偽りの存在
「フィリアさん…少し良いですか?」
連理が出て行って直ぐにフィリアの元へ行く。
なんでこんな事を言う必要があるのかは分からないが…連理が必要と言っていた。
「ええ...なんでしょう」
「連理からの伝言なんですけど…」
「伝言ですか?どうぞ、遠慮せずに言って下さい」
内容が内容だけに気が引ける。別に連理の事だから深い意味は無いと思うが…。
「”下”と”上”お前はどっちが好きだ?って意味わからないですよね」
「……………意味が分かりませんが…少し失礼します」
何なんだろう。何故連理がこんな伝言を頼んだのかも分からない。
フィリアさんもどっか行っちゃうし…もう何が何か分からない。
。
何故?何故何故…彼が何故それを知っている。私と彼に接点は無い筈だ。
バレた…?何故。とにかく希望に伝えなくては…。
そんなの”上”の方が好きに決まっている。”下”は地獄だ。この世の地獄だ。
「出ない…希望っ!お願い…私を助けて…」
私の手に持つ携帯、スマホは乾いた音が鳴り続いているだけだった。
希望は絶対に来ない…何故なら…。
絶対に悟られてはいけない。この秘密だけは…。
希望がどこに居るのか分からない以上私があの人を殺す必要がある。
。
「美羽さん…連理さんは今どちらにいらっしゃいますか?」
「え?勿論東先生の護衛に...急にどうしたんですか?」
それは勿論知っている、ただ東の現在地が分からない。彼女なら何か伝えられているかも知れなかったが…読みは外れたみたいだ。
「………美羽さん、今すぐ連理さんに戻ってもらうように電話できませんか?」
「連理、スマホを持ってないんですよ…すいません…」
あぁ、そうか…。目の前の女を殺す方が先か。
自衛のために常時ポケットに小型の拳銃を仕込んである。それで殺せば良い。叢雲だ、すべてどうにでもなる。
彼の邪魔になる存在は全て排除する…ただそれだけ。
「っ!」
「お嬢様、ただいま戻りました。やはり…自我の喪失が起きている見たいですね」
っ!?私は一体…もう訳が分からない。
「ご、ごめんなさい」
「ど、どうしちゃったんですか…?」
美羽さんが心配そうな眼で見る。ああ、いたいけな少女を今殺そうとしていたのか…。
ただ、もう大丈夫だ…。戻ってきてくれたおかげで大事にならずに済んだ。
「それよりキル、そちらの方は?」
「問題なく。ただ、三人は彼の手に」
それはしょうがない。もとより三人をこっちの手に出来れば楽になる位の感覚だ。
それよりも…彼は厄介ね…。私たちの秘密に気付いた?それともただのジョーカー?道化師にしては突拍子もない気がするが…。
「彼は厄介ね…貴方の言っている意味が少し判った気がするわ…」
「……ふふ、今までずっとそうだったからね」
どういう意味か、私には分からない。それは彼にしか判らないし、私が知る必要も無い。ただ、私たちの知らない何かがこの世界にはある。只の勘かも知れないけど。
。
。
。
「連理!あの伝言は結局何だったの!?フィリアさんは途中で居なくなるし、気分悪そうだったし」
あの伝言の意味、か。特に意味は無い…普通なら。が、美羽の反応を見る限り、有効だったみたいだな。
「しかし…なるほどな。ある程度分かったぜ」
キルの正体は完全に把握した。しかし、何故あんな歪なんだ?
全く分からないな。それにあのセリフ…一体あいつは何者なんだ。
「何が分かったの?全く…ちょっとは私にも説明してよ…」
美羽が不服そうな顔をする。仕方のない事だ。
「俺は唐揚げよりハンバーグの方が好きって事が分かっただけだ」
「もう!いつもいつもご飯の事しか考えてないの!?」
ぷんすこゲージが溜まっていく。そろそろメガ美羽になるかもしれない。
「それより…あの三人は叢雲に任せるぜ」
「え、それは別にどうでも良いけど…多分あの三人家から勘当される」
「迎える結末、この世界に居られなくなるね…図らずともあの女が言っていた通りって訳か」
勘当されたらどうなるか、想像に難くない。
金もない、行く当てもない、人望もない。多分だが、存在も抹消されるだろう。文字通りこの”世界”に居場所は無くなった訳だ。
「ま、無茶な事ばかりしたツケが回って来たってこった」
「これからは妹さん達が跡継ぎになるみたい。少なくとも彼らよりはずっと常識があるわ」
会ったことが有るみたいだな。ま、正直どうなろうと俺の知った事では無い。
「今日の飯は何だろうな。俺はカレーが食べたい気分だぜ」
「良いですね。メイド達にそうお願いしましょ…でもカレーなんて珍しいね?連理いっつもハンバーグとか食べたーいって言ってるのに」
「今朝見た俺のう〇こはまさにカレーの如き色合いだったんだよ」
げしっ!げしっ!
俺の脛が目の前の女に集中攻撃されている。毎度毎度可哀そうな脛だ。すまんな俺のところの脛に生まれてしまって。
。
。
。
「希望!どういう事なの!?何故彼が私たちの事をっ!?」
希望、そう希望だ。私の希望であり、世界の希望。
「思ったより気付くのが早かったね…多分この前の電車で鉢合わせたのが原因かな」
「そうだけど...どうするの?私たちの関係がバレたら…」
「大丈夫。彼にとって俺たちの関係なんてどうでも良い事に過ぎない」
「どうして、どうして希望はいつもそうやって言い切れるの?」
不思議だ。歳だって私とそんなに変わらない。地獄から救ってもらった時の希望は私と同じくらいの歳だった。
「説明が難しいね。もうこの世界には終わりが来ないから…いや、これもまた違うね」
意味が分からない…。彼は、彼は一体に何を感じ、何を見て来たのか。それに、彼に特別視されている彼…連理も一体何者なんだ…。
「分かった。希望は絶対に間違えない。それは私が一番知ってるから。でも時が来れば全部、全部教えて」
彼の隠している事、それが何か私には分からない。ただ、彼を愛するものとして、彼に愛してもらっている者として、知りたい。ただそれだけ…。
。
。
。
仄昏い世界。
男女の声が木霊する。
「希望…貴方も酷な人…」
「そう説明するしかないからね…それに…まだ知るには早すぎる」
そう、フィリアと希望が存在していた。いや、存在しているかは分からない。観測者は希望だけ。
「あーあ、可哀そうな私、健気なのに、こんな悪い男に引っかかって」
「君もじゃないか。何時も、どんな時も俺の近くに居てくれる」
「どっか違うとこに言っちゃおうかな~」
それが冗談だと分かっている。彼女はここにしか存在できないから。いや、本来存在すること自体がイレギュラー。
「希望、気を付けて。貴方は自分が思っているより完璧では無い。貴方は憶えていないと思うけど」
「またそれかい?今まで俺が負けたことは無いだろ?何を心配しているんだ」
「そう…やっぱ忘れているのね」
「………君の言う事を信じるけど、一体俺が何を忘れてるって言うんだい?」
その問いかけはあまりに不遜で、傲慢だ。彼の事を愛している、彼も私を愛している。だが、この世界は徐々に狂っているように感じる。
「ふふ...それじゃあお休み希望。この永劫の時、一体どう結末を迎えるのでしょうね」
これにて学園内のイジメ編は終了です。次は過去編を投稿していきます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。誤字脱字などあれば報告いただけると幸いです。




