表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を飼ってください!~仲良くなったワンコをモフっていたつもりが、実は獣化した騎士団長でした〜  作者: 麻咲 塔子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/17

6 犬派?猫派?

「シェリルちゃ〜ん、仕事終わった〜?」

「ル、ルーちゃん隊長!?」


 今日は土曜日、仕事は午前中で終わりである。正午になったと同時に、総務部の先輩達ヒルダさんとカーラさんは片付けを始めていた。私もそろそろ区切りを付けようと思っていたところに、美しい黒髪をなびかせたルーちゃん隊長が現れた。


「ええ、ちょうど終わったところですが」

「んふふ、じゃあランチに行かない? アタシも今日はもう上がりなのよ」

「でも……」

「すぐそこの公園内に新しいカフェレストランができたの。ランチはもちろん、スイーツも充実しているらしいのよ。もちろん奢るから一緒に行かない?」

「行きましょう!」


 ルーちゃん隊長は再三私をお茶に誘ってくださっていた。最初は社交辞令だと思っていたけれど、どうやら若い女性が少ない騎士団での女友達枠に抜擢されたんだと思う。たぶん。


 さすがに隊長室でふたりきりは躊躇するけれど、オープンカフェでランチならば変な誤解を受けることもないでしょう。なんせ私は地味メガネとあだ名を付けられていた女だ。景色と同化するのは得意だし、存在感を消していればデートだと誤解されることもないわよね。

 そもそも、こんな美麗な男性(オネエ口調だけど)と地味メガネじゃ、釣り合いが取れていなさすぎてデートに見えるわけがない。


 それに、スイーツという言葉にも惹かれた。ここ最近節約していたから、ケーキの類に縁がなかったのだ。奢ってもらうのは気が引けるけれど何度もお断りするのも悪いし、今回はお言葉に甘えることにしよう。


「スウィフト隊長、この子を誘って大丈夫なの?」

「そうよ、だって団っ、んぐぅ」


 突然、ヒルダさんがカーラさんの脇腹をどついた。えっ、大丈夫? ゴスッって音がしたわよ。ちょっと痛そう。


「ん〜まあ、大丈夫じゃない? アタシ達お友達だもの。ねぇ〜?」

「お友達……なんですかね?」

「うん、駄目?」

「うっ」


 そんなきれいな瞳でウルウルされたら、駄目とは言いにくい。


「お友達ということでお願いします」

「きゃあ! 嬉しいわぁ。じゃあ早速行きましょ」

「ええ、はい」


 ルーちゃん隊長からガシリと腕を組まれて、そのまま連れ去られる。ヒルダさんとカーラさんは『あらら〜』という顔で手を振っていた。



◇◇◇◇


 中央公園は王都で一番大きな公園で、園内には植物園やボート遊びができる池、ピクニックができる芝生広場などがあり王都民の憩いの場となっている。

 その中に新しくカフェレストランができたと、噂では聞いていた。私は一緒に行く恋人も婚約者も友達もいないので、全く縁がなかったんだけれどね。美味しい物が食べられる店には、人並みに興味はあったのだ。


 お昼時のカフェレストランは、カップルや若い女の子などで賑わっていた。

 オープンテラスに通されると、ルーちゃん隊長は椅子を引いて『どうぞ、お嬢さん』と微笑む。隊長にそんなことをさせては申し訳ないと思いつつも、ありがたくエスコートを受けた。

 

「さあ、メニューをどうぞ。なんでも好きな物を食べていいわよ」

「ありがとうございます」


 なんて太っ腹なのかしら! なんでもと言われても、胃袋には限度がある。ここは厳選しなくては……サンドイッチにパスタ、どれも美味しそうだけれど、サラダもスープも付いている日替わりランチがお得でいいわね。


「ルーちゃん隊長、私は日替わりランチにします」

「あら、いいわね。アタシもそうしようかしら」


 ルーちゃん隊長は店員を呼ぶと、日替わりランチをふたつ注文した。今日のメインはハンバーグらしい。ラッキー! 肉だわ!

 サラダとアツアツのハンバーグが載ったお皿が運ばれてくると、さっそく切り分けて口に放り込む。肉汁がジワッと口の中に広がった。


「ん〜、美味しいですね!」

「ほんと、評判通りの味ね。美味しいわ」


 ルーちゃん隊長は、優雅だけれど食べるスピードは速い。あっという間にスープもパンも残さず食べてしまった。


「すみません、お待たせしてしまって」

「ああ、ごめんね。騎士って仕事の合間にササッと食べる癖がついているから、つい。シェリルちゃんはゆっくり食べてちょうだい」

「はい、ありがとうございます」


 ルーちゃん隊長は頬杖をつくと、私が食べるところをニコニコと楽しそうに眺めている。う、なんだか食べづらいわ。ハンバーグは文句なしに美味しいけれども。


「シェリルちゃんは美味しそうに食べるわね」

「へ? 美味しいですから」


 だって肉だもの。肉は正義だ。自分ではこんなオシャレなところでランチをする機会もないし、味わっていただかないと申し訳ないわ。


「ハンバーグは久しぶりなので、本当に美味しいです」

「騎士団のお給料って、そんなに悪くないわよね。仕送りでもしているのかしら?」

「いいえ、実家は姉夫婦が継ぐことになっておりますので、仕送りは必要ないんです。だけど私は結婚の予定もありませんし、将来実家の負担にならないよう貯金をしているんです」

「結婚、しないの?」

「ええ、三女の私まで政略結婚に駆り出されるほどの家ではないですし、持参金もありませんしね。それに、ほら! この通り地味メガネですから! わざわざ私を嫁に欲しがる家などありませんよ」

