8:ペット探偵
「桐谷のおばちゃん、またチビちゃん逃げちゃったんだって?」
「そうなのよ、透ちゃん。探してほしいの」
透はショルダーホルスター型のサスペンダーとグレーのスーツを併せたコーディネートで現れた。
ペットをこれから探すのにその格好では汚れないのだろうか?疑問が湧く。
「じゃ、姉ちゃん、蒼、行ってくるね」
その格好のまま行くんだ!?キャリーバッグを片手に行ってしまった。
だけど、彩さんと桐谷さんは特に気にもしていない様子で珈琲を飲み始める。
「彩ちゃん、も、望月さん新しいバイトの方なんですって?」
「えぇ、そうなんです。保護預かりしてます」
「まぁ、まぁ!望月さん、私ここの常連の桐谷です。近くに住んでまして水野姉弟もこんな小さい頃からみてたんですよ」
保護預かりで並行世界の人間って分かるって、透から教えてもらったんだけど、そういうもんなんだな。
ホホホと笑う桐谷さんのこんな小さい頃を説明する手は、約10センチ程である。胎児?胎児からなの?
オーラ視える登録してる人もいるぐらいだから、胎児が見える人もいるのか、この世界は?
内心困惑する。
「なにそれ、おばちゃん胎児だよそれ。特殊能力者?」
「あらやだ」
違うのか。
「ところで、も、望月さんは、元々どんなお仕事をされていましたの?」
「はい、画家をしております。
……祖母が着付けを教えていまして、その関係で着物の美しさに惹かれ、綺麗なものを描きたいと思ったのがキッカケですね」
月さまを知っているようだから一応、キッカケまで話してみる。
「まぁ、そうなの。素敵ね……」
「蒼君は料理も上手いのよ」
「料理!食べてみたいわぁ、月……望月さんの手料理」
「バイトに慣れたら、お菓子づくりを手伝ってもらおうとは思ってるの」
「日頃の行いの良い私への神様からのギフト?!」
桐谷さんが早口で何か言っていたけど聞き取れなかった。
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「チビちゃん見つかったよ〜」
まだ5分程しか経ってないけど、透が帰ってきた。
キャリーバッグの中には真っ白い子猫が1匹入っている。ミーミー鳴いていて可愛らしい。
「チビちゃん、空気を読んであと3時間くらい隠れてくれてもよかったのに」
桐谷さんが早口で何か言っていたけどまたもや聞き取れなかった。
「はぁ、名残惜しいけど帰るわ。捜索のお代は明日店の方に持ってくるからね。
じゃあ、望月さん、明日またお会いしましょう」
何度もコチラを振り返りながら慌ただしく帰っていく姿を3人で見送った—。
「……ねぇ、桐谷のおばちゃんってひょっとして月さま推し?」
「なにそれ月さまって?」
「いや、ハハハ。……それより透さんって凄いですね。あんな小さな子猫、すぐ見つけるなんて」
何となくあまりツッコまれたくなくて話しを変える。
「あぁ、この辺りの動物なら割と簡単に見つけられるよ」
「透はね、多分NNNに迷子探しの人間って登録されてると思うの。
地域猫に◯◯さんちの猫ちゃんを飼い主が探してるから見つかったら俺に教えてくれる?って聞いてるのよね?」
「うん。直ぐに見つけてくれるから助かってる」
「普通はそんなに早く見つからなくない?
だからペット探偵って職業があるんだし」
「透が特殊なんだと思うのよ。
例えば動物園なんか行くと、みんな透見てんの。
街を歩けば路地やら窓やらから透を見てるし。
この子が猫カフェなんて行ってみぃ?
猫さんみんな透に集まっちゃうからとんだ営業妨害?ものなのよ」
……あのスーツ姿でなんの汚れもなく短時間で戻って来た理由が分かった気がした。
どういうチートなの?あっ、窓の外のカラスが透をみてる!?




