第2部 第11章
「地球がダメージを受けていなければその変化はある程度ゆるやかに行われる。今までも地球が産まれて何度も行われてきたことだ。」
焚き火が燃える音だけがしている。時々パチパチとはじける音が心臓に響く。
「地球はみんなに平等だ。数千年、光の当らない眠りについていた大地に光を与え、数千年、活動し続けた大地を眠りに付かせる。」
炎が揺らめくたびに彼の影が大きくゆらめいて、肉体を持った彼と、その揺らめき動く影と、彼の存在は2つあるようだった。
「しかし、怪我をした人間の皮膚に膿ができてただれるように、ダメージを受けた大地は激しく生まれ変わる。数千年ごとに行われる地球の生まれ変わりに変化が起こる。再生サイクルが乱れて、緩やかさを失う。」
「今までも地球は沢山の変動があったことは知っています。氷河期が何度も訪れ、文明が崩壊し、海底だった土地が山になるほど大地が動いたことも知っています。今の状態が未来永劫続くとは思いません。でも、このままみすみす天変地異に怯えてるしかないんですか?」
アランが身を乗り出した。しかし、シャーマンは静かにいった。
「地球が生まれ変わりたがっている。我々にそれを止める権利はない。地球はその愛で我々を育んできてくれた。地球は人間の所有物ではない。」
「それでも、私たちにできることはないんですか?」
キャッシーが叫んだ。
「地球を止めることはできない。しかし、我々はその変化の中でどう行動するかの自由を与えられている。」
焚き火に薪を足した。炎が大きくなった。
「今までも何度も地球は生まれ変わった。その度に文明は破壊されたが、人間はその度に這い上がって新しい文明を築いてきた。」
彼はまた沈黙した。何かを見ているのか宙を見ている。
「そうだな。船は必要だ。」
呟くと手を合わせた。
「スピリット達が帰っていった。君たちに伝えるべきことはこれだけだ。」
愕然としているアランとキャッシーを見ると彼は目を閉じて、そばにある皮袋からおがくずのようなものを取り出して焚き火に入れた。パチパチと燃え上がりながらそのおがくずはお香のようないい香りを放った。
「私たちの教えを君たちに教えよう。」
彼は4人をそれぞれ見つめていった。
「困難はその人が乗り越えられるとスピリットが判断したときに降りかかってくる。だが、本当に乗り越えられるかどうかはその人次第だ。困難が降りかかってきたら、スピリットに選ばれたことを誇りに思うがいい。そして乗り越えられる力が自分にあることを信じて立ち向かってゆくんだ。」
彼は手をあわせて祈るように頭を下げた。
「私が君たちに伝えられることはこれで全てだ。」
しばらく、焚き火の音だけが響いた。誰も身じろぎすらできなかった。
焚き火がはじけて大きな音を立てた。




