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THE BLUE LOVE STORY -PROTOTYPE-  作者: 星河竜樹


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13/16

13、プロトタイプ 

「師団長に許可を得て

ミオ先生に会いに来ました。

班長、そこを退いて下さい。」


顔を上げた班長の目は血走っていた。

「ああ、分かっている。

お前は自らの真名に従っているのだろう。

だが闇があるから光も必要となり、

悪があるから善も必要とされる。


もう少し大人になれ。

人は理想と現実を上手く

折り合いをつけながら生きている。

わからなさの中を漂うことも、

時に必要とされる。

あえて知らずに、察することの方が

上手く回っていく事もある。

このまま戻れ。」

班長は椅子に腰掛けたまま言った。


「では先生は連続殺人犯なのですか?

本当の事を教えて下さい。」

僕は単刀直入に聞いた。


班長は少しの間、黙って考えていた。

そしてまた話し始めた。


「ミオは多重人格だ。

厄介な事にしゃべり方や

顔の表情は全く変わらず、

人格がコロコロ入れ替わる。

だからその時その時で、

どの人格なのかは判断つかない。

娼婦の人格、殺人を楽しむ者の人格、

高潔なる研究者の人格、慈悲ある医者の人格、

無邪気な子供のままの人格、

数多くある人格は

俺でも把握できない。

しかし真実のミオは

それぞれの人格の根底で、

記憶は共有している。

自分自身のそれぞれの人格が何を成し、

どんな行為を行なっているか彼女は知っている。

良心の呵責に苦しんでいる

ミオの苦痛を察してくれないか?」


「班長、

はぐらかさずに私の質問の答えを

おっしゃって下さい。

先生は連続殺人の犯人ですか?」

僕はもう一度聞く。


「答えはないのだよ。

誰も答えを求めていない。

だから無いんだ。」

班長の声は重く、

グッと僕の胸まで響いた。


「ならば直接先生に聞きます。」

僕は強い意志を持たなければならない。


「やれやれ、真面目すぎるのも困ったものだ。

じゃあ逆に聞く。

お前の求める真実は

殺人犯は誰かということだけか?

ミオが神帝から受けた勅命は、

アモの種を使って

数字持ちを生み出す研究ではなく、

数字持ちを絶対に出すことなく、

完全なる即効性の殺人薬を

つくる研究だったことか?

神帝は太平の世を迎えたときは、

自らの存在を脅かすような数字持ちは

もう必要ないと考えていらっしゃることか?

そして一握りの数字持ちのみが残されて、

後は抹殺される運命にあることか?

お前の飲んだアモの種は

ナチュラルなものではなく、

ミオが神帝の命令に背いて

人為的に数字持ちを生み出すために

作ったものだったことか?」


「えっ」


「お前はプロトタイプだ。

ミオが試験的に作った数字持ちだ。」


「プロトタイプ‥」


「ミオは、お前に異常な執着がある。

戦地ですぐに戦死されないように、

お前を帝都警察に配属させ、

自分の目の届く帝都に置いた。

俺には何かと理由をつけ、

お前を一緒に連れてくるように指示した。

昨晩、こちら側につくか、

死ぬか選べと言ったのは本心だ。

悪いな。

ミオを守る為に必要ならば、俺はお前を殺す。」

班長は言葉には重みがあった。


「いや、本心を正直に言う。

嫉妬だ。

ああ、俺は完全に嫉妬に狂ってる。

若くて才能があり、ミオに好かれてるお前にな。

‥本当に悲しいよ。

どんな人格のミオも俺を受け入れてくれなかった。

どれだけ尽くしても決して報われなかった。

なのに何故なんだ。

‥本当に悔しいよ。

何故ミオは、お前の体を調べるために、

ローブ一枚でお前の部屋に行ったんだ?

