2日目 宗教かよ!?
2日目、昨日はとんでもねえイレギュラーが起きたから1日目の昼と夜はスキップだ!
とりあえず朝はいつもの習慣をこなし、そして昼
まずは飯の準備だ。
鶏もも肉を焼き、醤油+みりん+バターを投入し、ご飯に乗せ、卵黄やネギ乗せたら完成!
バター醤油チキン丼だ!
今もスーパーが開いてることに感謝だ。まあ、以前とは違って店員がとんでもなく重武装になって物騒になっている。店長なんかまさにシュワ⚪︎⚪︎ネッガーって感じになっている
とにかくいただきます!
熱々の鶏もも肉を噛んだ瞬間、まずバターの香りが一気に広がる。そのあと追いかけるように醤油の香ばしさが来て、ご飯が止まらない。皮目はカリッとしてるのに、中はちゃんとジューシー。
甘辛いタレが白米に染みて、そこに卵黄を崩すと一気にまろやかになる。ブラックペッパーをかけると味が締まって、急に“店のランチ感”が出る。
ネギのシャキッとした感じも意外と合う。
「簡単に作ったはずなのに妙に満足感あるな……」ってなるタイプの飯。食べ終わる頃には皿に残ったタレまで米で回収したくなる。
ごちそうさまでした!
そうやって食事を終え、ゆったりしていると「ピンポーン」部屋のインターホンがなった。俺は受話器に出る。
「五郎さーんいますー?」
相手はどうやら隣の部屋の奏子さんだった。奏子さんは生き生きとしていて可愛いい人だ。一緒にバリケードを作ったこともある。
「はいはい」
俺は早速ドアを開け、顔を出す。
「よかったー、実はまた"あの人ら"が来て困ってるんですよ。」
「ああ、まだですか。わかりました」
と奏子さんは俺の持病も知らずにお願いしてきた。言ってないのだから当たり前だが。
でも、俺は奏子さんのお願いに弱いためついついしたがってしまう。俺はビクビクしながらも玄関に置かれている土木作業時代に使っていた木柄 長柄 両口ハンマー 2.7kg、要はでっかいハンマーを肩に担ぎ、バリケードの玄関へ向かう。
外では2人の女と赤子を抱く女がいた
全員、妙に小綺麗だ。ゾンビが蔓延った今の時代じゃ逆に浮いて見えるくらいには。
「こんにちは〜。突然すみません。私たち、“救済の輪”という共同体で活動してまして〜」
うわ出た。俺は内心で顔をしかめる。最近たまに来る連中だ。ゾンビパンデミックで精神が参ってる人間を勧誘して回っている宗教団体。以前も来たが、俺の体格がいいってことで俺が追い返した
「間に合ってます」
俺は即答した。だが女は引かない。
「そんなこと言わずに〜。今の時代、不安ですよね?でも私たちは、“新しい命”こそ希望だと思ってるんです」
そう言って、赤ん坊を抱いた女が一歩前へ出る。俺は何気なく赤ん坊へ目を向け――固まった。赤ん坊の目が、濁っていた。白目が灰色に変色し、口元には赤黒い汚れ。小さな指先はピクピク痙攣し、呼吸も妙にガタついている。
そして。
「あ゛ー……ぁ……」
赤ん坊が、ゾンビ特有の呻き声を漏らした。
背筋が凍る。
嘘だろ。
赤子ゾンビだ。
しかも女は、まるで普通の赤ん坊みたいに優しく抱いている。
「この子、素晴らしいでしょう?」
抱いている女が、うっとりした顔で言う。
「感染したのに、まだ動いてるんです。これは神の奇跡なんですよ」
いや奇跡じゃねぇ。完全にバイオハザードだろ。俺は思わず後ずさった。するとニコニコ女が、さらに一歩近づいてくる。
「この子は無垢なんです」
「あ?」
「まだ何も知らない。罪もない。そんなこの子を怖がるなんて、おかしいと思いません?」
赤子ゾンビが口をパクパクさせる。小さい歯が見えた。心臓が嫌な音を立てる。
「この子に少し噛まれるだけでいいんです」
「……は?」
「祝福を受けられますから」
全身の毛穴が開いた。怖ぇ。マジで怖ぇ。
こいつら絶対イカれてる。赤子ゾンビが急に「ギチッ」と首を曲げ、俺の方を見た。
瞬間、俺の脳裏に最悪の想像が浮かぶ。
あれが飛びかかってきて――
首元に噛みついて――
感染して――
俺も「あ゛ー……」とか言いながら徘徊するのか?
