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THE BLUE LOVE STORY -PROTOTYPE-  作者: 星河竜樹


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14/16

14、ブースト 牢の奥

僕と班長はある程度の距離を保ちながら

お互い構えて向き合った。


空気が動くのを感じる。

まず班長が

僕の刀を斧で弾こうと動いた。

大丈夫だ、

班長の攻撃は、ゆっくりとした動きで見えてる。

僕は刀をいなし斧を空振りさせる。

班長は大振りになって、

少しバランスを崩しながらも、

力ずくで前に踏み出し間合いを詰め、

次の攻撃を仕掛けた。


僕は、5、6メートルはある

高い地下室の天井に向かって

素早くジャンプし、

重力に逆らい、

瞬間蜘蛛のように張り付く。

そして天井を強く弾き、

僕を一瞬見失った班長の背後に

反転しながら勢いよく飛び降り、

名刀ユキ=マサの逆刃の根元に近い部分を

その右肩に打ち込んだ。


ボキっと音がして

名刀ユキ=マサが

班長の肩の骨を折り、

更に肉まで10数センチ程めり込み

班長に片膝をつかせた。


勝負はあったはず。

これで班長は斧を持てない。

僕はふっと安堵の息を吐く。

少し集中の糸が切れる。


「ブースト。」

班長の呟く声が聞こえた瞬間、

僕の全身を殺気が貫いた。

班長は斧を左手にサッと持ち換え

近距離で振り向きながら横一文字に

僕の腹を斧で切り裂こうとした。

その速さは初手とは明らかに違うスピードだった。


僕は刀を握る手を離し、

そのまま後ろに飛んで逃げた。

斧は僕の体を掠め、

服の一部がヒラっと切れた。

形勢は逆転した。

僕は素手で班長と向き合う。


「なぜゾロ目の数字持ちが時別扱いされるか。

それはブーストを発動し、

自分の数字の倍の速さや力を一定時間

引出すことが出来るからだ。」

班長は肩にめり込んだ刀を

斧の背で叩き落とし、

僕の方を向いて構えた。


「俺は、両手利きだ。

左手一本で充分。」

班長は不敵に微笑んだ。


「ブースト。」

班長は加速し距離を詰め、

僕の頭をかち割るように、

斧を振り下ろす。


集中しろ、大丈夫だ、動きは見えてる。

僕は両手首を十字にして受け、

絡めた手で班長の左手を掴み、

自分の左足を引きながら円を描くように捌き、

班長の体勢を崩した。

僕はさらに右手で班長の肘を極めながら、

地面に勢いよく押さえつけ、

取り上げた斧を放り投げた。


「合格だ。」

這いつくばって顔を地面に付けたまま

班長は言った。


「合格?」

僕は手を離し2、3歩後退りした。

力を上手く加減出来なかった。

もう班長の左肘の関節は

逆に曲がっている。


班長は両腕をダランと降ろしながら立ち上がり

僕に言った。

「甘ちゃんだな。

戦場では敵の言葉に惑わされるな。

まだ終わりではない。

‥ブースト。」

班長は再度一気に加速し間合いを詰め

素早く中段右前蹴りを放つが、

蹴りの途中で軸足をスライドさせ軌道を変え、

右上段回し蹴りに変化させてきた。


しかし、ブースト状態の不意をついた蹴りも

僕にはゆっくり見えてる。

僕は蹴りが顔に届くより

速く深く踏み込み、

横蹴りを強く押し込むように放った。

結果的に蹴りを放つ途中で

片足で立っていた班長は、

簡単に一直線に吹っ飛び、

地下室の入り口の扉を打ち破って

外まで転げ出た。

僕は班長の後を追って地下室の外に出た。


ウミが班長に直ぐに寄り添っていた。

「ウミ、班長は大丈夫か?」


「気を失ってるだけよ。

だけど右肩と左肘が酷い事になってる。」


「ウミ、すまない。班長を頼む。」

ウミが頷くのが見えた。


僕はもう一度地下室に戻った。

そして前室の奥まで歩き扉を開けた。


なんと奥の扉の先は牢獄となっていた。

そしてその牢の奥の数メートル先は

カーテンが閉められ、

中が見えないようになっていた。

僕は鉄格子に近づいて調べる。

しかし堅牢な鉄格子の鍵が

内側に付いているようで、

外側からは開けられそうもなかった。


「先生、ミオ先生。

私です。マサです。

お話ししたい件があります。」


少ししてカーテンが揺れ、

白衣のミオ先生が現れた。

彼女は黒装束の者がしていた仮面を

手に持っていた。

先生は鉄格子の隙間から、

無言で僕に仮面を差し出した。

流れで僕は仮面を受け取る。

その瞬間、僕の中で何かが弾けた。


「先生に闇があるなら僕が救いたい。

