表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーアイデンティティー  作者: 三笠聖
20/38

Report18:応援要請1

12月中旬、佐々木地区にある満潮アリーナ。平日の13時過ぎ、スポーツ施設を活用している高齢者が多くいるこの状況で、山河と小澤は任務をしている。


「小澤さん、現場到着しました。」

「わかりました。ヴァンさん、すみません。私が仕事中なのでサポートが満足にできません。なので、ヴァンさんにほとんどをお任せする形になります。」

「了解。通常モードだけでなんとかします。現実化(リアライズ)舞台(フィールド)展開!」

現実化(リアライズ)舞台(フィールド)展開申請を受諾、人工衛星アンジェが申請者の座標を確認。申請地点から半径100mに球体型の現実化(リアライズ)舞台(フィールド)を展開します。」


山河は彼が所持しているデバイス、スイレンの画面に親指以外の4本の指をのせて、スワイプした。任務の度に何度もしている動作なので、動きは最初の任務に比べると速く、スムーズになっている。偶然にも満潮アリーナの一角は現実化(リアライズ)舞台(フィールド)の範囲に入っている。


「スイレン、ビームモード。ターゲットは2体。大きくないし、何かの形になっている訳でもない。仕事の途中だし、早く終わらせます!」


山河は現実化(リアライズ)舞台(フィールド)内で銃を構え、空中に浮かぶ情報体に砲撃を放つ。砲撃を受けた情報体はすぐに消えて、任務完了となる。


「小澤さん、任務完了。フィールドは解除してください。」

「わかりました。お疲れ様です。」


山河が任務完了の報告をしている様子を遠巻きに見るアリーナの利用者たち。利用者たちは様々な話をしている。話の内容は山河にも聞こえている。


「あのスーツ着ている人は何していたのかしら。」

「さぁ、怪しいわねぇ。」

「皆さん、知らないの?うちの旦那に話を聞いたんだけど、彼は俳優さん目指しているんですって。」

「そうなの?」

「うちの旦那って警察官やっているじゃない。それで話を聞いているのよ。ああやって、ゴーグルつけて、おもちゃの銃を使ってアクションの練習をしているみたいなの。」

「家でやればいいじゃないの、迷惑だわ。」

「そう思うでしょ、それで話を聞いた所、恥ずかしさを無くすために外で練習しているんだって~。」

(演技の練習って言わないと、怪しまれるだろ。一般人は現実化(リアライズ)舞台(フィールド)での戦いを見ることができないんだから。)


何も事情を知らない一般人を気にしていても仕方がないと割り切った山河。今は演技練習という理由づけで自由に動けているが、警察官から職務質問をされたときは危機的状況だった。


△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△


合同トレーニングに参加する以前、とある日の夕方の時間帯。山河が任務を終えて、小澤が現実化(リアライズ)舞台(フィールド)を解除した後の状況。帰ろうとした山河は突然、彼の背後から声をかけられる。


「キミ、ちょっといいか。」

「何でしょうか?」

「警察なんだけど、君の挙動が怪しいと通報があったんだ。だから事情を話してくれないか?」

「え?えっと・・・。」

「話せない事情でもあるのか?犯罪に繋がるようであればこちらとしても対応をしなければならない。」

(マジか、面倒くさいことになった。バレたらマズいんだよな・・・。)


佐々木警察署まで連れていかれて、事情聴取された山河はホントのこととウソのことを伝える。ウソの部分というのは【舞台俳優の卵】であること。演技練習として普段から外でアクションを交えながらやっていると話をした。最初は怪しまれたが、佐々木地区観光協会の関係者であることが信用に繋がり、何とか納得してもらえたのだ。警察にはアークバスターズに所属していると話せば、すぐに聴取から解放される。だが、簡単に話すわけにはいかない事情がある。警察には色々な貸し借りを増やさないように日本支部から命令がでているのだ。


△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△


(あの時のことは今でも思い出すだけで、ヒヤヒヤした感覚がよみがえってくる。)


彼は車で観光協会へ移動しながら事情聴取された時を思い出していた。あの出来事以降、住民から怪しまれても【演技の練習だから】ということで納得してもらえるようになったのだ。一部の噂では彼の【演技】が好きになり、それを見たさに追っかける住民がいるらしい。突発的に発生する非日常的なこと、つまり、山河が任務をしている姿は珍しいからである。その出来事や合同トレーニングでの出来事を振り返っている間に山河は佐々木地区観光協会に戻ってきた。


