Report11:チーム結成1
20時00分、全108名のエグザが体育館へ集まる。モニターには研修担当の蔦野照が映っている。蔦野は次のトレーニング、3人1組のチームで行うサバイバルについて説明をはじめた。
「皆さん、お疲れ様でした。次は3人1組でチームを作り、サバイバルを行います。HPはそれぞれに10000ずつ与えます。HPは分け与えることができ、回復も認めます。全員のHPが無くなった時点で脱落です。色が付与されている色攻撃、エヴォリューション状態による攻撃は使用可能とします。禁止事項は殺傷攻撃、エリア外での行動全てです。エリアはこの大学の敷地全てで、開始は20時30分からとします。今回のチーム戦ですが、通常の任務と同様に評価が付きます。ちなみに、生き残ったチーム3組までにはデバイスの機能改善をKNGブロックの総力をあげてお手伝いします、つまり、ご褒美ですね。あと、チームが組めなくてもサバイバルには参加してもらいますが、3人組では無い場合、このお手伝いの権利は無効になります。説明は以上です、それではチームを決めてください。」
蔦野の説明が終わった後、体育館内は騒々しくなった。誰と組めば褒美が貰えるのかを考えて動くエグザがほとんどである。組むべきではないと思われているエグザは蚊帳の外、経験豊富なメンバーと組めずに、ルーキー同士で組むチームも少なくなかった。
「騒がしいな。」
「ヴァンさん、落ち着いているのはいいですけど、チームどうするんですか!?」
「見ていればわかりますけど、デバイスの強化を目的に動くやつがいれば、異性と仲良くなりたいというやつもいます。俺はそんな簡単な理由でチームは組みたくないです。それに、この3人1組のトレーニング、意図があるんじゃないかと思うんです。」
「そうかもしれません。でも、深読みしすぎなんじゃないでしょうか?」
「深読みですか?」
「もっと、えーっと・・・、そうです!楽しくです!楽しみましょう!」
「え・・・?」
「一緒にいて楽しいチームです。不真面目よりは真面目の方がいいです、でも、真剣過ぎてピリピリしすぎたりとか、チームなのにライバルだから助けないとかは、私、嫌です。」
「(本当に不思議なことを考えるナビゲーターだな・・・)ふーーっ、すぅーー、ふぅーー」
「深呼吸ですか?」
「そうです、深呼吸すると落ち着くんです。だから、落ち着いた上で考えをまとめることができました。小澤さんの言う通り、楽しいチームにしましょう。」
「いいんですか?その・・・私が楽しいチームって言ったのは正直な気持ちです。でも、ヴァンさんは考えていたことがあるんじゃないでしょうか?」
「・・・1人じゃ、ないんです。」
「え?」
「俺が現場で戦うのは1人きりかもしれません。でも、小澤さんがサポートしてくれるから戦える。それを思い出したんです。ナビゲーターも一緒に戦っている。だから、独りよがりにならずに、一緒に戦う仲間の考えを大切にしようと思ったんです。」
「ヴァンさん・・・」
わずかな沈黙の後に話を切り出したのは山河だった。
「まず、チームを一緒に組んでくれるペアを探さないといけないですね。」
「それならっ!私、組みたいペアがあります!!」
山河と小澤が会話としている最中に、1人のエグザが山河に近づいた。そして、彼は山河に声をかける。
「俺と組まないか?」
「えっ?」
山河に声をかけた人物に驚く、山河と小澤。そして、コンピューター室では、小澤のもとに1人のナビゲーターが近づき、声をかけていた。小澤は近づいていたことに気付かずにいたので、声をかけられた瞬間、驚き、大きな声を出してしまった。
「私たちでチームを作ろう!」
「えーーっ!寿先輩!」
