表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/140

妖精息子3の1

 王城内の見回りをしていた兵隊虫ヘイタイムシは、ウンジェリゴの草をいっぱいに載せた籠をかかえ運ぶその珍妙な見てくれの生きものを見とめて、声をかけた。

挿絵(By みてみん)

「――やあ、透膜すけまくつき」


「えっ?……あっ、ヘイタイムシさん。ごきげんよう」

 『透膜つき』とあだ名された新入りの小間使いは、自らがかつぐ大きな草籠のわきから顔をのぞかせると、鼻にひっかけた透明な膜を器用に肩でずりあげて、こたえた。


(ぼっちゃまのお寝床用だな……それにしても、このもののすがたは何度見ても見慣れぬ)

 兵隊虫は、その10個ある眼からあざけりとあわれみのまじった視線を新入りにそそぐ。


(このものはたった2個しかない目玉で、さらにこのぶかっこうな透明の膜を通さねばうまくものを見ることができないという。手肢てあしも4本しか持たないし、つとめをするになんとも効率の悪い生きものだ)


 手が2本しかないから、一度に一籠しか運ぶことができない。自分のように

(眼と同じく)10本の手肢を持っていれば、一度に何個も運ぶことができるのに。


(まあこのものは奥勤おくづとめになったのだから、極端な力仕事は求められないのだろうが……そういえば、このものの容姿はわれわれしもかたより、むしろうえかたのそれに近いな。

 そのあたりも上の御目おめにかなったのやもしれぬ)


 案外、高貴な生きものなのかもしれないと思いながら

「どうだ?ぼっちゃまのご加減は」

 さらにたずねると


「ええ。お薬が効いたのか、ずいぶんよろしくおなりです」

 ほがらかにこたえる。


 兵隊虫は

「そうか……まさかおまえが持っていたのが、ぼっちゃまのおわずらいに効く薬だったとはなあ」


 なんとも奇特きどくなことがあるものだ。

 実は、このかわった透膜つきを森で見つけ拾ったのは、警邏けいら中だったこの兵隊虫である。


 意識なく倒れているのを、めずらしく思って見回り小屋にかついできたのだが、そんなヘンテコ生物が意識を取りもどすと

「自分が何者でどこから来たのかもわからない」と言うのだから、まいった。


(つかいみちが無いではないか)

 意思疎通する知性はあるが、見るからに身体からだも細く労働力としてはたよりない。このままでは、上つ方がお召しあそばす輿こしを引く甲虫たちの餌にでもするしかないかと(上役に報告および所持品の提出をしたものの)思案していた。


 今は戦時なうえ、各地で天変地異が起きて物不足なので、どんなものでも粗末にはできない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