妖精息子2の54
真吾は直実に向きなおると
「そもそも妖魔がパスをつないだ時点で、ぼくらマナの供給サイドが有利に立つはずなんだ。なのに、そこのヘボ術師のように王子に使われ、しまいには取りこまれるなんて。魔道者として考えられないお粗末さだ。しょせん下輩だな。
無能なきみでさえ、そこの妖魔をちゃんと飼い慣らしているっていうのにね」
ほがらかに、ちくわを指差す。
「なにぃ」
怒る養い子をおさえて、直実は
「……ぼくは、この子になにもしてない。そもそもぼくは、きみのような魔能をなにももってない」
「ああ、そうだとも。おまえは魔能をなくしたから、平井の家に里子に出された。逆に、才能があるぼくが来島の家に迎えられた。いつも言っていることだが、ありがとうよ。おまえのおかげで、ぼくの魔道者としての前途はひらかれた」
直実は表情を変えず
「――なら、ちゃんと絵里のことを守ってやってほしい」
とだけ言った。
「それはむずかしいな。『わが』家では、あくまで女の魔能持ちは受け身の立場だ。最終的にどう利用されるのか、本人に気取られぬよう育てるのがしきたりだ。この子は、おれたち男がすべてを把握しているなんて考えてもいない」
直実は目をすがめて
「男が一方的に女を利用するなんて、まちがっている」
言うが、
真吾は
「そりゃ仕方ない。うちの家では、女はただの道具だ。
――まあ、よかったじゃないか?おまえは能無しだった絵里……実の妹に、自分の魔能を移した。おまえがそうしなきゃ、この娘はもうこの世にはいないところだ。なにせ女は男と違って、魔能がなくとも素材としていろいろ使い道があるからな。無能男子のおまえは、使い道もないから外の家に出された。ほんとうにおまえは妹思いのいいやつだよ、おにいちゃん」
ふくみ笑むと
「ただもう、絵里はおれの妹だ。いまのおまえになんら手出しは出来ない。おまえには、妹の行く末をただ黙って見ていることしか出来ない。
……おれが、なぜわざわざ魔道者が通う専門校でなく、こんな普通高校に通っているか、わかっているだろう?他でもない。おまえに、今のおれとの差を見せつけるためさ」
優越感の愉悦にひたる。
「……直実。あいつのこと、ぶんなぐっていいか?」
怒るちくわに、
直実は
「やめてくれ。いくらおまえでも、彼には勝てない」
とどめる。
そんな少年たちのやりとりをながめていた怪心尼は
「まったく。禍王家もおそろしいけど、玉蟲家もたいがいね」
あきれていた。
そうしているうち、校舎の上空で、すさまじい閃光があった。
「終わったらしい」
銀狼先生がつぶやいた。




