表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/140

妖精息子2の28

「……なにこれ?」

 佐和子は、いま自分たちが乗っているものにあきれていた。


 それはなんというか、直径が3メートルはあろうかという巨大な一つの輪なのだ。その転がり走る輪のなかに三人、上下反転することもなく快適に乗りこんでいる。いったい、ベアリングはどうなっているのだろう?

挿絵(By みてみん)


片輪車かたわぐるまだよ。妖怪ふうに言ったら輪入道わにゅうどうだけど、まあこれはあたしがつくった念体ねんたい……式神の一種だね」


 この奇妙な一輪車(?)は、天井が落ちて地の王子らが混乱しているあいだに、絵里が壁から造り出したものだ。


罪科つみとがは われにこそあれ 小車をぐるまの やるかたわかぬ をばかくしそ』

 手を当てながら詠むと、壁の一部がごっそりぬけ出し生じた。

 それに佐和子と顧問もろとも乗りこませると、疾走させたのだ。そしていまも移動を続けている。


「……もともとは輪入道に子をさらわれた母親が、子を返してくれと詠んだ歌なんだけど、あたしたちは、逆に片輪車をつくり出すのに使っている」


「でもこれ一輪で……」

 佐和子の問いに


「そうだね、かわったデザインだね。『ビッグ・ローリー』っていう人もいる。むかし、こういうのりものが出てくるSFがあったんだって。

 ふだんのあたしじゃ、とてもじゃないけど、こんな大規模な念体は生み出せないけど。 いまはエーテル全体が王子の力で活性化しているから、あたし程度の錬金テクニックでもこんなものが作れた……すごいわ!それこそ第一資料プリマ・マテリアを扱っているみたい!あの王子がエーテルつかいだったのは、ある意味運が良かった。おかげで逃げることができる」


 そこでことばを切ると、背後をふりかえって

「……とはいえ、なにせあの王子がふかく関わっている空間だから、じっとしていたら見つかる。『遣方やるかた()かぬ』設定だから、行き先はあたしにもわからないけど、こうやって移動し続けてるほうが見つかりにくいでしょうね」


 そんなまったく意味不明な説明をつらねる少女は、佐和子にとって急に見知らぬ人になってしまったように思えた。

「絵里ちゃん。あなたいったい……?」


 同級生のとまどい声に、美少女は

「わからない?******を息子にしてるくらいだから、多少は知ってると思ったけど。あたしはこの街の魔道家の人間だよ。ほんとは人前で術を使っちゃいけないんだけど、命が危なかったからね。さすがに、まだ死ぬのはいやだから」


(絵里ちゃんが魔道家!)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