表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE BLUE LOVE STORY -PROTOTYPE-  作者: 星河竜樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/16

15、馬車の中 帝国の女神 戦死

「マサ軍曹、

任務の詳細は馬車の中で話そう。

私は、これから師団本部に行く。

私は途中で降りるが、

君は北門までそのまま馬車に乗って行け。

そこで選抜メンバーと合流し、

ただちに出発してもらう。」

師団長は椅子から立ち上がり

僕に付いて来るよう促した。


門の外には何度か見かけた

最高親衛隊用の馬車が止まっていた。

そして、その馬車の前には、

白を基調とした最高親衛隊専用の

軍服を着たミホがいた。

彼女は軍服でありながら

短いスカートを履いており、

否応無しに、

その足の長さと美しさが目に入ってきた。

顔の小ささもあり、

スタイルの良さは際立って見える。

ミホは自然な感じだけど化粧もしていた。

それも彼女の魅力を更に引き上げ、

帝国の女神の呼び名に恥じず、

引き込まれるような美しさを溢れさせていた。


ミホは師団長の後ろの僕に少し驚いたようだが、

ほとんど表情を変えず師団長に言った。

「お待ちしておりました。」


「ご苦労。

私は彼と直接話しがある。

ミホ少尉、

君は馬車の外、

御者の横へ座りたまえ。」


「はっ。」

ミホは敬礼した後、

馬車の扉を開けた。

師団長が乗り込んだ後、

僕が続くと、

すれ違いざまに、

師団長から見えない扉の死角から、

僕に美しい笑顔をくれた。


僕は単純だ。

彼女が僕に微笑んでくれた事が嬉しかった。

心が少し救われた気がした。


馬車が動き始めると

師団長は任務の詳細を話し始めた。


「アイ皇女が嫁いだ

キリ聖共和国の王子が浮気をした。

それもあろう事か、

普段夫婦が使っている寝室のベッドで

不貞行為が行われていた。

その姿を見た皇女は酷いショックを受け、

離縁を申し出た。

しかし、共和国側は同盟が破棄される事を恐れ、

それを認めなかった。

現在、皇女と、

そして王子の間にできた二人の子は

一緒に軟禁されている。

皇女はなんとか監視の目を掻い潜り、

神帝に救いを求める密書を送られた。


これは神帝の勅命である。

アイ皇女とその二人の子、

リウ王子とチア王女を奪還せよ。

君はまず自由都市、水の都ベネに向かい、

そこから船で共和国の首都マドへ行け。

年に一度の祝祭、

ロマ教の感謝祭に紛れて作戦を実行に移せ。


ただし、いざという時の救出の優先順位は、

1がリウ王子、

2がチア王女、

3がアイ皇女になる。

帝国は他国に比べると歴史が浅い。

神帝は大陸で最古の歴史を持つ

王室の血筋を所望されておられる。」


「‥‥。」

僕は言葉を失う。


「共和国海軍の七戦艦は最強と言われ

無敵艦隊との呼び名もある。

またフライドラゴンと呼ばれる

大陸一の海上速度を誇る高速哨戒艇をも

多数保有している。

海上では分が悪い。逃げ場もない。

帰路は陸路で山道を越境し、帝都に帰還せよ。


マサ軍曹、

影の最高親衛隊員には、

騎士の称号は与えられない。

二つの顔を持ち闇の仕事を請け負うのみだ。

だが今回の救出作戦が成功した暁には、

君を表の最高親衛隊に鞍替えさせよう。

神帝から騎士の称号を賜る事も約束しよう。

その数字の力を帝国に捧げよ。

大義を持て。

君は帝国の歴史に名を刻む者となれ。」


僕は冷静に考える。

皇女と幼い二人の子を連れ、

追手から逃れ、

山を歩いて越境する。

非常に難易度が高い。


「もし任務に失敗した時は?」

僕は聞いた。


「君達は隣国で逆賊として処罰されるだろう。

帝国に帰還できれば皇女を救った英雄となる。」


僕は直感する。

この作戦は、失敗することも前提に

何かが仕組まれている。

しかし、同時に大きな見返りもある。

いいさ、僕は自らの数字を信じやり遂げてやる。

そして帝国の英雄として、

帝国の騎士として力を持ち、

置き去りにしてしまった連続殺人のかたをつける。


「了解しました。」


「選抜メンバーのコウを副官につける。

コウの表の顔は貿易商人だが、

裏の顔は君と同じ影の最高親衛隊員だ。

彼は作戦の立案も担っている。

頼ると良い。

それから、この指輪を君に授ける。」


師団長は自らの指から、

スカイライオネット、

