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ゾンビ世界でも慎ましく生きたい  作者: 小説書こう


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4/15

4日目 非日常

さて、イレギュラーばかりだったがこれが俺の日常だ!

え?なに、もっとイレギュラーな日常を見せろって?

お前らそっちの方が気に入っちゃったのかよ

まあいいぜ、暇だしじゃんじゃん教えてやるよ


4日目、今日は比較的平和だった。

朝起きてもゾンビは少ないし、幻覚もなし。

筋トレも完遂。昼飯の焼きそばもうまかった。

……だから油断したんだと思う。

夕方頃、俺が部屋でダラダラ動画を見ていると、アパートのインターホンが鳴った。


ピンポーン。


続けて、放送用スピーカーから声が響く。


『市の物資支援でーす。食料配給に来ましたー』


「おお!?」


俺は思わず立ち上がった。食料配給はこのご時世じゃ神イベントだ。廊下へ出ると、住人たちもワラワラ出てきていた。


「久しぶりですねぇ」


「缶詰あるかな」


「トイレットペーパー欲しいわぁ」


みんなちょっと浮かれている。そりゃそうだ。終末世界では“無料で物資が来る”ってだけでテンションが上がる。バリケード前にはトラックが停まっていた。自衛隊マーク入り。そして隊員らしき男が二人。

一人は普通だった。日に焼けた顔。ゴツい防弾ベスト。いかにも現場帰りって感じ。

だが、もう一人。そいつを見た瞬間、俺は妙な違和感を覚えた。……瞬きをしない。男は住民へ物資を渡しながら、じっとこちらを見ている。無表情。異様なくらい無表情。


「次の方どうぞぉー」


声も妙に平坦だった。なんか怖い。

いや、考えすぎか?この世界、みんな疲れてるしな。

でも。でもなんか変だ。俺の順番が来る。


「はい、支援物資です」


男が段ボールを差し出してくる。距離、一メートル。

近い。すると男の口元が、わずかに開いた。


「あ゛」


――今!今、変な声した!

俺は固まる。


「どうしました?」


 普通の隊員が聞いてくる。


「……い、いや」


気のせいか?

でも確かにゾンビっぽい声が。俺は恐る恐る、無表情男を見る。するとそいつの首が、カクン、と傾いた。

不自然な角度。


「っ……!」


ゾワッと寒気が走る。その瞬間だった。隣のおばちゃんが笑いながら言った。


「お兄さん全然瞬きしないねぇ」


場が少し和むが男は笑わない。


ただ、おばちゃんを見つめる。じぃっ、と。瞬きせず。数秒後。


「……ああ」


男はゆっくり答えた。


「疲れているので」


声が遅い。なんか変だ!やっぱ変だ!俺は段ボールを抱えながら、一歩下がる。


その時、男の手が見えた。

包帯が巻かれている。赤黒い染み。噛み跡みたいな形。


「っ!?」


思わず息を呑む。すると男が、ゆっくり俺を見る。目が合った。濁ってる。いや濁って見えた。

瞬間、世界がグニャリと歪んだ。


 ――来た。


 幻覚。


「うわっ……!」


 視界がオフィスへ変わりかける。


まずいまずいまずい!!こんなタイミングで!?

だが今回は違った。オフィスじゃない。真っ暗な廊下。宅配員だけが立っている。


 ピンポーン。


 ピンポーン。


 ピンポーン。


インターホンが延々鳴っている。


『お届け物でーす』


暗闇の中から声が響く


『開けてくださーい』


近づいてくる。


『開けて』


『開けて』


『開けて』


 ヤバい


 怖すぎる


 俺は後退る


 だが足が動かない


 宅配員の顔が近づく


 無表情


 瞬きしない。


 そして口が裂け――


「前田さん!!」


 肩を掴まれた。


「はっっ!!」


視界が戻る。よかった!現実だ。奏子さんが心配そうにこちらを見ている。


「大丈夫ですか? 顔真っ青ですよ?」


俺は荒い息を吐きながら周囲を見る。普通の住人たち。普通の配給。普通の夕方。……無表情男は?

見ると、もうトラックの荷物を積み直していた。その時、男がこちらを向いた。

そして。ニタァ、と笑った。俺の背筋が凍る。

次の瞬間、男は普通にトラックへ乗り込んだ。

エンジン音。そのまま車は去っていく。誰も何も気にしていない。


「…………」


俺だけが、その場で立ち尽くしていた。あれは。

幻覚だったのか?


それとも――。

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