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ゾンビ世界でも慎ましく生きたい  作者: 小説書こう


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7/15

7日目 ゲーム大会

7日目。


 夜。


 暇だ。


 終末世界って、もっと毎日ゾンビと戦う感じかと思ってた。実際は違う。めちゃくちゃ暇。もちろん危険はある。でも田舎だからか、外を徘徊してるゾンビはそこまで多くない。自衛隊も定期的に巡回してるし、バリケード内にいれば基本安全。


 結果、暇。圧倒的暇。


 俺が部屋でゴロゴロしながらプラモを眺めていると、廊下から声が聞こえた。


「前田さーん!」


 奏子さんだ。


「はいはーい」


 ドアを開けると奏子さんがニコニコしながらゲーム機を持っていた。


「今日、みんなでゲーム大会するんですけど来ます?」


「ゲーム大会?」


「はい! もう停電も直ったし、たまには楽しいことしようって!」


 ……ゲーム大会。なんか久々に平和な響きだ。


「行きます」


 即答だった。


 だがその前に、俺には重要な使命があった。


「ちょっと待ってください。腹減ってると本気出せないんで」


「前田さん、ゲームに命かけてません?」


「当然です」


 俺は真顔で答え、自室へ戻る。


 冷蔵庫を開ける。


 ソーセージ。


 卵。


 冷凍チャーハン。


「勝ったな」


 フライパンに油を引き、ソーセージを焼く。


 ジュゥゥゥゥッ!!


 たまらん


肉が焼ける音ってなんでこんなテンション上がるんだろう。焼き目がついたところで冷凍チャーハン投入。


 ガガガガガッ!!


フライパンを振り、米が跳ねる。香ばしい匂いが部屋中へ広がった。


さらに卵を落とし、半熟気味に絡め、ブラックペッパーをガリガリ。


 完成。


「深夜ゲーム用ジャンク飯セットだ」


 名前は今考えた。


 俺は大皿へ盛り、ついでにポテチとジュースも抱えてロビーへ向かう。


「うわ、めっちゃ美味そう!」


 奏子さんが目を輝かせた。


「食います?」


「いいんですか!?」


「その代わりゲームで手加減なしです」


「うわ最低!」


 みんなで笑いながら席へ着く。


 テレビの前にはゲーム機。大量のお菓子にジュース。なぜか筋肉ムキムキのおじさんまで正座待機している。


「お、前田くん来たか!」


「今日は負けねぇぞ〜!」


「いや俺そんな強くないですよ?」


 まあ嘘だ。実はちょっと自信ある。ゲームだけは。


 第一種目。レースゲーム。


「いっけぇぇぇぇ!!」


「うわっ! バナナ置くな!!」


「ズルいズルい!!」


ロビーが大騒ぎになる。子供たちは大爆笑。おばちゃんまで本気で叫んでる。終末世界とは思えない光景だった。そして俺は普通に強かった。


「前田さんうまっ!?」


「フッフッフ……」


 俺はドヤ顔する。


 実は昔かなりやり込んでいたのだ。


 続いて格ゲー。これも俺が強い。


「うおおおコンボぉぉ!!」


「待って待って待って減りすぎ減りすぎ!!」


 奏子さんがボタン連打しながら悲鳴を上げる。


「甘いですね」


「なんか今だけ妙にイキイキしてません!?」


「気のせいです」


 俺は真顔で答えた。だが内心めちゃくちゃ楽しい。久々だ、こんな騒ぐの。こんな笑うの。ゾンビが出てから、みんなずっと“静かに生きてる”感じだった。でも今日は違う。


「そこだぁ!!」


「ぎゃーーー!!」


「卑怯! 投げキャラ使うな!」


「勝てばよかろうなのだ」


 カオスだった。途中、おじさん住人が何故か異常に強いことが判明。


「なんでそんな上手いんですか!?」


「昔ゲーセン通ってたからなァ!」


 妙に説得力がある。しかも奏子さん、負けず嫌いだった。


「もっかい! もっかいです!!」


「えぇ……もう十連敗ですよ?」


「次勝てば実質勝ちです!」


 意味不明理論。だが楽しそうなのでよし。


 夜も更け、お菓子のゴミが山になり、ジュースも空になる。俺の作ったチャーハンもいつの間にか完食されていた。


「前田くん、あれうまかったぞ」


「店出せるわよ〜」


「へへっ、まあ当然です」


 ちょっと嬉しい。


 みんな笑い疲れていた。すると子供の一人がぽつりと言った。


「なんか、昔みたいだね」


 その言葉で、一瞬だけ場が静かになる。


 ……昔。


 パンデミック前。


 普通だった頃。


 でも、その空気を壊すみたいに奏子さんが笑った。


「じゃあ次、協力ゲームやりましょう!」


「お、いいねぇ!」


「前田くん絶対裏切るタイプだろ」


「いやいや信用してくださいよ」


「一番信用できない」


「なんで!?」


 また笑いが起きる。俺もつられて笑った。なんだかんだ、こういう時間があるから、まだ人間でいられるのかもしれない。


 その夜、俺は久々に、“ゾンビがいる世界”ってことを少しだけ忘れていた。

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