13:運命の出会い
小さな小さな子猫。両手にすっぽり収まる小ささ。
弱々しい鳴き声、衰弱している。猶予はないかもしれない……
走ってみずのへ駆け込んだ。
「近くに動物病院ありますか?!」
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「病院に行こうな」
そう声をかけると、子猫はクリクリした瞳で僕を見て、手にスリスリ。
透に付き添ってもらって、動物病院に急いだ。
——だけど懸命な治療の甲斐なく、子猫は亡くなってしまった。
「出会いってこれだったんだろうか……」
小さな亡骸の入った箱を手にフラフラみずのへ戻る。葬式に出してあげなきゃ…。
子猫を見つけてからみずのに戻るまで慌ただしくて僕の記憶は曖昧だ。そうだ——ショックだったから。
泣いた。色々な感情がない混ぜで泣いた。
この世界に来たことが辛かったが、それでも泣かなかったのに。
どうやら僕はあの子猫に自身を投影していたようだ。
知らない世界にやってきて、心細く、将来に不安を抱えるもの同士として。
助けてあげたかった。僕も助けられたように……。
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「姉ちゃん、蒼大丈夫かな?
見るからに落ち込んでてさ、どうしよ?」
「ワカラン!……だけどいい出会いがあったのだから徐々に元気になるんじゃないかしら?」
「出会い……あの黒猫ちゃん?」
「うん。オーラ視たら分かったよ」
「亡くなっちゃったのに?」
「うん。
多分ね、あの黒猫ちゃんは蒼に会いたかったのよ。……生き物は輪廻を繰り返すでしょ?その繰り返しの何処かできっと縁があったの。
可愛い子ね、前世の蒼も優しかったんでしょうし探していたのかもね、今世でも逢いたくて。
見てた?ゆっくり瞬きしてさ、スリスリしてさ。好き好きって」
「そっかぁ…。蒼はこっちに来ちゃったりとか心労続きだったから、早く元気になれるといいね。俺、もっと気がけておくよ」
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泣いて、泣いてそのうち涙が止まって。
鼻水が凄くなってた。ティッシュを探す。
鼻をかんでいる僕の足元には、何か黒い影がよじよじしてる。
なんだ?眼鏡をかけ直してよく見ると、この子はさっき亡くなった子猫じゃないのか?
ちょうど2階に上がってきた彩さんをみとめ、声を掛けた。
「彩さん、さっきの子猫ですけど、」
「あら、まぁ。本当に蒼君の事が好きなのね!頭付きしてるじゃないの!蒼君、名前つけてあげなさいよ」
「へぇっ?」
変な声が出た。無理、ないでしょ、霊の猫に名前付けたことないし、そんなの聞いたこともないんだから。
「亡くなった猫に名前付けていいんですか?
それより成仏させてあげた方がいいんじゃないですか?」
「いや、子猫ちゃんは蒼君に逢いたかったみたいよ。生まれ変わったりしないでこのまま一緒にいる気だと思うわ。名前を付けて一緒にいればいいのよ」
「……」
「これが運命の出会いよ」
「猫さんとの出会いが?」
「そうよ」
足元の黒の子猫に視線を落とすと、子猫もコチラを見つめ返す。可愛いい……
「……猫吉」
『ニャ』
ふふ、お返事してくれた。しゃがんでもう一度名前を呼ぶ。
「猫吉」
『ニャ』
「イイお返事だね。今日からキミは猫吉だよ」
『ニャ』
「はぁ~?ちょっとタンマ!猫吉?
人にそんな名前つけたら人間吉みたいな名前よ。
ネーミングセンス皆無じゃないの?!
猫吉以外の名前に付け直して!」
「猫吉以外?」
「猫吉以外で」
「……?」
「……私が名前を付け直してあげるわ。
ジジちゃん?……あら反応無いわね。
クロちゃん?……無反応ね。
じゃあ、黒吉ちゃん……無視ね。
え、エリザベスちゃん?……キャンディちゃん?
黒豆ちゃん?……小豆ちゃん?
……どういうことよ?!」
「……猫吉」
『ニャ』
「……もう、猫吉でヌコちゃんの中では決まっちゃったのね。……無力」
カクンと項垂れる彩さん。だが直ぐに何か思い出したように顔を上げる。
「蒼君、アナタこのネーミングセンスで今まで描いた絵のタイトルは大丈夫だったの?」
「……?」
「まぁ、キョトンとしちゃって!
……指摘がなかったのかしら?……まぁ、それでやってこれたみたいだからいいのかしら?」




