7日目 ゲーム大会
7日目。
夜。
暇だ。
終末世界って、もっと毎日ゾンビと戦う感じかと思ってた。実際は違う。めちゃくちゃ暇。もちろん危険はある。でも田舎だからか、外を徘徊してるゾンビはそこまで多くない。自衛隊も定期的に巡回してるし、バリケード内にいれば基本安全。
結果、暇。圧倒的暇。
俺が部屋でゴロゴロしながらプラモを眺めていると、廊下から声が聞こえた。
「前田さーん!」
奏子さんだ。
「はいはーい」
ドアを開けると奏子さんがニコニコしながらゲーム機を持っていた。
「今日、みんなでゲーム大会するんですけど来ます?」
「ゲーム大会?」
「はい! もう停電も直ったし、たまには楽しいことしようって!」
……ゲーム大会。なんか久々に平和な響きだ。
「行きます」
即答だった。
だがその前に、俺には重要な使命があった。
「ちょっと待ってください。腹減ってると本気出せないんで」
「前田さん、ゲームに命かけてません?」
「当然です」
俺は真顔で答え、自室へ戻る。
冷蔵庫を開ける。
ソーセージ。
卵。
冷凍チャーハン。
「勝ったな」
フライパンに油を引き、ソーセージを焼く。
ジュゥゥゥゥッ!!
たまらん
肉が焼ける音ってなんでこんなテンション上がるんだろう。焼き目がついたところで冷凍チャーハン投入。
ガガガガガッ!!
フライパンを振り、米が跳ねる。香ばしい匂いが部屋中へ広がった。
さらに卵を落とし、半熟気味に絡め、ブラックペッパーをガリガリ。
完成。
「深夜ゲーム用ジャンク飯セットだ」
名前は今考えた。
俺は大皿へ盛り、ついでにポテチとジュースも抱えてロビーへ向かう。
「うわ、めっちゃ美味そう!」
奏子さんが目を輝かせた。
「食います?」
「いいんですか!?」
「その代わりゲームで手加減なしです」
「うわ最低!」
みんなで笑いながら席へ着く。
テレビの前にはゲーム機。大量のお菓子にジュース。なぜか筋肉ムキムキのおじさんまで正座待機している。
「お、前田くん来たか!」
「今日は負けねぇぞ〜!」
「いや俺そんな強くないですよ?」
まあ嘘だ。実はちょっと自信ある。ゲームだけは。
第一種目。レースゲーム。
「いっけぇぇぇぇ!!」
「うわっ! バナナ置くな!!」
「ズルいズルい!!」
ロビーが大騒ぎになる。子供たちは大爆笑。おばちゃんまで本気で叫んでる。終末世界とは思えない光景だった。そして俺は普通に強かった。
「前田さんうまっ!?」
「フッフッフ……」
俺はドヤ顔する。
実は昔かなりやり込んでいたのだ。
続いて格ゲー。これも俺が強い。
「うおおおコンボぉぉ!!」
「待って待って待って減りすぎ減りすぎ!!」
奏子さんがボタン連打しながら悲鳴を上げる。
「甘いですね」
「なんか今だけ妙にイキイキしてません!?」
「気のせいです」
俺は真顔で答えた。だが内心めちゃくちゃ楽しい。久々だ、こんな騒ぐの。こんな笑うの。ゾンビが出てから、みんなずっと“静かに生きてる”感じだった。でも今日は違う。
「そこだぁ!!」
「ぎゃーーー!!」
「卑怯! 投げキャラ使うな!」
「勝てばよかろうなのだ」
カオスだった。途中、おじさん住人が何故か異常に強いことが判明。
「なんでそんな上手いんですか!?」
「昔ゲーセン通ってたからなァ!」
妙に説得力がある。しかも奏子さん、負けず嫌いだった。
「もっかい! もっかいです!!」
「えぇ……もう十連敗ですよ?」
「次勝てば実質勝ちです!」
意味不明理論。だが楽しそうなのでよし。
夜も更け、お菓子のゴミが山になり、ジュースも空になる。俺の作ったチャーハンもいつの間にか完食されていた。
「前田くん、あれうまかったぞ」
「店出せるわよ〜」
「へへっ、まあ当然です」
ちょっと嬉しい。
みんな笑い疲れていた。すると子供の一人がぽつりと言った。
「なんか、昔みたいだね」
その言葉で、一瞬だけ場が静かになる。
……昔。
パンデミック前。
普通だった頃。
でも、その空気を壊すみたいに奏子さんが笑った。
「じゃあ次、協力ゲームやりましょう!」
「お、いいねぇ!」
「前田くん絶対裏切るタイプだろ」
「いやいや信用してくださいよ」
「一番信用できない」
「なんで!?」
また笑いが起きる。俺もつられて笑った。なんだかんだ、こういう時間があるから、まだ人間でいられるのかもしれない。
その夜、俺は久々に、“ゾンビがいる世界”ってことを少しだけ忘れていた。




