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4:ドッペルゲンガー

区役所に半日くらいいた気がする……。

朝は気疲れ?であんまり食べれなかったせいか、今すっごくお腹が空いた……。

 

「望月さん、俺ら年同じだし名前で呼び合いません?何か堅苦しくって。俺は透って呼んで」

「はい、じゃあ、僕は蒼と呼んで下さい」

「名前で呼ぶなら敬語もいらないよ。

今からラーメン食べに行きたいんだけど、いい?」

「勿論」


連れて来てもらったラーメン屋。

僕の世界では“スパイスの神に愛されたカレー屋”というクセのある名前のカレー屋だった筈。

食べに行ったことがある。スパイスがきいて美味しかった。

 

因みにこの世界の店長は僕の世界の人と一緒だ。

さてはカレー屋とラーメン屋で迷っていたのか?

ラーメン屋の名前は“ラーメン神降臨店”

このネーミングのクセ、多分この人は僕の世界の店長と中身も一緒だな、うん。


✢✢✢✢✢✢✢


「洋服買う?」

って聞かれたので透について行く。

下着も普段着もパジャマも靴も無い。

今着ている下着とスーツとシャツと履いている革靴だけで過ごすのは無理がある。

 

連れて行かれた先は四越百貨店。

有名な老舗の高級百貨店だそうだ。

僕の世界の◯越百貨店が脳裏に浮かぶ。

 

「洋服買いに行くついでに、この世界の蒼を見てみる?遠くから覗くしかないけどさ」

エレベーターに乗り、着いたのは3階呉服と宝飾品のフロア。

奥にホールがあり、何やら声がする。 

どうやら着物のご案内会?に芸能人?がいるようで、おばさま方がキャーキャー言ってるようだ。


「はい、これ被って」

透が被っていた帽子を深く被らされると、顔が目立たないように帽子を調整された。

「あ、あそこに蒼がいない?」

「えっ、あれ、僕!?」

 

そこには確かに僕がいた。着物を着てポージングしている。おばさま方はキャーキャー言いながら僕の?写真を乱れ撮っている、熱気が怖い。

「月さま—」

「月様」「月さま〜」

月さまって、望月からとったのだろうか……

僕は、あの着物の僕に驚いた。

どんな気持ちでポージングしてるんだろう……


『本日はご来店頂き、誠にありがとうございます。

2026年度新作着物のご案内会を只今より行います。着物についてご質問が御座いましたらスタッフまでお気軽にお声掛け下さい』

この世界の僕がマイクを持って話すと、神妙な面持ちのおばさま方がコクコク頷いている。 

 

—ふと思い出した。進路で悩んだ。美大に行くか他の大学へ行くか。

僕は美大に進んで絵の道を選んだけど、この世界の僕は絵を選ばなかったんだ……きっと。

バァちゃんが着付けを教えていたから、それを習って武器にして、百貨店で働く道を選んだのかな。

ふとそう思った。


「そろそろ行こうか?」

透に促され外に出る。

「この世界の僕のこと、知ってたの?」

「や、別世界人保護課でこの世界の蒼のことは聞いたよ。

ドッペルゲンガーだって怖がる人もいるから、接近する際はご注意くださいって。

あと、問題が起きないように接触をしないように、って」

 

「あと、この世界の蒼にも別世界人の蒼が来たとは通知するそうだよ。でも法律があるから、会いには来ないと思う」 


ドッペルゲンガーか。見たらタヒの前兆って言われてるんだっけ、か。

それを信じる人は確かに怖いだろうね。

怪談でもドッペルゲンガーに今の自分を乗っ取られるって話しってあるしな。

……うん?


「もしかして、別世界人にこの世界の人が殺されて生活を乗っ取られる事件ってあったりする?」

「ああ、あるよ。自分との違いに妬んでとかで」

「僕は見てもよかったの?」

 

「蒼は別世界の自分の生活に戻りたいんだろ?

この世界で生きて行くつもりはないことがまず第1条件。

見せるのは保護課に連絡済だから。

……見せるのも報告義務があるんだ。

保護課に相談の時に問題を起こさない人物かどうかみた上で、この世界の自分を見せる・見せないの判断を下すんだって。

何か運命率?いや、因果率?ちょっと忘れたけど、そんなのが判る機械にデータを入れると、それが判るらしいけど。俺、そんな機械見たこと無いからね、よく分からんけど。

兎も角、データで問題なしってわかったら見る許可が出て、見たら保護課へ連絡入れる、そういう事らしいよ。

 

 それにまだ、並行世界だって信じ切れてなかったでしょ?それを分かってもらうためにも見せることはあるんだって。 

……まぁ、俺が同じ立場なら確かに信じ切れてないなぁ」


街中を案内されながら見た景色は、僕が知っているようで知らない店や家があり違和感が半端ない。

情報過多に、購入した洋服の入った紙袋がやけに重く感じた。



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