Report20:関係1
任務を終えた21時頃、縦須賀地区にいる山河は渕上とファミリーレストランで食事をしている。お互いに担当している地区である佐々木地区と縦浜にある神奈山地区についての話をして、情報交換をするのだが、
「アーサーはどうして応援に来たんですか?地区としては近隣ではないと思うんですが。」
「俺、暇だったからな。あとデバイスに具現警報表示があったからにはいかなきゃいけないだろ。」
「そうですね、でも距離があるかと。」
「距離なんてどうでもいい!それよりも、ここまで来たついでに、ちょっと聞いていいか?」
「何ですか?」
「まず、敬語やめろ!」
「えーっと、どういう意味ですか?」
「俺とお前は友達なんだ。友達の関係なんだから、堅苦しい言葉なんていらないんだよ!遠慮もなしでよろしく!」
「ま、まぁ、徐々に。」
「ああ、それでOKだ。で、早速なんだけど、トレーニングの件で話があるんだ。」
「合同トレーニングはしばらく無いはず・・・。」
「いや、あるぞ。TKOブロックから1月にある選抜トレーニングの招待を受けなかったのか?」
「えっ?招待は受けてないし、行く気も無いですし。」
「俺はお前も招待を受けているのかと思ったんだ、ゴメン!」
無表情の山河を見て、渕上が慌ててフォローする。ちゃんと会話したのはトレーニング以来だったので、実はお互いのことをあまり知らない2人。だから、山河の表情が無いことに慣れていない渕上は山河の機嫌を損ねたのではないかと思った。
「俺は招待を受けても行くつもりないから、気にしないでいいです。」
「お、おう。わかった。まあ、トレーニングの話は終わりにして・・・。」
2人はアークバスターズのことや自らの私生活について話をする。仕事のこと、ナビゲーターのこと、今までのことなど、時間が許す限り多くのことを飽きもせずに話していた。エグザの2人が話をしている一方ではナビゲーターの小澤と三上も交流をしている。
「そういえば、三上さんは普段、何の仕事をされているんですか?」
「普段はイラストを描いてるの。」
「えっと、漫画家なんですか?」
「その~、同人誌でイラスト書いていて、たまに販売会にも出てる。私はイラスト書くのに時間をかけるタイプだから、仕事をする時間が無くてバイト生活してるんだ~。」
「は、はぁ~。何だか大変そうですね~。」
「ん~、普通に仕事していると仕事と任務の時間調整が必要で活動に支障が出るけど、アルバイト生活だから時間調整がしやすいし、大変じゃないかな。」
「私は洋服屋の店員だから、すぐに休むとか、時間調整ができないので少しうらやましいです。」
しばらくした後、渕上が三上と連絡を取り、4人で会話をはじめようとしたが、時刻は23時を過ぎていたので話はお開きとなった。別れの際に三上が山河と小澤にデータを転送する。それは話題になっていたTKOブロックの選抜トレーニングの日程表だった。
「三上さん、これは?」
「アキラ君が話をしたでしょ、トレーニングの招待を受けたって。」
「あの、三上さん。私はその話を聞いていないです。どういうことですか?」
「まあ、資料を読んでみればわかるから。それじゃ、またね!」
「えっ、あの、ちょっと!」
三上は手早く説明をして、通信を終える。ざっくりしすぎた説明に慌ててしまう小澤に対して、転送されたデータの内容を読んだ山河は急に冷静になった。それは彼が知らない話であるが、関わりを持たざるを得ない内容だからである。
「レベル6の情報体と戦う訓練・・・。」
呟いた山河は表情を変えず、文面を見ている。招待を受けていないので無関心のように見えるが、実際は選抜トレーニングに興味を持ち始めている。落ち着きを取り戻した小澤も山河と同じメールをみるが、その瞬間、顔色が悪くなった。それはトレーニングに関わりたくないという気持ちがはっきりと表れている証拠。
「ヴァンさん、デ、データってもう見ましたか?」
「はい、見ました。でも、俺達には関係ないことですから、サッと見ただけですね。」
「あ、ああ~、確かにそうですね。関係ないですよね、関わりたくないですよね。」
「まぁ、招待受けて無いですから、参加する資格ないですよ、俺たちは。」
「あははは~・・・そうですね~。」
小澤は苦笑いしていた。自分達に関係ないと山河は言っているが、彼女の考えていることは違った。自分達に声をかけてきた渕上と三上。彼らは山河と小澤が誘われていると思っていた。つまり、山河達は誘われる程の実力を持っていると渕上達に思われている。だから、関わりたくなくても関わらざるを得ない状況になるのではないか。そんな気持ち、不安という気持ちを持ったまま、山河との通信を終える小澤。
「巻き込まれなければいいけど・・・。はっ!!」
思わず呟いてしまう小澤。呟いていたことに気がついた彼女は、山河の癖がうつってしまったかもしれないと慌ててしまう。ただ、無意識に呟いてしまうほどに彼女は選抜トレーニングの話を意識しているのは確かだった。
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翌朝、通勤中の山河に連絡が入る。寝ぼけ眼でデバイスのメールチェックをした山河は不機嫌になっている。その内容とはトレーニング案内ではなく、呼び出しだった。
「明後日の土曜日に縦浜のカコミライ地区、だいち橋ターミナルに6時集合。しかも、本名で招待っていうか・・・。呼び出しだろこれ。」
周りに聞こえないほどの声でぼやく。不機嫌ではあるが、それ以上に眠気の方が強く、すぐに眠ってしまう山河。眠気が取れないまま、出勤した山河。朝から急に仕事をたくさん命じられた彼はドタバタと動き回ることになる。仕事に集中した結果、彼はメールの内容を忘れてしまう。メールのことを気にする余裕が無いほど仕事をすることで、彼は逆に仕事へ集中することができ、いつもよりもテキパキと仕事をこなしていった。幸か不幸か、その状況は金曜日の夕方まで続いた。
(や、やっと、落ち着いた・・・。)
「お疲れ様。大変だったね、なんか色々と。」
「まぁ、そうですね。仲村渠さんも忙しいですし、皆さん忙しいのは変わりないですよ。」
「いえいえ、山河さんの方が忙しいですから、絶対。」
「まぁ、お互いにお疲れ様ということで。」
同僚の女性、仲村渠が山河に声をかけてから帰宅する。会話が終わった直後に山河は静かに息を吐いた。目には見えない疲労が溜まっていたのか、息を吐く時間は長かった。
(何か苦手というか、面倒というか、疲れるんだよな・・・。)
帰り支度をしながら、仲村渠と話すのは苦手なままだと考えている山河。彼女は以前、山河と話をした際に『同期にあたる山河とは何でも話せるような関係でいたいと思っている』と言っていた。それを聞いた山河は、うっとおしいと思っていた。その時の気持ちを思い出してしまった彼は何か別のことを考えようした。すると、デバイスがメールを受信する音が鳴る。それは小澤からのメールだった。観光協会を出てからそのメールをチェックする山河。
「ん?『お話があります。20時に三里浜駅で待っています。』って、どういうことだ?」
突然のメールを見た山河。差出人である小澤の意図がわからないまま、彼はとりあえずいくしかないと思い、待ち合わせ場所へと向かう。




