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一つまばたきした途端、温かな木漏れ日の眩さが射すとともに、仄かな香ばしさが鼻をくすぐった。
「ふぇっ!? へっ!?」
本棚の前にいたはずだというのに、どういうわけか陽が降り注ぐ中に立ち尽くしていた。
温かい風に草木がざわざわする中、目前にどっしりと構える巨大な茂みに呆気にとられる。正面を進んだ先には玄関灯と二枚扉があった。見上げれば青空がうかがえるが、木々が生い茂り、建物の広さに終わりを感じられない。
晴はそろそろと、石畳の道に小さな歩幅をきざんでいく。なんとなく湿った土の匂いに振り向かされると、両側に広がるレンガ張りの地面を縁どるように、春らしい花が点々と咲いていた。
「誰かの家?」
扉の前まで来ると、右側に立つゴールドの柱をした玄関灯を見上げた。表札も呼び鈴も無い。だからといって、そわそわして引き返そうだなんていう理由も無い。
ここがもし噂の場所ならば――そう過るだけで胸がドキドキする。先ほどまでは、紙や画面上で不思議な出来事をこの手で書いてきた。でも今は、信じられない出来事が実際に起き、体験している。肌がぞくぞくしてきた。
晴は扉の鉄輪を引いてみたものの、開かない。何度か引っ張ってみても、やはりダメかと諦めかけたその時、手元が吸い込まれるように扉が向こう側へ開いた。
「あら、もうおいで下さったのですね! おはようございます」
「わっ! え、あ、おおはようございます。あの……」
気さくに現れた人を前に、晴はどうしてよいか分からなくなる。
「お待ちください。お履物を準備しますね」
「え、ああ……そっか何も履いてないや……」
家にスリッパはあるものの、あまり履いて過ごしていない。こんな時のためにも履く癖をつけておくべきだったと、晴は少々もじもじする。
扉の影にしばし隠れた黄色い服の人は、手際よくボア付きのルームシューズを床に差し出すと、愛らしい笑みを浮かべた。
「さあどうぞ」




