17:例大祭の終わり
桐谷さん軍団が帰ってからもお客様は引っ切り無し。僕らはひたすら働きつづけ。
そして、閉店時間の20時……。
やっと、やっと、落ち着きました……。
「グッタリだぁ……」
透がテーブルに突っ伏す。
僕も魂が抜け出しかけています……。
「わしゃ〜、暫く珈琲豆は見たくないのぅ……」
必死に珈琲を淹れていた純喫茶みずの唯一のバリスタ、彩さんも潰れて……。死屍累々。
手伝ってあげたかったが、彩さんは珈琲のオーラを見て淹れている?そうだからムリだった。
淹れる所を見せて貰ったが、淹れ方がよくわからなかった。
同じ豆を使っても、同じ味わいにはならない。
オーラを見て淹れるなんてビックリな話だけど、
これが、凄く、美味しい!!
……ただ、少なくとも僕の世界でオーラを見て珈琲を淹れるバリスタさんの話は聞いた事がないので、元の世界に帰ってしまえばもう、この味には会えないのだ。
出来れば僕もオーラを見て淹れられる様になりたい……ただ、その様は怪しい。
手を翳して豆のオーラを感じなければならないそうだから。
もし、僕が出来るようになっても、決して人前ではやらないと思う……。シュールだから。
一方、花井さんは、ニヤニヤしている。
まだ20代だから元気なの?
ポケットから紙の束を取り出した。
「ジャァーン、これ何だ?」
「借金の督促状かしら?」「違います!」
「特売のチラシ?」「違います」
「宗教の勧誘?」「違います!」
みずの姉弟の不穏な発言が原因なのか花井さんの姉弟を見る目が鷹のように鋭い。
「じゃあ、何?」
「みずの姉弟が素敵って言ってた方々の連絡先」
「「へやぁっ?!」」
息のあった姉弟は驚きの声を一緒にあげる。
「こっちは彩さんの分、こっちは透さんの分ね」
連絡先の束はそれぞれの目の前に置かれる。
「も、貰ってもこちらから連絡しないわよ」
「何で?」
「……私ね、オーラ視えるじゃない?
それである程度その人のこと分かっちゃうから、
簡単に好きになれないのよ。
折角くれたけど、この連絡先に連絡もしないから」
「透さんは?」
「俺には彩姉ちゃんというセキュリティがあるからだよ、分かるだろ?」
「えぇ~」
「まぁまぁ、花井さんが心配するのも分かるけどさ。2人ともモテるだろうから今までの人生で考えることになった経験があるんじゃない?
そっとしてあげよ?」
2人はなんか嫌がってる感じがあるんだよ。
無理やりお膳立てするより、2人の考えに寄り添う方がいいんじゃないかと思った僕。
「蒼、フォローありがとう。
花井ちゃん、そりゃ、俺等いい恋愛はしたいと思うけど、今じゃないんだ」
「……花井ちゃんとこのお婆ちゃんが私ら姉弟を心配してくれてるのは、分かってるよ。
いつも気にかけてくれて、ありがたいとも思ってる。でも、透の言う通り今じゃない……そんな感じです」
「そう、なんだ。なんだかゴメンね」
みずの姉弟も花井さんにゴメンって空気を漂わせる。
「でも〜、この紙の方々、これからちょくちょくココに通うってよ。ヨロシク!」
へへへっ、とでも言いそうな、してやったりな表情を浮かべる花井さん……。
「「な゙っ?!」」
みずの姉弟は頭を抱えてた。
何の理由かは分からないけど、今恋愛したくない(オーラか占いで時期が悪いのかもしれないし、)2人に恋愛難の相が薄っすら視えた気がした……。




