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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第39話 リアのお願い事

登場人物のおさらい


マーカス

マルスの側近。苦労性の常識人。マギュロ家使用人八門、一門の出。


マルス・マギュロ

エドゥ王国 マギュロ家の長男。十七歳。軍の司令官。婚約者のマリア命の狂人。


ルーク・マギュロ

エドゥ王国 マギュロ家の次男。十二歳。人より神に近い超人。


リア・マギュロ

主人公。エドゥ王国 マギュロ家の三男。五歳。転生者。


リック

リアの初めての側近。十二歳。マギュロ家使用人八門、八門の出。


マリア・キュジラ

エドゥ王国 キュジラ家の長女。マルスの婚約者なので苦労人。


マーク 

マルスに忠誠を誓っている側近で、マルスが突然拾ってきた。使用人八門の出ではない。

 マーカスは、心の中でため息をついた。


 先程までリア様(坊ちゃま)が、マルス様とルーク様(若様)に“お願い”に来られており、たった今、部屋を退出なさったところだ。


 リア様(坊ちゃま)は、普通のお子様で、マルス様と違って可愛らしい。

 リア様(坊ちゃま)は、普通のお子様で、マルス様と違って素直でいらっしゃる。

 リア様(坊ちゃま)は、普通のお子様で、マルス様と違って年相応だ。

 リア様(坊ちゃま)は、普通のお子様で、マルス様と違って………。


 嗚呼、考え出すと切りが無い。

 リア様(坊ちゃま)の側近であるリックが羨ましい……。


 私は、マルス様の側近の中で最年長で、一番古くから仕えている。

 年は、マルス様の七つ上。マルス様が三つの時に、私は十歳だった。

 この時既に、マルス様は普通ではなかった。

 子供らしさは皆無。側近としての専門教育で相当優秀だと言われた私など足元にも及ばないほど聡明であり、ニコリともしない達観した御方だった。

 どうにか、置いていかれないように喰らいついて、寝る間を惜しんで勉強し、対等とまではいかないが、マルス様の意図を汲んだ対応が出来るように立ち回って来たつもりだ。


 弟君であるルーク様(若様)がお生まれになって、少しマルス様は変わった。

 多分、はじめて対等に話せる相手が出来たからだろう……って、これもどうかと思うが。

 何故なら、ルーク様(若様)もマルス様と同じく普通ではなく、いや、マルス様よりも更に優秀だったのだ。

 五歳違いの幼い兄弟が、理解できない次元の話をしている状況は、どこか異様で現実味がなかった。

 まぁ、流石に慣れたけれど……。


 そして、大きくマルス様が変わられたのは、マリア様に一目惚れされてからだ。

 本当に「お前誰だ?」くらいには、豹変された。

 目を離すと、マリア様に会いに脱走するので、あの頃は睡眠不足と疲労と心痛でボロボロだった思い出しかない。

 婚約の条件で、許可なくマリア様のご自宅に訪問してはいけない等、数多くのマルス様対策が入ったのは僥倖(ぎょうこう)だった。じゃないと、私は過労で死んでいた気すらする。


 チラリと右を見る。

 私の横には、同じマルス様の側近のマークが同じように控えている。


 通常、マギュロ家の側近は、使用人八門から選ばれる。

 マギュロ王国時代からずっとそうだったのに、こいつは違う。

 ある日、何処からかマルス様が拾ってきたのだ。

 何故マルス様に我々と同等に忠誠を誓っているのか、理由がわからない。

 そして、その忠誠心は、マルス様の全てを「是」とするものだ。

 側近なら、側近だからこそ、お止めしなければならない場面でもこいつは「是」と従う。

 お陰で、二手に分かれられた時には、私の苦労が二倍になるのだ。


 マークを忌々しく感じつつも、それを表には出さず、側近らしく静かに控え、マルス様とルーク様(若様)の方に意識を向ける。


「ルークよ。リアのお願いだが、何か考えはあるか?」

「うーん、そうだね。リアは優しいから、誰も傷ついたり、痛い思いをして欲しくないって言ってたよね。しかも、話を詰めたら北部の人間も出来れば……って、かなり大変な話だよね」

「そうだな。今の世で、敵味方全員が傷つかない方法はないだろう。あるとすれば、そうだな……フジー大街道を完全に封鎖してみるか? 特区も廃止して完全に国交断絶だな。物理的に地上での戦線は消滅すると言っても良い。どうだ?」

「なるほど! 流石兄さん!」


 頭が痛い。

 このお二人は、あの広大なフジー大街道を物理的に完全封鎖出来る前提で話をしていらっしゃる……。


「だが、それだと北に囚われている同胞を救う手立てがなぁ……」

「確かに……。リアは、同胞を救って欲しいとも言ってたものね」

「断絶後、私とルークで北に乗り込んで同胞を救ってくるのは簡単だが、時間がかかるしなぁ……。それだとマリアと居る時間が減ってしまうだろう?」

「そうだねぇ……。じゃ、違う方法を考えないといけないね」


 いやいやいや……。

 時間を掛ければ、お二人だけで乗り込んで同胞を救えるんですか?!

 簡単なんですか?!


 とりあえず、断念して下さって良かったと胸を撫で下ろす。


「ねぇ、兄さん。思うんだけどさ、痛みを感じる暇なく一瞬で敵を殺してあげるのはどうかな? 痛みを感じる前に死んでしまえば、痛い思いをした事にはならないんじゃないかな?」

「おお! それは良い!」


 おいおいおい……。

 この御兄弟の感性はどうなっているんだ。


「あ……でも、肉体的に傷付いた事になっちゃう?」

「そう言われてみれば……そうだな」

「うーん。魔法でどうにかならないかな? 肉体を傷付けずに痛みを感じさせずに殺す? ちょっと難しそうだなぁ」

「はははっ。我が弟ながら、なかなかの難題をお願いするな、リアは」

「うん、そうだね! リアのお願い事は簡単じゃなくて良いよね」

「ははは、そうだな」


 喜んでいらっしゃる……。

 まぁ、この御二方は、殆どの事は出来て当たり前であり、出来ない事は殆どない。


「すぐには無理そうだが、リアも頑張って考えると言っていたな。兄弟全員で力を合わせれば其の内どうにかなるだろう。良い案が浮かんだら教えてくれ」

「うん、兄さん! リアの為にも俺も考えるよ!」


 とりあえず、今日の話はここで一段落したようで、直ぐにすぐ、マルス様が問題を起こす事は無さそうでホッとする。

 だが、今日の話の不穏さに、いつか大きく周りを巻き込む片鱗を感じ、未来を憂い胃がキリキリと痛みだす。

 胃に優しい温かい飲み物でも飲もうと、マーカスは思った。

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