矢田と寿が山河と小澤に声をかけた。山河と小澤の2人にとっては非常に良い話である。声をこちらからかけようとしていた相手だからだ。山河と小澤の返事は快諾。あと1人のエグザを仲間に入れることができれば、デバイスの強化をしてもらえる条件が満たせる。ただ、残り1人をどうするかで、4人は悩み始めた。
「彩ちゃん達が加わったから、あと1人、どうする~?」
「先輩はあてがあるんですか?」
「彩ちゃん、ごめんね、あては無いの。」
「じゃあ、矢田さんは?」
「俺は無い。それと小澤、DYと呼ぶように言っているが、なんど」
「山河さんは?」
矢田の喋りを遮って小澤は山河に尋ねる。すると、山河は逡巡してから話す。
「・・・、2人います。1人はエグザの朝霧咲綾、コードネームはクナウです。もう1人はエグザのコードネームがプリマです。」
「山河君の言っている2人はルーキーだね。知り合いなの?」
「講義の時に少し会話をしただけです。朝霧さんは席が近くで、ナビゲーターの加曾利さんが色々な話をしてくれました。でも、彼女たちは色を決めて、すぐに教室を出ました。私たちは講義の最後まで残っていました。山河さんがなかなか色を決めなかったんです。その山河さんと同じようにプリマさんはなかなか色を決めなかったんです。」
「それで2人はプリマと話をしたの?」
「少しですね。私が話しかけましたけど、反応が薄くて・・・。」
「1つ、感じたことなんですけど、あのお嬢様は敵に回したくないです。」
『えっ!?』
山河の言葉に体育館の矢田、コンピューター室の小澤と寿が同時に驚く。小澤と寿は単純に、山河がプリマのことを性格面で苦手としているからだと思っている。だが、矢田が考えていることは違った。
「ヴァン、制限を外した彼女はどれ位だ?」
「遠距離戦だと攻撃が当たるまでに避けられるかもしれないと思います。接近戦だと俺じゃ負けるかもしれないので、敵になった場合は適度な距離をとろうかと考えています。」
「・・・彼女は今、この場にいるのか?」
矢田の言葉に反応した山河は周りを見たが、天野の姿は無かった。すると、話を聞いていた寿があることに気がつく。
「彩ちゃん、あそこのナビゲーターが怪しいボウズを従えてるよ~。」
「先輩、何言ってるんですか、この状況で。」
「だって、あれ見て、あれ!」
「どれですか・・・、ん?」
「ね、あのナビゲーターの女の子なんだろうね。」
「せ、先輩。あの女の子です。山河さんが言っているプリマです!」
天野はデバイス【ジャンヌ】の調整をするために、花川とコンピューター室で調整を行っていた。体育館集合を無視していた彼女はトレーニングの詳細を知らずに黙々と調整作業をしているため、チームを組むことの詳細を聞いていない。
「じゃあ、チームに入ってくれるのか聞いてみようか?」
「えっ!先輩、いきなりですか!」
「あと15分しかないから、時間がないし。まだ、チームが決まっていないのかは聞かないとわからないし。」
「だ、だいじょうぶでしょうか?」
「任せて!」
そして、寿は天野に話をしたが、完全に無視された。話を聞いてもらえなかったことに寿が軽く凹んでいる傍らで、小澤は花川がやっているデバイスの調整作業を見ている。花川はその視線に気づくことなく黙々とデバイスを触っているが、小澤が突然、彼に喋りかけた。
「なんで、そんな複雑な調整をしているんですか?」
「あなたは、あの教室の時にいた・・・。」
「えっと・・・、はい。」
「彩ちゃん、怖がってる?」
「い、いえ、そんなことはないですけど。それよりもです、先輩!」
「ねえ、あなたたち、私たちとチームを組まない?」
「お断りさせていただきます。」
寿の誘いに迷うことなく、断りを入れたのは天野だった。寿達に顔を向けず、デバイスの調整をしている。邪魔をするなという態度が明らかで、さすがの寿も困った表情をした。すると、
「あなたたちにメリットがある話なんです。」
突然、山河が回線を使ってコンピューター室にいる4人に向けて話をはじめた。




