は、三杯目のレモネードの泡に乗って浮かんでいく。
グラスを掴んで一気に飲み干すと、カウンターに打ちつけた。
「ごちそうさまでした。なんか……これまでとはもっと別のモンを思い出せた気ぃします。まぁ、ここは色んな意味で謎めいてて怖い部分もまだありますけど、来れてよかったです」