僕が先生と寝たのなら責任を取ります。

僕は先生の事が好きです。」

僕は何を言っているんだ。

直前まで考えていた事とは、

全く違う事を言っていた。


「君のそうゆうところがダメなの。」

先生は、そう言い残して

カーテンの奥に戻ってしまった。

そして何度呼んでも叫んでも、

もう現れる事は無かった。

僕は鉄格子を握り、

数秒グッと力を込めた。

少しだけ押し曲がった鉄格子を見てハッとした。

僕は‥何をしているのだ‥


そして深い自己嫌悪に陥った。

僕は最低の人間だ。

真名どころではない。

班長の想いも踏み躙っている。

僕は、なんて自己中心的な奴なんだ。

僕は、なんて卑怯な奴なんだ。


君のそうゆうところがダメなの‥

先生の言葉を噛み締める‥


僕は仮面を持ちながら伽藍堂な前室に戻った。

半ば茫然としたまま、

ウミから借りた刀を拾い鞘にいれ、

班長の片手斧も拾い腰に差し地下室から出た。

もうそこには、ウミや班長の姿は無かった。


僕は師団長の部屋へ向かった。

仮面と片手斧を師団長に差し出す。


「基礎武術しか習ってない新兵の君が

最高親衛隊序列6位を倒したか。」


少しの間師団長は考え、

そして言った。


「‥正直言うと、

最初はヒカに皇女救出隊を

指揮させるつもりだった。

ヒカには是非作戦を成功させ、

特例を持って影から表舞台に上がって欲しかった。

しかし彼は固辞し、

若き才能ある君を推薦し、

命をかけ、

短期間で君の能力を覚醒させる役割を

担うと言った。

君は帝国の切り札となる逸材だと言う。


マサ伍長、合格だ。

ただ今を持ち軍曹に昇進し、

影の最高親衛隊員として正式採用する。

序列ナンバーは欠番の30を与える。」


その時、

コンコンコンとノックの音が聞こえた。


「入れ。」

師団長が認可する。

ウミだった。

僕とは一瞬目が合うが、

そのままサッと師団長の前に進み出た。


「ミオ先生より手紙です。」


師団長は手紙を受け取りながら

ウミに聞いた。


「ヒカはどうなってる?」


「命に別状はございませんが、

右肩と左肘を負傷しております。

左肘については障害が残る可能性があります。

これより医務室にてミオ先生が

緊急手術を行います。」


「そうか。

早く戻ってミオの補助を頼む。」


「はっ。」

ウミは敬礼し、急いで部屋を出た。


師団長は私の目を見て言った。

「気にするな。

数字持ち同士が能力を高め闘うのだ。

ヒカも覚悟はできていた。


私はヒカの助言を既に聞き入れていた為、

君が昨晩現れなくとも、

朝には迎えを遣わす予定だった。


だから私はヒカに、

何度も二人が闘う必要などないと言った。

しかしヒカは、

君が正義を貫き真実を追い求めるなら、

天の運命であり、自らを踏み台に君が早急に

能力を開花する事を望んだ。

命の駆け引きをした経験が無い者は、

戦場では弱い。

例え自らが捨て石になったとしても、

こうする事が、

この先の任務で君の命を繋ぐ事になると言って、

私の意見を聞かなかった。

それだけ君に惚れ込んでいたという事だ。」


ああ、僕は自分で涙が溢れているのが分かる。

涙が止まらない。


「マサ軍曹。しっかりするのだ。

私の判断で、必要ならば、

君にヒカの真名を教えても良いと言われている。


君に伝えよう。

彼の名はヒカ、真名はミチ

ヒカ=ミチ、真名によって成す意味は

光を導く者。

彼は自ら真名に従って行動しただけだ。」


僕は深く、わからなさの中を漂っている。

何が善で何が悪か。

何が真実で何が嘘か。

おそらく全てが複雑に絡み合っている。


「いや本当は、

ミオから離れたくなかっただけかもしれない。」

師団長は美しい翠色の目で優しく微笑んだ。


そしてミオ先生の手紙を読んで言った。

「ヒカやミオの目に狂いはなかった。

マサ軍曹。

君の口の中、

頬の裏に66の数字がある。

君の数字は666。

帝国、いや大陸初の

3桁のゾロ目の数字持ちだ。」


師団長は僕の涙の意味を

勘違いしていらっしゃる。

僕は低俗な人間で、

ただ卑劣な自分が情け無くて泣いているのだ。


もう一度やり直したい。

自らを誰かが必要と言ってくれる人になりたい。

僕はグッと堪えて涙を拭って息を整えた。

強い意志を持て。

僕は、このわからなさの深海の底から

抜け出すために踠き続けるのだ。

お読みいただきありがとうございます。

今後の励みになりますので、

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