翼の生えたライオンの紋章が刻まれた

指輪を抜き取り僕に渡した。


「以前、私は皇室の守備部隊に就き、

アイ皇女の担当だった。

このスカイライオネットの指輪は皇女から

師団長になった時に賜った物だ。

これを見せれば、

皇女は必ず君の言葉を信じ

行動を共にするだろう。」


程なくして馬車が止まった。

師団本部に到着したようだ。


馬車の扉をミホが開け師団長に声をかけた。

「お疲れ様でした。」


僕は降りようとする師団長に尋ねた。

「師団長殿、

私はウミ中尉から借りた刀を

そのまま持って来てしまいました。

御者かミホ少尉に、

刀の返却を依頼してもよろしいでしょうか?」


「その刀は君の旅路の役に立つ。

それは君が任務を終えて帝都に帰還した時、

直接、自分で返却しなさい。

ウミ中尉には私から言っておく。」

そう言って、師団長は馬車を降りた。


そして師団長は控えているミホと僕を交互に見た。

「確か君達は同郷の同期だったな。

ミホ少尉、

同行しマサ軍曹を帝都北門まで送りたまえ。」


「はっ、お心遣いありがとうございます。」

ミホが敬礼する。


師団長を見送った後、

僕とミホは二人だけで

馬車に乗った。

ミホは僕の正面に座った。

斜めに揃えた長く美しい足が目に入る。


「元気だった?」

ミホが話しかけてくる。


「うーん、なんとも言えない。

いろいろあったんだ。

あっ、でも、それはそれとして、

その軍服のスカート短か過ぎないか?」


「何?

気になるの?

ふふ、なんなら膝枕でもしようか?

膝枕しながら耳かきでもする?」

彼女は悪戯っぽく微笑んだ。


「えっ‥」

僕は動揺して自分の顔が一瞬で

赤くなるのがわかった。


「冗談よ。

それよりマサ、

いきなり軍曹になったってことは、

影の最高親衛隊員になったの?」


「なんでわかったの?」

僕は言った後にハッとした。

自らの裏の身分をあっさり明かしてしまったのだ。


「わかるわよ。

マサの事はなんでもお見通しよ。」


僕はミホに心を許す。

「何か、口の中、頬の裏に

66の数字があるって言うけど、

まだ確認してない。

ちょっと見てもらっていい?」


「いいわよ。

はい、口を開けて。」

そう言って、

ミホは僕の横にピタッと座り直した。

ミホからラベンダーの様な

いい匂いがした。


僕はドキっとして慌てた。

距離が近過ぎる。

「いや、やっぱり、

口臭いかもしれないからいいや。」


「人間だから、口も臭くなって当然。

気にしないで口開けてみて。」

ミホは顔を近づけてきた。


「わかった。あー。」

僕は観念して口を開ける。


「うーん、わかりずらいなー。

もっと大きく開けて。」

彼女は更に顔を近づけ僕の口の中を覗き込んだ。

その時、

馬車がガクンと大きく揺れ、

僕とミホの鼻が当たった。


「ごめん、ミホ。大丈夫?」

僕はミホに言った。


「大丈夫よ。

マサも、大丈夫?」


「ああ‥。」


さっき人生で二度目の告白をして

振られたばかりなのに、

胸がまたドキドキしているのがわかった。

そもそもミホは僕の初恋の人なのだ。


「あっ、そうだ。

ミホ、皇太子に求婚されたの?

そんな噂聞いたけど?」


「ええ。」


「ええって。

どうするの?

受けるの?」

僕はミホが自分の人生を変えたいって

言っていた事を再び思い出した。


ちょっとだけ間をおいてミホが言った。

「マサはどうして欲しい?」


「‥‥」

僕はその言葉の意味を理解できなくて、

黙った。


少し焦らしてからミホは言った。

「もちろん断わったわよ。

‥妾のお誘いでした。」

僕らお互いの顔を見ながら笑った。


でも突然、ミホが真顔になった。

「マサ、これから任務で出陣でしょ。」


「まー出陣と言えば出陣かな。」


「実は出陣前に不安にさせたくなくて、

言うか言わないか迷ってる。」


「なんだよ。

言ってみてよ。」

僕はミホを促す。


ミホは黙り込んで目を閉じた。

しばらくの間、沈黙が流れた‥


一筋の涙が流れるのが見えた。

僕はびっくりする。

「ミホ、どうしたの?」


馬車の音だけが聞こえる静寂の中、

彼女はそっと呟いた。

「テツが戦死した‥」

 

お読みいただきありがとうございます。

今後の励みになりますので、

ブックマーク・評価・いいねなど

していただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