「山河さん、田口さんから電話がありましたよ。折り返しお願いします。」

「ありがとうございます、仲村渠さん。」

「山河君、ちょっといいか。」

「何でしょうか、下山事務局長。」

「協会の名誉会長を駅までお送りしてくれないか?」

「承知いたしました。」


山河が勤務を始めてほんの1ヶ月と少しで色々な業務を受け持つことになり、慌ただしくなっていた。今まで担当していたご当地キャラクターの管理に加えて、観光協会が経営をしている土産販売店の会計担当、イベント運営など様々なものを担当するようになった。ちなみに、送迎や買い物などの雑務も頼まれたりする。いつものように様々な業務をしているといつの間にか時刻は17時30分を過ぎていて、職員は帰宅し始めていた。


「山河君、まだ仕事するのか。早く帰りなよ~。私は帰るからね。」

「はい、局長お疲れ様です。」


残って仕事を1時間程した山河が帰ろうとする。すると、スイレンが【具現警報(アラート)】を表示。場所は小代(しょうだい)にある小学校。協会から現場までは少し距離がある。


「最近の具現警報(アラート)は水族館とか自然公園とか観光客が訪れるスポットを示していたけど、小学校って。」

「小学校がどうかしたんですか?」

「あ、いや、何でもないですよ、仲村渠さん。お先に失礼します。」


独り言を仲村渠に聞かれて焦る山河だったが、小学校という単語だけしか聞きとっていなかったことに気付き、すぐに冷静さを取り戻した。そして、彼は協会を出て、現場に向かう。


「ヴァンさん、小学校への出入り許可はすでにもらっています。警察のお墨付きです。」

「了解です。あと10分で現場到着します。」


18時50分、現場に到着した山河。彼はすぐに現実化(リアライズ)舞台(フィールド)を展開して、その範囲をゴーグルで見る。彼が見たのは情報体が集まり、それらがニワトリの姿を形作っているという状況だった。


「大きくないし、10体以上はいるし、走り回っているし、ちょっと厄介だな。」

「でも、今のヴァンさんなら難しくはないですよね。これなら応援要請なくてもいいですね。」

「はい。バレットモードでいけそうです。」


山河と小澤の予測通り、バレットモードの弾で撃ち抜かれたニワトリの情報体は1体ずつ消えていく。そして、残り2体になったタイミングで山河たちに応援要請のメッセージが届く。


「すみません、ヴァンさん。応援要請です。」

「了解です。小澤さんは先に要請内容を把握してください。俺は目の前の2体を倒してからメッセージを見ます。」

「わかりました。」

(何故、俺たちに要請が?普通ならエヴォリューションできるペアに頼むのに。)


ニワトリの情報体は襲ってこないことが交戦してわかったので、対処に余裕がある山河。彼は小澤の通信に対して冷静に返答する。そして、2体を倒しながら、要請の理由を考えているが、2分もすれば倒し終わっていた。


「小澤さん、任務完了しました。応援要請の件はどうなっていますか?」

「あ、ヴァンさん。急いで縦須賀市役所に向かってください!!はっ、早くしないと皆さんが危ないです!!」

「り、了解。」


山河は小澤の慌てている様子を知り、急いで縦須賀へ向かう。移動中のバス内で状況を確認しようした瞬間、具現警報(アラート)をデバイスが受信した。その現場というのは、応援要請があった市役所となっている。その詳細を見た山河は思わず、内容を言葉にしていた。


