12:出会い
「蒼君、私、ピン、ときたの」
「……はい」
純喫茶みずのではピーク時間を過ぎた15時。
彩さんに詰め寄られている僕。
店には早くも依頼を完了させた透と彩さん、僕だけしかいない……。
「今日、これからアナタには運命の出会いがある!」
「……はい」
「私は出会いを応援したいの。今からお使いに行っておいで。そして何か出会いがあったら私に言うのよ〜」
そう言って店の中でクルクル回る彩さん。
凄い、よく回ってる……
「取り敢えず、ちり紙ドラッグストアで買って帰ってきて」
「ちり紙って何ですか?」
「ティッシュペーパーのことだよ。姉ちゃん、誰でもちり紙で通じると思うなよ。
多分、姉ちゃんと同世代からより上の年代の方しか分かんないから」
「透のイジワル、年齢出してきやがって」
「この辺のドラッグストアの場所は分かるよね?
アレだったら、俺も行こうか?」
「バカ、蒼君は1人で出掛けて運命の出会いを受け止める必要があるのよ。自重しなさい」
……そういうわけで僕はお使いに出掛けた。
聞いたら、ティッシュペーパーの購入は、近くのスーパーじゃダメみたいだ。
幸いドラッグストアはこの近辺の500メートル圏内に幾つかあるし、大丈夫だ。
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まぁ、ね、ティッシュペーパーだけの買い物は問題無く、あっという間に終わったけど、何も無かった……。
出会いは無い。
違う道からみずのまで戻ってみたほうがいいのだろうか。
困ってキョロキョロしていたら、懐かしい声が聞こえてきた。声がする方を見る。
(カナメ……?)
ドラッグストアの自動ドア前に佇む僕の前を、懐かしい人が連れの男性と通り過ぎて行く。
男性は……あれ、月さまだ。
この世界の僕の隣に(僕の世界では元)彼女が寄り添っている。
月さまの彼女なんだろうか?いや、そうだろう。
距離が近い。
月さまと、カナメはお互いに見つめ合いながら笑顔で通り過ぎて行く。
この世界の僕は、絵の道には進まず、百貨店に就職、主任になっているそう(桐谷さん情報)。
僕とカナメは大学から付き合っていたから、この世界の僕は大学から未だにカナメと付き合っているんだろう(多分)。
……何か不思議な気持ち。
僕自身は、カナメと大学を卒業前に別れた。
理由は僕が“絵”しか見ないから。
それから時々誰かと真面目な恋愛はしたが、同じ理由で別れて今はフリーだ。
僕の世界のカナメとは、もう何年も会ってはいない。
出会いってこれなの?
この出会いはどうにも出来ないよ、月さまがいるし。
きっと、僕の世界に僕が戻っても、カナメと僕がまた付き合うことはない。もう歩んでいる道が違いすぎるから。
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彼等の進む方向とは逆に向かいながら帰ることにした。
月さまとカナメの姿は違う道を選んでいたらある未来だ。本当に異世界に来てしまったんだな。再確認させられた。
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ボーとしなからダラダラ歩いて帰ってきて、後200メートル位?でみずのに着きそうっていうところ。
「ニャ…」
駐車場の出入り口の植栽の中から、か細い鳴き声が聞こえた。
猫さんだよね?!か細い声が気になり、植栽をかきわけた。
—そこには、小さな小さな黒猫が如何にも弱っている様子で転がっていた。




