Report19:応援要請2/シークレットストライク
山河が縦須賀市役所付近に到着したのは19時50分を過ぎたころだった。山河よりも先にいたエグザ5人の様子はというと疲労がたまっているのは見て明らか。自分たちの攻撃が目の前の情報体に対してあまりダメージを与えることが出来ていないという事実は彼らに相当な精神的ダメージを与えている。
「来るのが遅い!!早く対処しろ!」
「すみません。」
「なんとかして!」
「はい。」
到着したばかりの山河に対して、回避と攻撃を続けている他のエグザたちが反応する。彼らはストレスが溜まっているのであろうか、必要以上に尖った言葉で山河に強く怒鳴りつけている。
「(めんどくせぇ、けど)気にする余裕は無いみたいだ。」
「そうですね。ヴァンさん、協力してくださる3人のデバイスはあと2分で準備ができます。」
「了解しました、準備完了次第、イクシードでぶっ飛ばします。」
「あの・・・、多分マズいです。攻撃のあとに武装使用不能になるイクシードはこの状況では諸刃の剣です。今は改良を進めて、使用不能時間を2分まで縮めました。それでも使うのは危険です。」
「じゃあ、どうすれば?」
「ヴァンさんが考えた【圧倒的に強い力で倒す】というのは、私もその通りだと考えています。ただ、今回の場合、ヴァンさんが使おうとしていた凌駕攻撃だと攻撃力は抜群に高いですが、一撃のあとに生じるリスクが他の切り札よりも大きいんです。加速弾は罠を張るタイプで威力というよりも意表をついて大ダメージを与える攻撃です。今回の情報体は意表をつくことが難しいと思います。」
「確かにそうですね。」
小澤はデバイスのデータ調整をしながら、山河の考えに異を唱える。彼女は山河の目の前にいる情報体の特徴を分析して把握したからこそできる話をしている。情報体は球体で腕が9本、目は9個、口は9個あり、それらは全て常に動き回っているという特徴。情報体がとっている他のエグザの行動に対する対応。小澤はそれらを加味した上で凌駕攻撃と加速弾を使わない方がいいと提案していた。
「イクシードもアクセルもダメっていうことはレディエイトですか・・・。」
「そうですね、適切な対応かどうかは別として、放出剣の選択肢しかないと思います。発動後のリスク発生を抑えることと状況変化への対応という点で考えると他の2つは選びづらいです。」
「ふぅ・・・。普段の任務では剣をあまり使っていないけど、やるしかないか・・・。」
「すみません、お願いします。」
「まぁ、ナビゲーターが出した分析結果と対策ですから。信じてますよ、小澤さん!」
「あっ、えっ?あぅ~、が、頑張ります!!」
山河の言葉に照れながらも作業を続ける小澤。彼女が準備をしている間、バレットモードの弾で牽制をして、時間を稼ぐ山河。他のエグザたちは攻撃をしたり、逃げたりと様々。幸いにも情報体はランダムに攻撃を仕掛けている。光線を出したり、腕による打撃をしたりと攻撃にバリエーションがあるのは厄介だが、狙いすました攻撃が無いのは運が良かった。
「ヴァンさん、出力を無理やり大きくするので、急に機能停止が起こるかもしれません。協力してくれる3人のエグザの内、2人のデバイスは処理速度向上のため、残り1つは動力源としています。」
「剣の長さは調整可能ですか?もし出来るなら、通常よりも少し長くしたいです。」
「わかりました。バスタードの状態で調整してから放出剣を使う手順になりますよ。」
「構いません!っと、徐々に回避が難しくなってきた。多分、ターゲットの情報体は俺たちの回避パターンとか学習しているかもしれないです。」
現場にいる山河達は疲れ始めている。途中から合流したとはいえ、動き続けている山河はもちろん、最初から戦っている他のエグザは息が切れている。
「お待たせしました。ディスチャージ、スタンバイです。5分が限界だと考えてください。」
「5分ですね、ありがとうございます。スイレン、バスタードモード!」
「剣の長さは調整しました、ヴァンさんっ!」
「俺はいつでもいけます!」
「はいっ!いきますよ、スイレン、ディスチャージ・スタートです!」
小澤の合図で山河が握る剣、バスタードモードはエネルギーを放出し始める。剣の状態は光が溢れるというよりも勢いよく噴き出しているという状態。その剣を見た周りのエグザ、ナビゲーターたちは驚いている。それは山河が使う剣の力の大きさを理解したからだ。技術が未熟だったり、経験が浅いエグザが使うストライクフェイバリットよりも大きな力となっている今の放出剣は現場にいるエグザ全員が初見。
