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THE BLUE LOVE STORY -PROTOTYPE-  作者: 星河竜樹


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12/12

12、感謝 教え 扉の前

「師団長殿、

そもそも昨晩は、

帝都で殺人事件は

起きていますでしょうか?」

僕は更に尋ねた。


翠色の美しい瞳で師団長は僕を見つめた。

「マサ伍長、

君は今朝、ミオ中佐と面談したはず。

何か話しは聞いていないのか?」


「お会いしましたが、話はほとんどできず、

何も聞いておりません。」

僕は視線を逸らす。

お互いが裸だったことなんて言えない。


「そうか。

私は約束通り、君に求める真実と向き合う

機会を与えたつもりだ。

それを活かせなかったのは、

君の落ち度であろう。

まあ良い。

もう一度だけ機会を与えよう。

部屋の外にウミ中尉が待機しているはず。

中尉にミオ中佐のところに案内してもらいなさい。

いいか、これが最後の機会だ。

そこで君の疑問が解決しなくても、

もう君の警察任務は終了している。

そこまでだ。

君には次の任務を命じている。」


「はっ。」

僕は敬礼した。

多くの疑問は残されたままだ。

昨日殺人事件は起こったのか?

先生は本当に殺人犯なのか?

僕はなぜ眠らされたのか?

班長はなぜ僕を殺すと言ったのか?

ウミはどこまで関係しているのか?

僕は真実を知りたい。


「マサ伍長、

軍では上官の命令に疑を唱えることは、

認めてられていない。

命を懸けて戦う時は、

上官の命令は絶対だ。

疑問は自らの判断を遅らせるだけでなく、

それが連なれば部隊全体の行動を遅らせ、

全滅を導くこともある。


‥そう、だから、

疑を挟まず戦う為に

戦争には大義が必要となる。

それが無ければ、単なる人殺しに過ぎない。

マサ伍長、君の大義は何か?」


「‥‥」


「直ぐ答えられないならば、

まだ決意が足りないのだろう。

良く考えることだ。


ミオ中佐との面談が終わったら

ここに戻って来なさい。

アイ皇女救出作戦任務の詳細を伝える。


ああ、それから君は

ウミ中尉に感謝すべきだ。

昨晩、彼女は事を荒立てないように機転を効かせ

まず私に痴話喧嘩のため手助け無用と申し出た。

それでも彼女を抱き抱えると、

君を罪に問わないよう私に願い出た。

私は君たちが本当に付き合っているかは

知るところではない。

だが君は彼女を大事すべきだ。

以上である。

下がりたまえ。」


僕は再度敬礼し、

部屋を出た。


部屋の外には師団長の言葉通りに

ウミが待機していた。

先程の師団長の言葉を噛み締める。

かける言葉が見つからない。

ウミときちんと話しをするべきだろうか?