なあ、そうなんだろ。

ミオはお前と寝たんだろ?」


「‥‥」


「だが、お前は神帝の裏の秘密を知った。

殺す大義もできた。

もういい、剣を抜け。

雌雄を決しよう。」

班長はそう言って椅子から立ち上がり、

腰の片手斧に手を掛けた。


「班長、待って下さい。

私たちは戦わずに

話し合いで鞘を納めることはできませんか?

ツヨやサイから聞きました。

班長は上官を半殺しにして、

二階級降格し帝都警察に左遷されて来たと。

ただそれは班長の直属の上官ではなく、

ミオ先生に乱暴した上官だったと。」


「だとしたらどうなんだ。」


「班長とはやっぱり戦いたくないです。」


「もう袂を分かっている。

お前は一線を超えたのだよ。」


「‥‥」


「俺の手の甲の数字は4。

あまりにもわかりやすいところに現れたため、

最初はシングルナンバーとして扱われた。

だがずっと自分の能力に違和感があった。

ミオを襲った最高親衛隊の奴をやり込めた時、

俺は自分の力を確信した。

ゾロ目の数字は並んでいるとは限らない。

極めて稀だが離れて現れる場合がある。

俺は隠れてここに4の数字をもう一つ持つ。」

班長は自分の頭の右側の髪を掻き上げた。


「俺の数字は44。

俺はナチュラルなゾロ目の数字持ちだ。

しかし後から認知されたゾロ目の数字持ちは、

表舞台で騎士にはなれない。

影の最高親衛隊に任命され、

人知れず闇の仕事を請け負う。

表の顔とは別に裏の顔を持つのだよ。


結局、お前がゾロ目だったかは

ミオは俺に答えていない。


だが心せよ。

表の最高親衛隊の欠番ナンバーの幾つかは

実は影の最高親衛隊員に当てがわれている。

序列は混合なのだ。

俺の最高親衛隊の序列は6位。

しかし戦闘能力だけならミオより上だ。

全力でかかってこい。」


「班長、僕は昨晩出かける前に、

警察兵舎の自分の机の上に

手紙を残して置きました。

自分が万が一の場合はミオ先生が犯人と

書き残してきています。」


「この手紙のことか。

お前の推理には驚いたよ。

だが、お前の考えは読んでいた。」

班長は自分のズボンのポケットから

僕の手紙を取り出し、そして破り捨てた。


「俺がミオに薬を飲まさる時は、

目が覚めると大抵事件が起こっている。

俺もバカじゃない。わかっている。

俺がすべき事は

ミオを守り続ける事。」

班長は片手斧を右手に持ち、構えた。

隙の無い構えだった。


僕は後退りして距離を空ける。

そして頭をフル回転して考える。


僕はアサに受け入れてもらえなかった時、

自分の存在意義まで拒否されたと感じて、

自分自身を変えようと、

強く生きようと思った。

アモの種の試練を乗り越え

命を繋ぎ止めた自分に

何かしらの意味があると、

どうしても考えたかった。

それが自らの真名に従い

正義を貫き悪き者を捕まえる事だと考えた。

だが班長の言葉が真実なら、

本当の正義とは何なのだろうか?

分からない。

しかし今はまず、

この対決を生き抜くことだ。


そもそも僕の体には、

もう一つの数字がどこかにあり、

僕はゾロ目だったのか?

ゾロ目なら僕の数字は66のはず。

自分を信じるしかない。


僕は刀を抜き、手の中でクルっと反転させた。

刃のない刀の背を下にして構える。


そうだ、僕は生きたいんだ。

そして班長も生きていて欲しい。

これで峰打ちする。

班長は斬らずに倒す。


だけど僕は知っている。

相手を傷つけずに倒すことは、

圧倒的な力の差が無ければ難しい。

果たして僕にできるだろうか?

集中するんだ。

本当はふーと息を吐いた。


全ての動きがゆっくり揺らめきスローに見えた。


お読みいただきありがとうございます。

今後の励みになりますので、

ブックマーク・評価・いいねなど

していただけると嬉しいです。


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