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ブルーアイデンティティー  作者: 三笠聖
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Report25:若葉原地区4/競争

15時15分、プログラムを終えた山河は2つのデバイス、スイレンとタイムをセットして走る。小澤は自身のデバイスでフラガを現実化(リアライズ)させている端末の探索を続けている。不安な気持ちが表情に出ているが、彼女は自分にやれる精一杯のサポートをしようと集中していく。彼女の様子を気にかけている山河は視線をフラガから一瞬だけ離し、小澤を見る。


(よし、打ち合わせ通りだ・・・。)


△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△


行動開始4分前の僅かな時間。プログラムを入力している山河と小澤。これは予め自分や相手の動きを予測した上でプログラムを組むことで少しでも早く行動出来るようにするための作業。山河はスイレンを、小澤はタイムを調整している最中に山河は話をはじめる。


「俺はフラガを倒しますから、小澤さんは端末の特定に専念してください。」

「はい・・・。でも、どうして当たり前のことを?」

「専念っていうのはナビゲート不要ということです。俺はナビゲート無しで戦います。」

「そ、それは無茶ですよ。相手に有効なダメージを与えること、キャラクターのことすら知らない山河さんが1人で戦うのは。それに一緒に戦うって言ってくれましたよね?」

「んと・・・、じゃあ競争しましょう。」

「はい?」

「俺はフラガを倒す、小澤さんは端末を特定して原因が何なのかを突き止める。早い方が相手のサポートをする。」

「そんな、遊びじゃないんですよ!」

「じゃあ、負けたら勝った方のお願いを1つ、任務以外できくってことで。」

「ほ!」

「ほ?」

「ほんとですね?お願いの件!」

「あ、ああ・・・。だ、だから。」

「競争ですね、わかりました!!」


小澤が探索に集中できるように思い付きで競争を提案した山河は思惑通りにいったと安心した。その話の後もプログラムを組み続けていく2人だが、プログラム準備完了の直前になって山河は気がつく。


(万が一、負けたらどうしよう・・・。まぁ、気にしたら負けだ。)


△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△


走りながら、スイレンのバレットモードで弾を放つ山河。フラガは攻撃に気づき、それを避けていく。フラガが避けることは想定済みの山河。彼は避けられるとわかっていながらも攻撃を続け、接近していく。そして、フラガが振るう剣の間合いギリギリの6mまで辿り着いた時、プログラムを発動させるためのキーフレーズを言う。


「コナプログラム、スタート。」


山河が言葉にしたコナプログラム。それはスイレンとタイムが展開する武装を予め決めておくことで、組み合わせを設定する時間を無くすシステムである。武装の設定時間を無くすメリットがある一方で、行動をはじめるとプログラム停止まで決められた武装展開や行動しかできないデメリットがある。山河はフラガとの距離を詰めるため、さらに接近していく。接近しつつ銃撃を行う。


「おおおぉぉぉっ!!」

「マジック。」

「なっ!!」


フラガとの距離はおよそ3m。フラガの剣ばかり気にしていた山河は不意を突かれる。フラガが放つ魔法攻撃は回避できない。


「リフレムっ!!」

「!!」


山河の発した言葉に合わせて銃からは追尾型のビームが放たれる。フラガが出した火の魔法攻撃は避けられないが、ビーム放出と同時に防壁を目の前に展開することでダメージを軽減していた。放たれたビームはフラガの背後に回り込み、彼が目視できない箇所に当たる。それによって隙ができたフラガに対して山河は攻撃を続ける。


「アシスレット!」

「!!」


続いて山河が言葉にした【アシスレット】はスイレンのバレットモードとタイムのアシストモードを合わせたプログラム。音声を認識したデバイスはすぐにモードが自動的に切り替わり、銃弾の攻撃をする。敵は銃弾を近距離で受け仰け反るが、バランスを崩しながらも火の魔法攻撃を放つ。攻撃をされることは予測していた山河。今度は防御出来ないとわかっていたので回避行動をとり距離を少しだけとる。


「続いていきます。デューム!デュレット!アシスム!」

「!!」


走りながら銃での攻撃を続けて行う山河。フラガは自身に向かってくる弾を完全ではないが剣や魔法で打ち消す。攻撃中にも関わらず、走り回っている山河は反撃を恐れずにフラガへ向かっていく。


「リフレット!」

「!」

「デュスタード!リスタード!アシスタード!!」

「!!!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・。ここまでやれば。」

「ヒール。ヒールプラス。ヒールクロス。」


9連続の攻撃を終えた山河はフラガの様子を見る。フラガは山河が攻撃してこないことを認識した後に回復行動をとっていた。予想外の行動に山河は一瞬、動揺したがすぐに切り替える。