「そ〜んなことないわよ。あなたかわいいわ。それに伯爵家のお嬢さんなんでしょ? もし、どこかの貴族が結婚を申し込んだらどうする?」


 ルーちゃん隊長は、私をからかうような顔でとんでもない事を言い出した。


「かわっ? ないない、そんなことありえませんよ。没落寸前までいったしがない伯爵家の娘ですよ?」

「わからないわよ〜どこかで一目惚れされたとか――」

「それこそないです。社交界デビューすらしていませんしね」

「そうなの?」

「ええ、学園を卒業後は働くつもりでしたから、必要ないと思ってしませんでした」


 それに、デビューにはお金がかかる。ドレスだってそれなりの物を用意しなくちゃいけない。たった一度のことにお金を使うくらいなら、お姉様の結婚費用に回してもらいたかったのだ。


「あなた若いんだから、諦めるのが早すぎるわよ。だったら、アタシのところにお嫁に来る?」

「んぐっ、えぇ?」

「あら、悪くはないと思うけど。アタシも侯爵家の三男だし、爵位は継がないけど騎士隊長の肩書はあるわよ? 二十四歳独身、婚約者なし!」

「ふふっ、ルーちゃん隊長ったら。私は女ですよ?」

「もちろん、わかってるわ。アタシは両方いけ――」

「シェリル嬢!」

「あー来ちゃった」

「えっ、団長?」


 そこに突然駆け寄ってきたのは、グレイウルフ団長だった。どうやら仕事中だったらしく、うしろから慌てた数名の騎士達が追い掛けてきている。が、団長の足が速すぎるのか、全くついて来れていなかった。


「シェリル嬢の匂い、んん、姿が見えたから来てみたら、なんでお前が一緒にいるんだ?」

「あーら団長、見回り中ですか? お疲れ様ですぅ〜」


 団長は、追いついてきた騎士達に先に行くよう合図をすると、なぜか私の隣の席にドカッと腰を下ろした。えっ、仕事はいいの?


「お、お疲れ様です」

「ああ、君はなぜルークとこんなところに?」

「えっ? あの、仕事終わりにランチに誘われたからです」

「団長ったら顔が怖いわ〜シェリルちゃんがびっくりしてるんですけどぉ〜」

「ハッ、すまん」


 グレイウルフ団長はしゅんとうなだれる。団長の頭上に、あるはずのない垂れた耳が見えた気がした。


「も〜ちょうど口説いてたところだったのにぃ〜」

「なんだと!」

「冗談よ」

「そ、そうか」

「シェリルちゃんが結婚しないなんて言うから、じゃあうちにお嫁に来る? って言ってたとこ」

「口説いているじゃないか!」


 団長は赤くなったり青くなったり、情緒不安定になっている。どうしたのかしら……団長のキャラがイマイチわからない。もっと厳格そうなイメージだったのに。


「シェリル嬢!」

「は、はいぃ!」

「君は、君は、犬が好きなんじゃなかったのか!?」

「はい? 犬? 動物は全般的に好きですよ」


 なんなんだ唐突に。モフれる動物はなんだって好きだけど、なぜ団長は犬が好きだと知っているのかしら。


「じゃあ〜、シェリルちゃんは犬派? 猫派?」

「ええっ? ずいぶん唐突ですね? どちらも好きですけど……強いて言えば犬派ですかね」

「ヨッシャー!」「あらぁ残念」


 ルーちゃん隊長の質問に答えたら、なぜか団長が拳を振り上げ喜んでいる。さっきからなんなのかしら? さっぱりわけがわからない。


「ランチは食べ終わったようだな。シェリル嬢は、騎士団に戻りがてら俺が官舎まで送ろう」

「え〜、まだスイーツ食べてないんですけど」

「スイーツは俺が買う! シェリル嬢、好きなだけ選ぶといい」

「はあ……」


 なぜかスイーツは団長が買ってくれることになってしまった。ルーちゃん隊長がテーブルで会計を済ませている間に団長から連れ出され、スイーツのショーケースを眺めがら『あのケーキはどうだ?』とか『チョコレートは好きか?』と、質問攻めにされている。


「ええと、甘いものもフルーツも大体好きです」

「そうか! なら、あのいちごのケーキとチョコレートケーキとオレンジのムースも――」

「だ、団長! ひとりでそんなに食べられません!」

「そうか……」

「アタシが一緒に食べようか〜?」

「その必要はない! シェリル嬢、だったら君が食べられるだけ選んでくれ」


 いつの間にかショーケース前に来ていたルーちゃん隊長の言葉は、バッサリと却下された。結局、その日に食べる分のいちごのショートケーキと、日持ちのするマドレーヌを買ってもらうことになった。


「ルーちゃん隊長、ランチごちそうさまでした。グレイウルフ団長も、ケーキをありがとうございます」

「またランチに付き合ってね〜」

「はい、ありがとうございます」

「本気にしなくていいからな?」


 なぜか団長がルーちゃん隊長との間に割って入ってくる。ああ! 上司からの誘いに気を遣わなくていいからなってことね! 団長って、相変わらず部下への気配りが凄いわ。


「シェリル嬢、送っていく」

「お手数おかけします。ではルーちゃん隊長、失礼します」

「はーい、狼に気を付けてね」

「?」


 狼に気を付けて……どういう意味だろう? 王都に狼なんていたっけ?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
楽しいお話をありがとうございます(*^^*) 最近の癒しになりました♪ 特に団長さんとルーちゃん隊長の掛け合いが可笑しくてほっこり(*´艸`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