無理無理無理無理!!
俺は反射的に、肩に担いでいた両口ハンマーを掴んだ。ガコン、と鈍い音。女たちの笑みが一瞬止まる。
俺は両手でハンマーを構えた。正直、腰は引けてる。
足も震えてる。呼吸も浅い。でも、それでも前へ向ける。
「……それ以上近づくな」
声が少し裏返った。クソダセえ。それでも勇気を出す
「帰れ」
スーツ女が、やれやれと言いたげに肩をすくめる。
「暴力はいけませんよ」
「うるせぇよ!!」
思った以上の大声が出た。俺自身がビックリする。
「赤ちゃんゾンビ抱えてる奴らに言われたくねぇ!!」
すると赤ん坊が突然、
「ギィィァァァッ!!」
と甲高い声を上げた。
「うぉっ!?」
ビビって俺は半歩下がる。その瞬間、赤子ゾンビが女の腕の中で暴れ出した。小さい手をバタつかせ、歯をガチガチ鳴らしている。しかも抱いていた女の腕に噛みつこうとしていた。
「きゃっ、もう〜元気ねぇ」
女は笑っている。完全に狂ってる。俺は寒気を覚えながらハンマーをさらに突き出した。
「マジで帰れ!!」
ガンッ!!
わざと地面へハンマーを叩きつけ、重い金属音が響いた。女たちの顔から、少しだけ笑みが消えた。俺は震えながら続ける。
「次、一歩でも近づいたら……!」
喉がカラカラだ。怖い。本当は今すぐ部屋へ逃げ帰りたい。でも奏子さんたち住人の後ろには子供も年寄りもいる。だから、やるしかない。俺は半泣きの顔のまま、ハンマーを構え直した。
「ぶっ叩くぞ、マジでぇ!!」
そこまで言うと、女たちはしぶしぶ後退し始めた。
「……また来ますね」
スーツ女が最後にそう言った。
「来んな!!二度と来んな!!」
俺が半泣きで怒鳴ると、女たちは赤子ゾンビを抱えたまま去っていく。
「あ゛ぅ……ぁ……」
赤子の呻き声だけが、妙に長く耳に残った。完全に姿が見えなくなった瞬間、俺は膝から崩れ落ちそうになった。
「はぁっ……はぁっ……」
ヤバかった。本当にヤバかった。
手汗でハンマーの柄が滑りそうになっている。心臓もまだバクバクだ。
だが――。
「……よ、よかったぁ〜〜〜……」
俺はその場で天を仰いだ。幻覚が起きなかった。それが何よりデカい。もし途中でアレが始まってたら終わってた。宗教女が急に会社の上司になったり、赤子ゾンビがオフィスチェアに座って「君も祝福されませんか?」とか言い始めたら完全に詰みだ。しかも今回は相手が赤子ゾンビ持ちの狂人集団。幻覚中に噛まれでもしたら笑えない。
「マジで……よかったぁ……」
俺は胸を押さえる。最近の俺にとって、“ゾンビに遭遇しない”より、“幻覚が起きない”方が重要まである。
ゾンビならまだ殴れる。逃げられる。鍵も閉められる。でも幻覚は違う。急に来る。場所も空気も全部塗り替えてくる。しかも最悪なタイミングを狙ったみたいに現れる。あれだけは、本当にどうしようもない。
すると後ろから、奏子さんがひょこっと顔を出した。
「五郎さん、ありがとうございます〜」
「……いえ」
「やっぱ頼りになりますねぇ」
ニコッと笑われる。
その瞬間、俺はちょっとだけ複雑な気持ちになった。
頼りになる、か。もしさっき幻覚が始まってたら、俺はハンマー持ったまま虚空に向かって叫んでた可能性すらある。そんな奴が“頼れる男”扱いされてるの、割と危うい。……まあ、言わないけど。
「じゃ、私は戻りますね〜」
「あ、はい」
奏子さんが去っていく。俺も部屋へ戻り、ドアを閉めた。
鍵確認。チェーン確認。窓確認。よし。安全。
俺はその場へ座り込み、深く息を吐いた。
「今日も……生き延びたぁ……」
ゾンビ世界二日目。
今のところ、一番怖いのは人間でもゾンビでもなく、自分の脳みそだった。