「はああああっ!」
「ゴオオオオオオオオオオ!」
「っと、攻撃されるし、避けられるし、あの情報体が叫ぶとか。」
「ヴァンさん、大丈夫ですか?」
「ちょっと、マズイ。だけど・・・、小澤さん、プリマが使うあの技っぽいことはできますか?」
「あの技って何でしょうか・・・、って、あ、あの大剣で攻撃する一刀両断の?」
「それっぽい技ができれば何とか倒せそうな気がするんです。」
「えっと、デバイスが持っている力とデータ処理能力は十分だと思います。ただ・・・。」
「ただ?」
「大きい力に振り回されないか心配です。力が大きい分、暴走のリスクも高くなります。」
戦いながら、調整しながら、言葉が交わされていくうちに彼らの考えはまとまる。切り札の制限時間は残り4分ほど。周りのエグザの状況、自分たちの状態を踏まえて、山河と小澤は自分たちのとるべき行動を決めた。
「小澤さん、お願いします!」
「わかりました、30秒待って下さい。準備出来次第、データコードを送信します。」
「了解!」
剣形態であるバスタードモードを解除したくない山河は情報体の攻撃を回避することに集中する。時間が無いのはわかっている。少しでも早く倒さなければならないが、ターゲットである情報体が繰り出す攻撃を避け続けて、小澤がしている準備が整うのを待つ。だが、回避を続けるにも疲労がたまり、反応が遅れる。
「ガアッ!!」
「うわっ、痛ってぇ!今の攻撃で結構ダメージ受けた。ちょっと、マズイかも。」
「おっ、お待たせしました!!コード送信完了です。」
「了解です。大技いきます、全員回避と防御に専念してください、加減ができませんから!」
『はぁ?』
「ゴオオオオオオオオーーーーー!」
「ふぅ・・・。シークレットストライク!」
『ソード・トゥ・ディスセクトーーーー!!』
「グワァァー!!!」
山河は放出剣でターゲットを連続で斬りつける。情報体は攻撃を止めて、斬りつけられた部分の回復だけをしている。最初は回復速度が山河の連撃よりも早く、攻撃は効いていなかった。だが、今、山河がしている攻撃は放出剣での攻撃をさらに強化したもの。斬撃の痕は消えずに残るという効果を付与した技、ソード・トゥ・ディスセクトである。
「消えた傷が再び現れた!?」
「斬撃の痕が蘇った?」
他のエグザたちは、山河がくりだしている連続攻撃の余波を受けつつも、それぞれの感想を言っている。彼らの感想を気にせずというよりは、気にする余裕が山河には無い。それは放出剣の制限時間が残り2分もないということを意識しているからである。
(制限時間があるからこそ、エネルギーを使いきるべきだ。)
山河は目の前の敵を倒した後について、何も考えていない。今、自分がすべきことは最悪の事態にさせないこと。そう思いながら、剣による連撃を止めずに消耗が激しい技であるソード・トゥ・ディスセクトを使い続ける。
「ヴァンさん、あと45秒です!急いでください!」
「わかって、いま、すっ!!」
「何なんだよ、あいつ。あいつの攻撃で大きかった情報体が小さくなっていく。」
「彼は本当にルーキーなのか・・・。」
「よかったぁ、もう少しで終わるんだ。」
山河の放出剣終了まで残り30秒。攻撃量は情報体の回復量を上回り、もう少しで情報体が消滅するような状況になった。周りのエグザたちは制限時間のことを知らないので安堵しているだけだが、山河と小澤は焦っていた。
「ヴァ、ヴァンさん。お願いします!」
「チッ、くそっ!間に合わないかもっ!」
「頑張ってくだ、って、ウソ!!」
「なっ!!」
放出剣終了まで12秒というタイミング。山河と小澤が驚いたのは2つ。1つは遅れてきたルーキーが遠距離攻撃をしてトドメをさしたこと。もう1つはそれが見知った顔だということである。遅れてきたエグザの攻撃で情報体は消滅して具現警報が解除され、それを確認したエグザは山河に話しかける。
「間に合ったな。大丈夫だったか?」
『アーサー!?』
遅れてきたエグザはコードネームがアーサーの渕上。山河は彼と面識があり、また、山河と仲がいいエグザでもある。渕上の攻撃によって戦いが終わった現場では、それぞれのエグザが報告をしようと準備をはじめていた。