「プラスに考えるか・・・。コナの攻撃があったから、あいつが回復をした。」

「詠唱開始。」

「ん?」

「ヴァンさん、詠唱を妨害してください!!高レベルの魔法攻撃は防御の上でもダメージが大きくなります。」

「小澤さん!?」

「あのモーションは恐らく、属性付与攻撃のためのものです。唱えている言葉からすると、雷系です・・・。って、雷??」

「ちょっと、小澤さん。ビームモードとアシストモードで攻撃してますけど、フラガがダメージを受けている様子が見られないんですけど。」

「に」

「に?」


山河から状況を聞いた小澤は驚きすぎて片言の喋り方になった。山河はその異変に気づき、小澤がいる所を見てみる。目が合った直後、小澤は焦り、そして、叫ぶ。


「逃げてください!あれを受けたら、死んじゃいます!!」

「へ?」

「いいから早く!肉体にダメージはなくても、精神に受けるダメージは相当大きくなると思います。」

「精神ダメージって、あっ!!」

「ショック死です!!」

「そういうことか。わかった、ありがとう!」


小澤の話を聞き、危険な状況だということを理解した山河。山河の動きを見て、状況を理解してくれたと安心する小澤だが、詠唱を止める方法は見つかっていない。それが彼女をすぐに不安な気持ちにさせる。


「私も逃げますから、早く!!」

「了解。ただ、俺は最後に一撃を。」

「ええっ?」

「ぶつけて・・・、倒すっ!」

「か、必ず逃げてくださいね。」


現場から退避していく小澤と話をしていた山河は目を閉じる。そして、思いつく一撃をきめるために戦況を理解し、自分の動きをイメージしていく。ターゲットはレベル3なのか4なのかそれは関係ない。現実化(リアライズ)していても、わかる人とわからない人がいる。この歩行者天国、現実化(リアライズ)舞台(フィールド)にいると自覚していなければフラガは見えない。自分が攻撃したり、されたりすることがない。


現実(リアル)世界(ワールド)電子(サイバー)世界(ワールド)か・・・。」

「準備完了。発動10秒前。」

「逃げてぇぇぇぇ!!」


山河は立っているまま、目を閉じ、強く考える。周囲の音、声は聞こえないほどに集中をする彼に小澤の叫び声は届かない。周りのことを気にしない彼は口に出さず、心の中で自問自答する。


「蔦野さんが言っていた、色という大容量の情報は色の情報が無いものよりも強い。フラガの攻撃には色がある。対して俺の攻撃には色が無い。セルフカラーは自分自身を表しているものだから、選んだ色には個性が出る。」


立っているままの山河にフラガは攻撃を仕掛ける。


「サンダーダブルクロス。」

「いやああああああーーー!」


フラガの攻撃。それが山河に直撃したのを目撃した小澤。


「避けられた。」


フラガがゲーム内での台詞を言う。それは攻撃が回避されてノーダメージになった時の台詞である。雷の直撃を受けたはずの山河。彼の周囲には焦げた臭いのする煙や痕が残っている。だが、彼は無傷だった。その意外な状況を確認した小澤。


「や、山河さん・・・。」


状況を確認して報告をしなければいけない。それはナビゲーターとしての仕事の1つだと分かっている小澤は泣きながらも仕事をまっとうしている。


「すぅぅーー。」

「ぐすっ。山河さん・・・。やま、かわさん?」

「フラッシュ・チェイサー!!」


雷を受け、動けずに気絶したと思われていた山河。彼は突然、目を見開き、動き出してビームモードのスイレンとアシストモードのタイムで攻撃をする。その攻撃はフラガの隙をつき、ゲーム上でいうクリティカルヒットとなる。攻撃を受けたフラガは回復したばかりのはずだが、一撃で倒され、その場から消えていった。攻撃を終えた山河のことを見た小澤は今までの山河と様子が違うことに気がつき、呟く。


「デバイスが、光ってる・・・。」

「はい。」

「色が、ある・・・。」

「はい。これが、俺の・・・。俺が決めた色です。」


この時、山河は初めて、色を使った。


△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△


15時15分、若葉原地区某所。TKO(ティーケーオー)ブロックの選抜トレーニングに参加するはずのペアが1組いた。大遅刻をしている彼らは先を急ぎたいが、現実化(リアライズ)している情報体を3体倒していた。目の前にいる相手を倒せば4体目となる。


「これでトドメだ。」

「終わった~?」

「はい。やっと会場に行ける。というか、神林さんが寝坊するから。こんな大変なことに巻き込まれたんです。あと、ゲームはカバンの中にしまってください。」

「チヂのいうことでも、それば無理。あと、私は悪くない。この地区にいるエグザがザコなだけ。」

「ザコって、事実だけど。」

「協力プレイとかエグザ同士での競争ができない時点で、ここのエグザとチヂのレベル差がわかる。」

「誰かと競争でもできれば、遅刻の理由になるし、多少は怒りが収まると思ったけど、予想以上にここのエグザと僕にレベル差があるとは僕も思わなかった。」


FKO(エフーケーオー)ブロックから東京まで来た2人組。コードネーム【チヂ】の千々和(ちぢわ)大地。ナビゲーターの神林理沙。遅刻の理由を寝坊とは言えないので、具現警報(アラート)に対処していたことにしようと記録を残すために戦っている。だが、次から次へと出てくるターゲットに対して援軍の無い彼らは予想以上に手こずっていた。



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