Report23:若葉原地区2/魔法剣士
「お、おもちゃの銃と剣を使うことに抵抗が無くなっている。」
「え?」
「・・・、いや、何でもないです。」
14時32分、最初にいた駅前のビル入口に到着した山河と小澤。ふと、山河は独り言で思っていることを言葉にしていた。彼がカモフラージュのためにおもちゃを使いはじめて約1ヶ月、任務とはいえ人前でおもちゃを堂々と使うことに戸惑いや恥じらいが無くなっているのは事実である。そんな自分を自覚したのか、突然、山河はへこんでしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ、問題ないですよ。は、ははっ。」
「大丈夫そうに見えないので、心配ですけど、ヴァンさんが問題ないならいいです・・・。」
「気にしないでください・・・。ふぅーーー。」
気持ちを切り替えて、取り乱した自分を落ち着かせるように息を吐く山河。気持ちを落ち着かせた山河は小澤に声をかけて、再び若葉原地区を巡回する。周囲に気を配りながら歩いている山河。一方、その隣にいる小澤は小型端末を弄っていた。
「小澤さん、聞いていいのかわからないんですが、何をしているんですか?」
「えっとですね、この歩行者天国では私たちが持っている端末にフリーソフトをダウンロードして、起動させると誰でも簡単に現実化することができるんです。」
「へぇ~。」
「このイベント期間中にしか使えないのが残念ですけど、貴重な体験ができるとネット上で話題なんです。レビューも高評価なんですよ!」
「俺たちが持っているデバイスと似たことができるんですか?」
「銃刀法や公序良俗に反しないものであれば現実化できるみたいです。すごいですよね、これがもっと普及すればイルミネーションとかにも活かせそうですよね。」
「はぁ。」
山河は興味を示さなかった。だが、小澤は現実化するシステムやビジネスに興味津々である。普段の任務ではシステム面に関する改良を彼女は積極的にしているが、ここまで技術に思い入れがあるということを山河は知らなかった。歩き続けて、現在、駅付近にいる山河と小澤は休める場所を探し、少し休憩する。小澤は頻繁に具現警報が発生しないと思い、心に余裕が生まれたのか、自らの端末で様々なものを現実化して遊んでいる。
「暇ですね~、ヴァンさんも端末で色々と現実化してみたらどうですか?楽しいですよ、ほら!」
「俺はいいですよ、普段から任務で武装を生み出していますから。」
「今日は自由に現実化していいんですから、任務としてじゃなく本当に自分が出してみたいものを出してみたらどうですか?」
「・・・、まぁ、俺は次の機会があれば、やってみますからいいですよ。」
静かに答えた山河は小澤の手元から視線を外し、周りの様子を見た。歩行者天国へ遊びに来ているお客は端末を使い、楽しそうに現実化をしている。その光景を眺めている山河の表情は不安そうだった。そして、数分後、彼の表情が変わった。
「あれは何だ。」
「えっと、あれはゲームのキャラクターです。あそこまで本物に近い形で現実化しているなんてすごいですよね。」
「じゃあ、生み出している人はどこにいるんですか?」
「えっ!?」
「あれを操作している人がいないのは俺の気のせいですか?歩く姿をみていると質感を感じすぎるのは気のせいですか?」
「た、確かにそうですね・・・、って、見てください。あれ!」
「なっ!!」
彼らが目の前で起きていることを確認したと同時に具現警報の情報がデバイスに表示される。それは今、2人が見つめているキャラクターのことを示していて、それが危険だと判断されたということである。
「レベル3か・・・。小澤さんは少し離れた所にいてください。少し派手になりそうです。」
「はい、わかりました。それから、ヴァンさん、あのキャラクターは魔法と剣術を使って攻撃する魔法剣士のフラガです。ゲーム上だと火、水、風、雷の4つの属性の技を使います。」
「詳しいですね、小澤さ。」
「いいですから!早く倒してください!」
「小澤さん・・・、了解です。」
山河の言葉を遮り、小澤は少し興奮気味に喋る。彼女の様子を見て、これ以上は踏み込んだ話をしない方がいいと感じた山河はフラガにむけてバレットモードのスイレンで攻撃をする。そして放った銃弾はフラガに当たり、彼は弾を当てた山河を見つめた。
「ダメージは受けたみたいです。でも、軽傷みたいです。もう少し、威力をあげないと攻撃してもすぐに回復されますよ、ヴァンさん。」
「了解。」
「相手はレベル3です。だから、切り札は使えません。ですが、デバイスの同時使用が承認無しで可能です。」
「わかっています。小澤さん、サポートお願いします。」
「はい!!」
山河は銃で攻撃しながら、移動をしていく。フラガは攻撃を受けたり、剣で山河が放った銃弾を弾きながら接近していく。そして、フラガが山河に広範囲斬撃を放ち、山河はダメージを体感する。ダメージを受けつつも、山河は走りながら回避や攻撃を続けていく。
「っつ、痛ってぇ。」
「ヴァンさん、急いでください。他の場所ではレベル4のターゲットが現実化しています。複数の場所で同時になんです。」
「ちっ。」
「今、他の場所へフォローに行けるのは私たちだけみたいです。」
「小澤さん、目の前のターゲットは多分、レベル4だと思う。俺だけじゃ対応ができない。」
「ええっ?」
「俺だけだと厳しいですから、力を貸してください。俺たちなら、レベル6だとしても立ち向かえます。」
「ヴァンさん・・・。」
「デバイス同士の接続が良好なのかどうかは小澤さん次第なんです。よろしくお願いします。」
「デバイス同士の接続良好です。いつでもいけます。」
「タイム、アシストモード。スイレン、バスタードモード」
山河は2つのデバイスから武装を現実化した。そして、バスタードモードで生み出した剣を握り、情報体となっている魔法剣士、フラガに攻撃をしかけていく。




