↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラウディブルー THE BLUE LOVE STORY   作者: 星河竜樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

16、裁縫 指切り 元宰相

「テツだけじゃない。

同期兵の多くが戦死した‥。」


ミホは静かに話し始めた。

近衛直轄軍の新兵部隊が、

ヨン連邦国との最前線に到着する直前に、

敵国の精鋭部隊の奇襲にあった。

敵は深い紫色の姿の集団であり、

バイオレットバタフライと恐れられる

シラの戦士の傭兵団であったと推測される。

近衛軍は、

あっという間に新兵のほとんどを失った。

知らせは早馬で師団本部に届いて、

戦死者名簿にテツの名があったと言う。


テツが死んだ‥。

罰が当たったんだ。

僕に内緒でアサと付き合って、

そしてアサを簡単に振った。

僕はそう思った。


しかし、

僕の目にも涙が溜まっていた。

本当は分かっている。

テツは何も悪くない。

僕が嫉妬しているだけだ。

そして、生まれ故郷で一緒に過ごした

テツとの記憶を想い起こしていた。


子供の頃から身体がデカく、

力の強かったテツはガキ大将で暴れん方だった。

ただ僕とトシに対しては

何故か暴力を振るわなかった。

正直言うと、

子供の頃は喧嘩っ早いテツとは

余り関わりたく無くて避けていたが、

彼の方は、分かっていないらしく

時々話しかけてきた。


ある時、テツが僕にもう喧嘩は辞めると言った。

僕はどうしてなの?と聞いたら、

この前、馬乗りになって殴り続けたら、

相手が血だらけになって

ぐったりしてしまったと言う。

こんな事はもういいやと思ったそうだ。

やっぱり、テツは怖い奴だ。

喧嘩の相手は誰だか知らないが

大丈夫だったのだろうか。


アマの山の大噴火後に、僕、トシ、テツ、ミホ、

親を亡くした僕ら四人は本当の意味で

急速に仲良くなった。

仲良くなると、

テツは怖い存在から頼れるいい奴になった。

僕らは一致団結して困難を乗り越えて来た。

でも力の強いテツがいなければ、

もっと悲惨な目に合っていただろう。

結局僕らは故郷を飛び出しアモの種の

試練を受ける事にしたが、

なんとか無事に四人で帝都まで辿り着けたのも、

テツのおかげだ。


「テツと、同期兵達の

冥福を一緒に祈ろう。」

僕らは目を閉じて祈った。


目的地の北門に到着し馬車が止まった。


「そこ、破れてるね。ちょっと待ってて。」

ミホはそう言い、

軍服のポケットから

小さな裁縫セットを取り出した。

そして僕の前に跪いて、

先程班長に切られた僕の洋服の腹の部分を触った。

突然の事に僕は胸の鼓動が高鳴るのがわかった。


「怪我は無さそうね。良かった。

動かないで。身体に針が刺さるわ。」

僕は動かない様に、

そして鼓動がばれない様に、

落ち着こうと静かにゆっくり息をした。

彼女はさっと手際良く服を縫ってくれた。


「ありがとう。」

僕はお礼を言った。


「必ず生きて戻ってね。」

彼女は小指を差し出す。


「もちろんだよ。約束する。」

僕らは馬車の中で指切りした。


「ねえ、マサ。

指切りの由来って知ってる?」

ミホは言った。


「由来?知らないよ。」


「そう、じゃあいいわ。」


「何?教えてよ。」


「今度会った時ね。」

そう言って微笑む彼女は

やはり美しかった。


ミホは一緒に馬車を降りて、

僕が北門の詰所の中に入るまで見送ってくれた。

僕は僅かな距離の間に三回振り向いたが、

その度に彼女は優しく手を振ってくれた。


絶世の美女に見送られる僕を

北門の衛兵はポカンと見ていた。


僕は同郷の四人でこの北門から

帝都に入った日の事を思い出す。

そして今日僕は、ここから新たな旅立ちを始める。


僕は詰所の別室に案内され、

まず裏の最高親衛隊員のコウと会った。

コウは見たところ、

僕よりは20才以上は年上に思えた。


「マサと申します。

師団長から聞きました。

