10:装飾がついた車
ここ数日はずっと純喫茶みずのでバイト三昧。
最近はパンケーキを作らせてもらったりとか何だかんだ楽しい。
純喫茶みずのには桐谷さんの推し活友達?がこの前から代わる代わるよくご来店されるようになりまして……
みんな『月さま……』ってボソボソ言うから、流石に彩さんにもバレてしまった。
……桐谷さん御一行がやって来られたら、彩さんは僕を見てニヤニヤするし、お客様が増えたからホクホク顔でもある。
一方、推し活に遭っていない人生だった僕は、内心戸惑ってる……。はぁ、こういうの慣れない……。
笑顔が引きつるのを感じます……。
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「蒼、最近どう?慣れた?気になる事とか、心配事とかない?」
この世界に来てはや1週間とちょっと。
透はよく気遣ってくれて感謝しかない。
「う〜ん、慣れたのかな?分からないけど……。
あぁ—、気になることはあるかな?
八須賀さんの車の上にいつも何かヒト的なのが載ってるんだけど、アレはそういう装飾なんだよね?
凄くリアル。
どうやって作っているのか興味があるんだぁ〜。
近くで見せてほしいなぁ」
八須賀さんは近所に住んでいる。
純喫茶みずのの常連さんだ。
痩せ形で色付きの眼鏡を掛けていて、お洒落な雰囲気の人だから、アパレル関係か芸術家、若しくは美容師されてるかも。というのが僕の予想。
「えっと……ヒト的な装飾?」
「うん、ヒト的な装飾。他の作品があったらそれも是非見せてほしい……」
「因みにどんな感じの装飾なの?」
何タイプか種類あるのかな?
「男性型で、こう、ルーフのところに手足を広げてうつ伏せになってる。左耳をルーフに押し付けてて、いい表情してる。
だけど血だらけでね、痛々しいの。
ひょっとして、八須賀さん造形作家さん?それかお化け屋敷プロデューサーとか?」
「……なんで造形作家とかお化け屋敷プロデューサーが出てくるのか分からんけどさ。
装飾なんて見たこと無いよ。
いや、待って。そういえば八須賀さんの車が通る時だけ猫さんとか犬さんとか様子がいつもおかしいかも……?」
「へっ、そりゃあ、憑いてるからよ」
「あ、姉ちゃん。憑いてるってなんだよ」
「霊が憑いてんのよ。霊が」
彩さん、ビールを飲みながらの登場。
……霊が憑いてるなんて変なことを言ってこないでよ。怖いよ。
僕はこのかた霊など視たことないし、これからも視たくないんだけど!?
「マジで言ってる?ほら、蒼も困った眉になってるじゃん!」
「まぁ、お姉さまが嘘を言うとでも?
残念ながらガチなんだわ。
蒼君は元々霊は視えてたの?」
「全然!視えて無かったですよ。えっ、アレって本当に霊?」
「霊能者デビュー、やっちゃう?
“霊能者へジョブチェンジ”」
ジョブチェンジは勘弁!!
それに、
「そもそも、ルーフに貼り付いてめっちゃいい表情する霊って聞いたことありますか?」
「実際ルーフに載ってるじゃん」
載ってんのは間違いないのかぁ、霊なのかぁ、ヒト的な装飾だと思ってたのに!
ガッカりだ……
「蒼君、ガチでガッカりしてんのね」
「装飾物だと思ってたんだって」
「あら〜残念ね。芸術家の血が喜んじゃったのに、霊だったなんて」
「話変わるけどさ、いい表情の霊ってのが気になるけど、そんなの載ったまんまで八須賀さん大丈夫なの?」
「気になるなら、会いに行ってみる?」
ニヤリと笑う彩さんは、何か企んでいるように見えて怖かった。




