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15:それぞれの恋愛事情

依頼から帰って、特にすることもない。

僕と透が純喫茶みずのの方へ来てみると、浴衣合わせが待ち受けていた。

例大祭がある日に皆着るのだそう。

桐谷さんのテンションが何故か高かったが、気にしないようにする——。

例大祭の日は、彩さんと、就職が決まったバイトの花井さん、僕と透で店は回す予定。

見物客が多いのでかなり忙しいそうだ。


「透も手伝うの?」

「そう、接客の方をね」

「透に調理なんてやらせたら、客足が遠のいちゃうからね。接客しかさせられないの。よっ、ダークマター職人!!」

「姉ちゃん、言うなよ〜」

 

「この近辺で、ダークマターを作ることにかけては右に出るものいないじゃないの。

“ダークマター職人の朝は早い……”“ダークマター一丁上がり!”」

彩さんは一丁上がったポーズ?を決める。

お客さんいない時間帯で良かった。

危うく彩さん変人伝説がこの店に出来るとこだった。

いや、僕が知らないだけでもうあるかもな……


「ダークマターのことはもう、いいんですよ。

ところでぇ~、店長は彼氏まだいないんですか?」

急に花井さんのブッコミ。

花井さんはお婆さんの介護をしながらバイトしていた頑張り屋さん。お婆さんがデイに行っている間、ここでバイトしていた。お婆さんが施設入居をすることになったのを機に就職することにしたそう。

ハキハキしていて、明るい方だ。

 

「彼氏ぃ〜!?」

彩さんは余程動揺したのか、口調がマスオさんが驚きながら言葉を発した時のような感じになってる。

 

「駄目駄目。姉ちゃんはお一人様街道を突っ走る予定だから」

「勿体ない!黙ってれば店長、綺麗だしイケるのに」

「黙ってればって、余計なお世話ですぅ」

「ハハ、駄目駄目、花井さん。姉ちゃん、黙ってられないもん」 

「にゃによう!透もお一人様街道突っ走る予定でしょ?」

「俺はモテるから大丈夫なの」

「選り好みしているうちにモテ期は過ぎるわよ」

「姉ちゃんが言うと怖ぇ」

 

「……透は今、いいなって思う人はいないの?」

「今のところはいない。そういう蒼は?」

「彼女がいたことはあったけど……絵に集中すると周りが見えなくなっちゃって、喧嘩別れしたりとか……まぁ、今はフリーだよ」

「あぁ、蒼は芸術家だしそうかもね」


「……はぁ、みずのメンバー枯れ気味じゃないですか。ヤバくないです?枯れ果てた花にならないで下さいね。しおしおですよ」

「綺麗に枯れてドライフラワーになるから大丈夫よ」

「ポプリになるのも手ですね」

「そうそう、蒼君、流石!」

「もう!蒼さんはいいとして。

私がここに客として通いだしてバイトになって、の、ここ5年みずの姉弟浮いた話は、とんとないじゃないですか」


「ぐぬぬぬ……」

「うっ……」

姉弟が同時にヤラれた。 

「彩さんは自分の恋愛は占えないの?占えるでしょ?」

「えっと……」

「占ってみたら?」

 

花井さんの圧に負ける彩さん。

そそくさとタロットカードを持ってくると早速占い始めた。カードを引いてテーブルに並べる。

「どうでした?」

「近々恋に堕ちるって……」

「後は?」

「後は特に無いわよ……」

と、ゴニョゴニョ言う彩さん。


そこへお客様がご来店。話はここで終わった。


✢✢✢✢✢✢✢


水野彩は皿を洗いながら、ぼんやりタロットカード占いの結果を思い出す。

—近々恋に堕ちる

—片思い

—実らぬ恋

(恋に堕ちる前から失恋予告を受けるなんてね……

 サイアク……)




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