今回の作戦の立案に関わっているとか。

よろしくお願いします。」


「コウです。

こちらこそ宜しくお願い致します。

マサ殿、失礼ですが階級は?」


「ここに来る直前に軍曹に任命されました。

ちなみに、そちらは?」


「私に階級はありません。

実は私は脱走兵です。

捕まって死罪になるところを、

特別に師団長に救われました。

表の顔は貿易商人をやっております。

11の数字を持ち、

影の親衛隊員としての序列ナンバーは34を

拝命しております。

しかし今回は、

元貿易商人あがりの傭兵として伍長を演じ、

副隊長として案内役を致します。」


「私の序列ナンバーは30ですが、

新兵であり、

そもそも部隊を率いた事もありません。

いろいろ教えてください。」


「マサ軍曹殿。

これからは隊長とお呼び致します。

私のことは、この先コウとお呼びください。

これから私達は用意した馬で

北部のとある領地に行きます。

そこで隊長には建国の四勇者の一人、

元宰相の大侯爵に会って頂きます。」


「元宰相の大侯爵は、どんな方なのでしょうか。

恥ずかしながら、

私は知識が浅く教えて頂きたいです。」


「はい。

大侯爵は、元々は軍師として名を馳せ、

その先見の才から予言者の通り名を持ちます。

やがて帝国が大きくなると、

新帝から宰相の地位を授けられました。

5年程前に退官しましたが、

齢90才を超え体が弱っており、

現在、領地別荘にて療養中であります。

また大侯爵は、熱烈なロマ教信者であり、

死ぬ前にロマ教の感謝祭に合わせて

キリ聖共和国の首都であるマドの都に

聖地巡礼する事を望んでおります。

聖共和国側からも同盟国の建国の四勇者である

大侯爵の巡礼は、正式に承認されております。

今回、我々はその護衛団として同行し、

アイ皇女と、その二人の子を救出致します。」


僕はふと思った。

「ちょっと待ってください。

私は、大侯爵がそんな高齢とは存じませんでした。

確かに大侯爵は、

最初のアモの種の試練を乗り越えた

建国の四勇者で数字持ちでしょうが、

失礼ながら、

そんなご高齢で果たして

我々と一緒に逃げられるのでしょうか?」


「いえ、違います。

大侯爵は逃げたり致しません。

今回の作戦は大侯爵の護衛傭兵団が、

独自に勝手に行動した事にする為、

大侯爵は現地に残ります。」


「えっ、作戦を実行したら、

残った大侯爵は

重い処罰を受けるのではないでしょうか。

場合によっては、厳しい尋問の上、

殺されてしまう可能性もあると思います。

大侯爵はこの作戦の真の目的を、

ご存知なのでしょうか?」


「はい、存じております。

万が一の場合は、

大侯爵は死期の近い自らの命を

差し出す覚悟です。」


「命を差し出すって‥」

僕は黙り込んだ。

指切りするために指を差し出すのとは違うんだ。

僕は戸惑った。


「北門の外に護衛団のメンバーが

既に控えております。

彼らは、足が付かないように

入隊半年未満の帝国軍傭兵部隊の下等兵より、

選抜されております。

彼らには特別な護衛任務に派遣されたとしか、

伝えていません。

作戦の真の目的は私達、二人しか知りませんので

よろしくお願い致します。


それから隊長、

近衛軍より来られた隊長は、

ご存知無いかも知れませんが、

帝国軍傭兵部隊に入隊した者は、

部隊に入る前の前科や経歴は不問とされています。

皆の過去を詮索するのはお控え下さいませ。


では、ご準備はよろしいでしょうか。

早速出発致しましょう。

ご案内致します。」


僕は誘導され、

北門の外に出た。

もちろん、もうミホの姿はない。

そこには馬が5頭繋がれていた。

内一頭は他の馬より圧倒的に大きな白馬であった。


コウはその場で休憩していた、

他の三人の選抜メンバーを紹介してくれた。


お読みいただきありがとうございます。

今後の励みになりますので、

ブックマーク・評価・いいねなど

していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。