狂人
「ちょっと、あなた何をしているんですか」
「んっ、何をって殺してるんだよぉ。」
「アリューシャは私の後ろに。ねぇあなた殺人は犯罪だよ。わかっているの」
「わかってるけど。獣が獲物を狩るのは自然だよぉ。人をさぁ切って切って切り裂いて、刺して刺して刺して、殺して殺して殺すのは、私のごはんを得るため。私はねぇ人の苦しんだ声や姿、絶望して苦しんで苦しんで苦しみぬいた人間の姿や声がごはんなのぉ。お腹が空いてお腹が空いてしょうがないから人を殺すの。なのにさぁ何が犯罪なんだろうねぇ。不思議だねぇ」
「ミラさん、この人狂っていますね」
「うん、正直常識が通じるきがしない」
狂人は身体をクネクネと捩りながら、君の悪い笑みでミラとアリューシャを獲物を見るような眼で見つめる。
「変なのに目をつけられちゃったな…………」
「どうしますか。戦いますか?」
「逃がしてくれないし、ここで倒しておかないと被害者が増えるだけだしね」
「作戦会議は終わりですかぁ。それじゃ行きますよぉ」
狂人は手に持ったエストックと短剣を構え、姿勢を低くする。
「死ねぇええええええええええ」
「仙法“鎧通し”」
狂人の右手のエストックを左手でいなし、左手の短剣を身体をずらすことでかわし、狂人の懐に潜り込む。そして、その腹に拳を当て、仙法で強化した拳で内臓をえぐるように突く。
「ぐっはぁあ………今のはなぁーにー」
「今ので沈まないかぁ。思ったよりもダメージは軽し困ったな」
「大丈夫ですか。私も援護します」
「風を風塵となりて切り刻め“エアカッター”」
アリューシャが魔法を紡ぐと、その魔力に反応したように風が収束し刃となり、狂人を全方位から襲う。
攻撃が当たるかと思われたが、寸でのところで、その風の刃をことごとくかわす。
「これを、避けますか。嫌になりますね」
「今のは危なかったなぁ。まぁそんなことはどうでもいいかなぁ。ねぇ、あなたのお腹の中の色は何色かなぁ。あはっ、楽しみ楽しみぃいい」
「アリューシャ、絶対に私の後ろにいてね」
「はい、わかっています」
「それじゃ第2回戦と行きますかぁ」
「仙法“肉体強化”“思考加速”」
狂人が勢いよく飛び出すと、右手のエストックでミラの右足を、左手の短剣でミラの首を狙う。
ミラは右手でエストックを払い、左手で短剣の腹を殴りつける。
「仙法“破城槌”」
仙法により強化された右手で心臓を狙うように、狂人の胸に、体重を乗せた拳を打ち込む。
「ぐっ…………今のはやばかったなぁ」
狂人はミラの攻撃が入る直前に後方にとび、その拳の一撃を軽減させていたのである。
「ちょっと、今のを回避するのかぁ。心臓に打ち込めたダメージは4割ぐらいかなぁ」
「とんでもない身体能力ですね。勝てそうですか」
「長期戦に持ち込めば勝てるかな」
仙法により自然エネルギーを動力源にしているミラは、尽きることのない体力を持っている。そのため通常の体力を持つ相手ならば、長期戦では有利となる。
「ちょっと勝てそうにないかなぁ…………それじゃ逃げさせてもらうねぇ」
狂人は、その言葉とともに懐からクリスタルを取り出す。
「っ?! あれは転移結晶です!!!」
「えっ!?」
狂人は転移結晶を掲げると、強い光を放つ。
その光がやむと狂人の姿をくらましていた。




