6:バイト
「ところで、時間を持て余してしまうと思ってご相談なんですけど。
元々早く戻りたいと思っていますし、就職すると(運良く早く戻れるコトになったら)直ぐに辞めることになってご迷惑をお掛けしそうですから、
短期バイトとかしてみようかと思っているんです」
「短期バイトかぁ……。じゃあ、透んとことウチとでやってみる?ここなら事情も分かってるし、大丈夫よん」
「うん、大丈夫だよ。蒼、やってみたら?
違うことをやるのも楽しいかもよ」
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客間に引いた布団に寝転がると一気に疲れを感じる。
多分、気を張って疲れちゃったんだろうな。
未だに信じられないけど、信じないと前に進めない。
……夢見た画家になって、やっと芽が出て、個展を開いて、次は画集をってタイミングでなんでこうなるんかなぁ。
戻った時画集の話は立ち消えになってるんじゃないのか?
この世界でどうしろっていうんだ?
ズブズブ泥沼に身体が沈んでいくような感覚。
……あの世界じゃ、今“失踪”ってことになるんだろうか?
家族も心配するよな……バァちゃん最近身体弱くなってきたのに孫が“失踪”なんてことになったら……
「はぁ……」
不安と心配が押し寄せてくる。
今23時か。
こんな気持ちで寝れるわけないよね……
リビングへふらっと行って、静かに窓の外を見た。
通りの神社は僕の世界と一緒みたいでちょっと安心する。
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朝7時。
朝方少し眠れた。
でも二度寝が出来なくて結局起きた。
「あぁ~、よっこいせぇ。あぁ~伸びた伸びた。
……あれ、蒼君じゃん、おっはぁ〜。
いい匂い、何か作ってんの?」
彩さんは朝から元気みたいだ。
伸びをしていたな。これは朝のルーティンなのかも?
「おはようございます。お言葉に甘えてキッチンと食材使わせて頂きました。
早く目が覚めちゃったんで、つくってみたんですけど、もしよかったら」
「ありがとう!!うれしぃねぇ。
いゃぁ誰かに作ってもらうのいつぶりだろう?
凄いわねぇ、ウチの透なんかね、何も作れないよ。
出来ることは、お湯を沸かすのと、レンチンぐらいかしら」
「家事が出来るようにっていうのが望月家の教育方針らしくて、ひととおり出来るようにさせられたってだけです。
透さんもやれば出来るんじゃないですか?」
「さぁ、無理じゃない?壊滅的よ、料理の腕。
ホットケーキを作った筈がダークマターが出来上がるんだもの。
あぁ、先に食べてもいい?いい匂い嗅いだらお腹が鳴っちゃって……」
「どうぞ。お口に合えばいいんですが」
食べている彩さんの髪がぴょんぴょん跳ねてなんだか微笑ましい。寝癖そのままで起きてきたんだろうな。
実家の妹達を思い出してしまった。
「美味しい!!お味噌汁染みるわぁ。
店開けるよ、蒼君!
あ、ちょっと待って。お菓子づくりってしたことある?何かお菓子づくりの映像が降りてきたわ!お菓子づくりしたことがあるでしょ!?」
近い近い近い!圧が怖い……彩さんは目をキラキラさせて近づいてきた。
「た、多少は。妹のバレンタインのお菓子づくりの手伝いとかですけど……」
「いいわよ。ところで、今日私の手伝いしてみない?今バイトの子が就活で休みなのね。手伝ってくれると助かるわ」




