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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
二章
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39話

「な、なんだったんだ!?」


「もうどっか行ったみたいだぜ。続きだ続き」


結局鍵を突破する手段なんて無い。それこそピッキングの技術が必要だろう。


「へ、へへっ…この尻…」


三人で女を囲む様子はまるで花に群がる虫の様だ。


「やめて!こんなの…」


カチャ…。一人が掃いているズボンを脱ぎ始める。


「オラァっ!!」


バリィンッ!窓ガラスが粉々に砕け散る。


今や全員の視線が俺だけに注がれている。


「人気者になった気分だな」


そう、俺は一つ上の階から壁伝いにこのベランダに降りて来たわけだ。ガラスならば破壊するのも難しくない。


「な!?お前は!?」


「烏丸のところの!?」


「おーおーご存じで。三下のやる事なんざ丸わかりだぜ」


「おい!お前ら押さえつけろ!!」


東を拘束していた二人が一斉に襲い掛かってくる。


「おっと、運動も禄にしてねぇガキに捕まるかっての」


が、その動きは鈍く対処するのは難しく無い。


「クソっ!なんなんだよお前は!!」


幾度となく聞いてきたセリフだな。劣勢に立たされた人間はいつもそう言う。


「なんなんだよねぇ…俺にも分らん」


が、俺は俺だ。美羽がくれた名前だってある。


「何美羽を待たせてんだ。早く終わらせる」


「クソっ!!お前ら逃げるぞ!」


このまま逃がしても良いが…また同じような事をされるのも面倒だ。


今のうちに捕まえといた方が良いだろう。


「そういう訳にはいきません」


「…ずっと隠れてっやがったのか」


「そうですね。フィリア様からの命令でしたので」


突然男が姿を現す。その正体はフィリアの従者…キルだ。


俺に気配を悟らせない奴となると限られるからな。


「だ、誰!?」


困惑が困惑を産んで今や、東の脳内はとんでもないことになっているだろう。


「はっやっと分かったぜ。お前の気配の少なさがよ」


コイツの気配が極端に感知できない理由、それは自然体だから…といってもそれだけではない。


こいつは観測者の立ち位置をずっと取っている訳だ。こいつを観測している奴が居ないため、俺の気配察知が機能していなかった訳だな。


「……思ったより気付くのが早いですね」


「はっ…そんな技術、どこで身に着けやがった?」


普通に生きていれば思いつきもしなければ、実行も出来ない。


「……元から出来た。と言うのはどうですか?」


あり得ないな。こいつのそれは常軌を逸している。”下”でもこんな奴居ない。居てたまるか。


「そんな事より…俺を止めるんだろ?やってみな」


それにそろそろか…。


「……貴方とここで戦うのは得策ではありませんが…仕方ありません」


そう言って目の前から姿が消える。


それは気配を消すどうこうの話ではない。ただ単純にスピードが速い、それだけだ。


「……ちっ」


もう一段...いや二段ギアを上げた方が良さそうだ。


…………クソ…さっきも切り替えたから負担がデカい。


が、適応は出来た。


「………やはり…」


キルがぶつぶつと呟く。その心音、呼吸音、全てが今や情報として脳に流れ込んでくる。


「かかって来いよ、俺を止めたいんだろ?」


まるで俺が悪者みたいなセリフだが…ま、今はこいつとの戦闘を愉しむか。


「こちらも上げる必要がありそうだね」


口調が変化する。なんだと?こいつも更に上があると言うのか?


「はったりか?はっ、こっちから行くぜっ!!!」


俺はキルへと肉薄する。キルは動かない。いや...反応できていない。


「っらぁ!………マジか」


ギアを二段上げた俺の蹴りはキルの横っ腹に綺麗に入った筈であった。


その威力は下手な人間なら死ぬだろう威力だが…。


「ははっ、君はやはり特別だよ」


しかし…片手で受け止め、爽やかに笑う男が立っていた。


「だが、まだ早かった。キミと私では生きている年数の桁が違うからね…」


桁が違う…?こいつ…何者だ。


「どういう意味だ。それにまだ終わってもねぇぜ」


「終わりだよ。キミが仕込んだ罠にこちらのお姫様が引っかかりそうだからね」


なっ!?なんだと!?まさかコイツ…気づいてやがったのか。


「お前は一体…」


「私は私、君は君。そこに真実も何も存在しない。有るのは虚構、君もいずれ分かる時が来る」


虚構だと?意味が分からない。何も…何もわからない。


キルが目の前から姿を消す。気配も完全に消えた。まさに世界から姿を消す...幽霊みたいな奴だ。


「あ、貴方達は…」


「あ?たく…しゃあねぇ、おい縛るの手伝え」


キルがあの一瞬で三人を気絶させていたらしい。とんでもない技量だな。


これで俺の役目は一旦終わりだな。後は美羽がどうなっているか…だが。

次でこの話は一旦の終わりです。その次は過去編を書いて行こうと思います。

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