いや、まずは先生に会うことが先決だ。

僕は決意を込めて言った。


「先生のいるところに

案内をお願いします。

師団長の認可は得ています。」


「そう。

じぁ、ついて来て。」

彼女は僕の前を歩く。


黙って彼女の後をついて行くと、

ある部屋の前に来た。


「ここ?」


「違う、ここは私の部屋。

先生のところに行く前に、

渡したいものがあるわ。

待ってて。」


しばらくして、

ウミは部屋から刀を持って出てきた。


「ついて来て」

それから僕は、また違う部屋に案内された。


「ここは稽古部屋だったの。」


「‥?」


彼女は唐突に持っていた刀を

僕に手渡して言った。

「抜いてみて。」


「えっ?」


「いいから抜いて。」


僕は刀を鞘から抜き放った。

妖しく光る玉鋼の刀は

いかにも切れそうな感じがした。

刀に浮かぶ波紋も美しい。


「構えて」

ウミはそう言って鞘だけを受け取った。

僕は両手で刀を持ち構える。


「構えの基本は

半身になること。

相手からの攻撃の面積を減らすのよ。

この前のあなたは自然とできていたわ。」


僕は左足を引き、

身体を軽く捻り半身に構える。


「そう、いい感じよ。

確かにあなた、センスあるわ。

じぁ、刀を振ってみて。」


僕は刀を上段に構えて

ブンと一振りした。


「数字持ちで力があるあなたは、

いままで意識しなかったと思うけど、

刀を振り下ろした時に、

雑巾を絞るように、

刀を持つ手を軽く絞って。

そうすれば刀は流されずに

ピタっと止まるわ。

切り返しも、もっと簡単にできるはず。

それから‥」


彼女は、刀の切り返しの仕方に始まり、

体の捌き方、足の運び方、視線の持ち方、

いろいろなことを、極めて簡単に、

そして分かり易く教えてくれた。


「ありがとう、でもなぜ教えてくれるの?」

僕はウミに尋ねた。


「刀にも真名がある。

この刀の名はユキ、真名はマサ。

あなたの名と真名を逆にしたもの。

名刀ユキ=マサ。真名により成す意味は、

正義を示す純白の雪。

雪を血で赤く染める殺人剣ではなく、

活人剣として正なる者を守護するツルギよ。

この刀はあなたが使う運命だと思う。

だけどあげるのではなく貸すのよ。

いつか必ず戻しに来て。」


「名刀って‥、君にとって

きっと大切なものなんだよね。

借りれないよ。」


「私には、

斬馬刀がある。」


「昨日腰につけていた太刀のこと?」


「そうよ。

だからこれはあなたが持って。

この刀はあなたが、

先生に会う前に、

必ず必要となるわ。

それから、この刀の背に刃はついていない。

手の中でクルッと持ち構えれば、

相手を斬らずに打ち倒すこともできる。」


「よく分からないけど、

この後、剣を交える可能性が

あるってこと?」


「あなたは、自らの真名に誓い

生きているのでしょう。

運命は自分で切り開いて。」


それから彼女は先に歩き、

今度は僕を屋敷の奥深くの地下へ案内した。

地下室の扉の前で彼女は振り向いた。


「この扉の先に前室があって

更に奥にもう一つ扉があって部屋があるの。

そこに先生はいるわ。

じゃあ私は、ここで待ってる。」


「ありがとう。」

僕はウミに礼を言い扉に手をかけようとした。


「待って。」


「何?」


「戻ったら、もう一度私と手合わせして。

勝負をつけるわ。」


「もう勝負はついてるよ。

君の勝ちだよ。

昨夜、君は僕のスイングに吹っ飛ばされながらも、

その力も利用して警棒で僕の首筋を

なぞって飛んでいったよね。

あれが太刀なら、さっき習った引き切りだ。

僕の首の方が飛んでいた。そうだろ?」 

僕は自分の首元を摩りながら言った。


「‥‥。」


「じゃあ、行ってくるよ。」


「マサ、いくら名刀と言えども、

斧のようなものと何回も打ち合えば、

刃は欠けるし、

最悪の場合折れる事もある。

気をつけて。」


「分かった‥。斧使いなんだね。

ウミ、ヒントをくれてありがとう。


あっ、それから師団長から聞いたよ。

僕を庇ってくれて

本当ありがとう。


じゃあ今度こそ‥行くよ。

行って真実を明らかにしてくる。」

僕は彼女にそう言って扉を開け前室に入った。


がらんどうな前室は刀を振るのに充分過ぎる程の

天井の高さがあり、

部屋自体も結構な広さがあった。


そして確かに、

その前室の奥に扉があったが、

扉の前には一脚の椅子があり、

僕が知る唯一の斧使いが一人静かに座っていた。


僕は五感を研ぎ澄まし集中する。


「来たか。」

とても低い班長の声が響いて聞こえた。


お読みいただきありがとうございます。

今後の励みになりますので、

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