妖精息子2の53
それを見て、あわてて助けに入らんする直実をおさえたのは真吾。銀狼先生をおさえたのは怪心尼だった。
ぐちゃぐちゃに粘るからだで少女を覆いつくした妖魔は、しばらくすると、しかし
「……うん?……おあっ?……なぜだ!?なぜ我輩は、この娘を喰らうことが出来ない!?消化できぬぞ!…………あっ!ああっ!?……なぜだ!?なぜ我輩のほうが、この娘に取りこまれ出しているのだ!?……我輩のほうが喰われている!?……そんな!なぜ!?どうして!?……まさか!?我輩がこんなところで死ぬだなんて!そんなのありえない!……ああ、こんなのいやだ!いやだ!我輩はもっと食べてもっと大きく、そして王に……ああ!ああっ!!……」
巨大な体躯が縮んでいって、ついには消えた。そこに残ったのは、意識を失ったままの状態で横たわる少女……絵里のみだ。
その光景に、手をたたいて喜ぶのは真吾だった。
「よし!うまくいった!狙いどおり、絵里が妖魔を吸収した!」
そして
「よろこべ、直実!この娘は順調に『魔喰らい』として育っている!この歳であれほどの妖魔を取りこむだなんて、やるもんじゃないか!」
幼なじみに向かってハイ・タッチを求めるが、直実は黙って応じない。
真吾はつまらなそうに
「なんだ、ノリの悪いやつだな……まあいい、今日はなかなか良い日だ。最初は、雷の王子のほうを取りこませるつもりだったんだが、あいつもどうもおしまいそうだからな」
屋上の上空で渦巻く巨大な雲を見てわらう。
「代わりに、おなじようなモノで試すことができてよかったよ」
そんなごきげんな様子の幼なじみに、
直実は冷たい声で
「真吾。きみは雷の王子とパスをなした初めから、洗脳なんて1ミリもされてなかったんだろう?むしろ、雷の王子を彼自身にも無自覚なままで誘導したはずだ」
そのことばに、イケメンの生徒会長は決して人前で見せることのない爛れた笑みを見せると
「モチロン!そうだよ。あんな妖魔ごときにこのぼくが後れを取るとでも思ったかい?バカにしないでくれ。これでもぼくは、このかむのの街最大の魔道家・玉蟲の次期統領だぜ!あんな妖魔をひそかに誘導させるなんて、朝飯前さ。鵺郎おじさんにも協力してもらったしね」
そのことばに、理事長……怪心尼・蛟子は嘆息して
「やはり今回の件に、愚弟を噛ませたのはあなたね?まったく、アレは目を離すとすぐ悪さを……」
にがにがしくも言う。
「ええ。あのおじさんは、はりきって道化の役を引き受けてくれましたよ。『ねえちゃんに捕まる前にアバヨ』なさったから、もういませんが。また『オモチロイ研究』をするそうです」
「あの痴れものが……一度しめあげてやらぬと気がすまぬ」
姉は怒りに目を赤く光らせる。




