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6:バイト

「ところで、時間を持て余してしまうと思ってご相談なんですけど。

 

 元々早く戻りたいと思っていますし、就職すると(運良く早く戻れるコトになったら)直ぐに辞めることになってご迷惑をお掛けしそうですから、

短期バイトとかしてみようかと思っているんです」


「短期バイトかぁ……。じゃあ、透んとことウチとでやってみる?ここなら事情も分かってるし、大丈夫よん」

「うん、大丈夫だよ。蒼、やってみたら?

違うことをやるのも楽しいかもよ」 


✢✢✢✢✢✢✢


客間に引いた布団に寝転がると一気に疲れを感じる。

多分、気を張って疲れちゃったんだろうな。

未だに信じられないけど、信じないと前に進めない。


……夢見た画家になって、やっと芽が出て、個展を開いて、次は画集をってタイミングでなんでこうなるんかなぁ。

戻った時画集の話は立ち消えになってるんじゃないのか?

この世界でどうしろっていうんだ?

 

ズブズブ泥沼に身体が沈んでいくような感覚。

  

……あの世界じゃ、今“失踪”ってことになるんだろうか?

家族も心配するよな……バァちゃん最近身体弱くなってきたのに孫が“失踪”なんてことになったら……


「はぁ……」

不安と心配が押し寄せてくる。

今23時か。

こんな気持ちで寝れるわけないよね……

リビングへふらっと行って、静かに窓の外を見た。

通りの神社は僕の世界と一緒みたいでちょっと安心する。


✢✢✢✢✢✢✢

 

朝7時。

朝方少し眠れた。

でも二度寝が出来なくて結局起きた。


「あぁ~、よっこいせぇ。あぁ~伸びた伸びた。

……あれ、蒼君じゃん、おっはぁ〜。

いい匂い、何か作ってんの?」 

彩さんは朝から元気みたいだ。

伸びをしていたな。これは朝のルーティンなのかも?


「おはようございます。お言葉に甘えてキッチンと食材使わせて頂きました。

早く目が覚めちゃったんで、つくってみたんですけど、もしよかったら」


「ありがとう!!うれしぃねぇ。

いゃぁ誰かに作ってもらうのいつぶりだろう?

凄いわねぇ、ウチの透なんかね、何も作れないよ。

出来ることは、お湯を沸かすのと、レンチンぐらいかしら」

 

「家事が出来るようにっていうのが望月家の教育方針らしくて、ひととおり出来るようにさせられたってだけです。

透さんもやれば出来るんじゃないですか?」

「さぁ、無理じゃない?壊滅的よ、料理の腕。

ホットケーキを作った筈がダークマターが出来上がるんだもの。

あぁ、先に食べてもいい?いい匂い嗅いだらお腹が鳴っちゃって……」 

「どうぞ。お口に合えばいいんですが」

 

食べている彩さんの髪がぴょんぴょん跳ねてなんだか微笑ましい。寝癖そのままで起きてきたんだろうな。

実家の妹達を思い出してしまった。


「美味しい!!お味噌汁染みるわぁ。

店開けるよ、蒼君!

あ、ちょっと待って。お菓子づくりってしたことある?何かお菓子づくりの映像が降りてきたわ!お菓子づくりしたことがあるでしょ!?」

 

近い近い近い!圧が怖い……彩さんは目をキラキラさせて近づいてきた。

  

「た、多少は。妹のバレンタインのお菓子づくりの手伝いとかですけど……」

 

「いいわよ。ところで、今日私の手伝いしてみない?今バイトの子が就活で休みなのね。手伝ってくれると助かるわ」



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