11:霊の正体
【望月蒼の今夜の予定】
八須賀さんの車に憑いてる霊を視にいく。
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時刻は23時。
彩さんが八須賀さんに電話したらしく、今、
透と彩さんと僕は八須賀さん宅前にお邪魔している。
八須賀家は代々この地域に住んでいるそうで、ご自宅の駐車スペースに例の車が停められていた。
そこには……いる!!
僕がヒト的な装飾だと思ってた霊が!!
今の彼?は、ルーフの上に体育座りで黄昏ている。
あぁ~本当に霊だったんだ、凄くガッカり。
装飾だったらよかったのに。
霊が視えても嬉しかないよ。怖いじゃん。
きっと今の僕の表情は、チベットスナギツネみたいにすんっってしてる筈。
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一方、透は動物チート(いい名称考え中)を発動させたようで、頭の上にハムスターをちょこんと乗せていた……駐車スペースに出てきてくれた八須賀さんはそれを見て涙目だ。
「ま、どうやって外に……お、俺には冷たいのに……ヒドイよチェリーちゃん!!」
ハムさんの名前はチェリーちゃんと分かったところで早速本題だ。
彩さんがずいっと出てくる。
「私に任せな」
鼻をフンと鳴らしながら車に近づいていく。
件の霊も彩さんのただならぬ雰囲気に視線を向けた。
「ハァイ、ねぇ、ちょっと聞きたいんだけどさ、なんでその車に憑いてんの?その車の持ち主呪い殺すつもり?」
『ぁ〜?そんな訳あるかぁ?!
あの人はオレと仲間だ!!仲間を殺るわけねぇだろ?』
「仲間?」
霊の声に八須賀さんが反応する。霊も視えてる様子。
この方、霊能者だったのか?
『オレが事故で亡くなる直前、アンタの車が信号待ちで停まったんだよ。直ぐに気が付いたさ、アンタが藤澤實教授のファンだって。教授の初期の作品のCX2500βを聴いてたよな?!アレを聴くなんて最高だし、コアなファンだと思ったよ。
……ファントークしてぇ、そう、今際の際に思って気が付いたらルーフに乗っかっちゃってたね』
✢藤澤實は伝説のミュージシャン。コアなファンが世界中にいる。
話しをさらに聞くと、この霊の名前は保さん。
ハスキーな声が特徴。短髪の髪を無造作に遊ばせ、Tシャツにジーンズ、足元は草履。個性的な感じ。
雨が降る中、自転車に乗りながらケータイを弄り転倒、打ちどころが悪くて亡くなったという。
雨の中、草履で自転車がさらにイケなかった度をアップさせています……ヘルメット!!
なんでも、その日保さんは結婚を考えてた彼女の浮気に気が付き、ヤケクソになっていたのだとか。
同棲していた部屋にいたくなくて、雨の中を飛び出して……ってことらしい。
いつもはちゃんと法律を守るそうです。
『オレはね、バカな自転車の乗り方をしてアボーンしちまったからね。ダーウィン賞を受賞してもおかしかないねぇ』
とのこと。その背中は哀愁を感じさせます。
✢ダーウィン賞は、自らの愚かな行為によって死亡する、又は生殖能力を喪失することで劣った遺伝子を抹消し、人類の進化に貢献した人物に対する皮肉として贈られる。
さて、これから怒涛の八須賀さんによる質問ラッシュが続く。
「ところで疑問なんだ。今までルーフに居たそうだけど俺毎日車乗ってるのに気が付かなかったんだよね。
どうして?」
『どう、声をかけたらいいかわからなかったんだ。
だってオレ、タヒんでるだろ?アンタが怖がるといけねぇなって、アンタが乗り降りする時は離れてたよ』
気遣いが出来るタイプ?なのか?
「何かいい表情で車に貼り付いてたのって、……その藤澤教授絡み?」
『アンタ、いい選曲するだろう?もっと聞きたい、そういう事でさ』
「俺より、藤澤教授に憑いたほうがいいんじゃないのか?」
『烏滸がましくて憑けねぇよ』
八須賀さんは暫し沈黙した後、
「保さん、俺、アナタを認めるよ。藤澤教授に烏滸がましくて憑けないって、確かに俺でもそうなるな。
……保さん、アナタいいファンだね。でも、ルーフには乗らないでほしい」
ちょっとしょげる保さん(霊)。
「そのかわり、助手席に乗って、藤澤話に付き合ってほしい」
目が輝く保さん(霊)。
僕は思う。霊だけど、憑いてていいの?!
八須賀さん、寛大だな……。
『オレ、藤澤話をしてくれるアンタの車を全力で護るからな!!』
以降、八須賀さんの車(with保(霊))は伝説を作ることになるのだが、それについてはまたの別のお話し。