「脅威レベル4って、マズいやつだろ。さっきは3だったのに、上がるとか・・・。」

「そうです、マズいんです!」

「そういえば小澤さん、この具現警報(アラート)はどういうことですか?」

「あの、えーっと、ですね、脅威レベルが上がったんです。さっ、最悪の事態に1つ近づいたということです。って、ああっ、皆さん頑張ってください!」


小澤をはじめとしたナビゲーター陣が慌てている様子が通信してわかったのだが、自分まで慌てるわけにはいかないと山河は自身に言い聞かせる。具現警報(アラート)は現在、7つのレベル分けされている。レベル1が1人で情報体に対応可能。レベル2は長期戦になるかもしれないが1人でも対応可能、場合によっては応援が必要。レベル3は1人での対処が困難、複数人での対応推奨。レベル4は大人数での対応必須。レベル5はリアリゼイションの危険性が高いので、対処しつつ関係機関に連絡。レベル6は情報体がリアリゼイションをしている、任務放棄してでも逃げることを優先。または、現実化(リアライズ)舞台(フィールド)が無い状態で情報体が存在している。レベル7は想定外の脅威。これらの状況判断基準に当てはめると縦須賀の件はレベル4である。それを確認した時、山河は佐々木駅にいた。電車に乗り込んだ山河はマナーを気にせず、通信を始める。


「小澤さん、電車に乗りました。現場到着までおよそ30分かかります。」

「急いでいるのはわかっていますけど、急いでください。リアルワールドに影響が出るかもしれません。今、4人いるエグザも怪我しています。一般人が騒ぎはじめています。」

「俺以外に向かっているのは?DYはどうしたんですか?」

「DYさんは薄木(うすぎ)地区で発生した応援要請に対応中です。ヴァンさん以外は2人向かっています。ただ、2人ともエヴォリューションは未修得です。」

「うーん。」

「ヴァンさん?」

「今いる4人のエグザはエヴォリューションしているのに情報体に対処できていないんですか?」

「は、はい。ストライクフェイバリットもコンビネーション攻撃もしたみたいですけど、情報体の自己回復が早かったり、避けられたりしています。」

「防御はされているんですか?跳ね返されるとかは?」

「あつ、1人現場到着して、彼が色付きの攻撃をしました。って、ああぁ、跳ね返されました!」


山河が現場到着するまで、残りはおよそ20分。縦須賀の現場には5人のエグザがいる。そんな彼らの様子を見ているKNG(ケイエヌジー)ブロックの幹部たちは準備をすすめていた停電措置を実行する。停電をすることで情報体に電力自体を与えないようにして、自然消滅してもらうという作戦である。実際に成功している事例があり、日本支部では、もしもの時の作戦の1つとされている。関係各所に根回しをしている作戦の実行時刻は19時19分。1分の停電。電車内にいる山河はその内容を事前にデバイスを通じて知っているので、停電が起きても慌てはしなかった。だが、停電が起きたことを知った他の乗客は混乱している。


「な、何だ?」

「早く帰りたいのに~。最悪~。」

「もしもし、今、停電だけど、そっちは大丈夫?」


乗客のほとんどが通話をはじめた結果、山河にとっては嫌な状況になる。それは小澤の通信が聞き取りにくくなってしまったからだ。刻々と変わる現場の様子を知りたいのに通信がまともにできないのは辛いと山河は思った。そして、停電が終わり、電車が走り始めたのは19時25分。


「ヴァンさん、聞こえていますか?」

「今、電車が動き出して、やっと通信が聞き取れるようになりました。」

「停電作戦は失敗です。フィールドを再度、展開したら存在していました。」

「わかりました。」

「あと、どれ位で到着しそうですか?」

「・・・。」

「ヴァンさん、聞こえていますか?」

「・・・、はい。あの、小澤さん、無茶なお願いをしていいですか?」

「は、はい・・・。」


山河は思いついたことを小澤に話す。小澤は驚き、無理だと主張したが、山河はしつこくお願いをし続けた。山河が説得をはじめてから5分ほど経過して、小澤は渋々ではあるが彼の願いを受け入れる。


「どこまで出来るか分かりませんよ。あと、皆さんに謝らないといけないですからね。」

「はい、無茶をお願いしてすみません。」


電車に乗っている間、山河は現場にいるペアに彼の提案を話す。だが、どのペアも彼の提案には反対した。そして、屈辱的な提案をされた怒りと情報体を倒せないストレスを合わせた怒りを彼にぶつけ続けた。それでも、山河は説得を続けて、縦須賀センター駅に着いた時点でようやく5組中、3組の説得に成功。提案に同意してもらえた。


「ヴァンさん、準備は完了しています。」

「ありがとうございます!ペアの皆さん、俺が現場に到着したら作戦実行します。合図は俺が出します!」

『了解。』


山河と小澤にとって、レベル4の情報体に対応するのは初めてのこと。不安を顔に出さず、無表情で山河は縦須賀市役所に向かっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