第2部 第10章
足元が暗くなる前にキツイ山道は終わり、なだらかな平地に戻ってきた。
「丁度いい時間じゃないか? 日が暮れてきた。そろそろシャーマンの準備もできただろう。」
日は地平線に沈み、わずかな名残りだけの明るさだった。
遠くに見えるピティに付く頃には星が見え始めた。
ピティに近づくと、わかっていたかのようにシャーマンが入り口の布を上げて中に入るように促した。
ピティの中は思ったより広く、真ん中には焚き火が炊かれていた。骨組みの木から、鳥の羽が下げられ、地面には毛皮が敷かれていた。
ギルは動物の毛皮を踏みつけることに躊躇したが、毛皮から憎しみの感情を感じなかったのでみんなと同じにその上に座った。
「君たちは、滝に行ったね。あの場所はとても神聖な場所だ。この辺りの人間でも存在すら知らない人たちもいっぱいいる。」
シャーマンは低い感情のない声でいった。
「あそこの動植物は何一つ傷つけていません。」
アランが慌てていった。神聖なる儀式を行うシャーマンに聖地を荒らした不届き者だと思われたくなかった。
「虹が出てました。」
キャッシーも少し焦っていった。
「虹?」
シャーマンは目を閉じて何かを聞いていた。
「君たちは精霊に認められたらしい。」
シャーマンは相変らず感情のない低い声でいった。その話し方、声、すべてがとても静かで、とても威圧感を感じた。彼の前では何も隠せない。人が自分の心を全て見透かされる時はこんな恐怖を感じるのだろう。彼といると恐怖に近い緊張感が漂う。
しばらく何かを聞いているように目を閉じてじっとしていた。
ギルは自分の膝を抱えて顔をうずめ、上目遣いでじっと彼を見た。
焚き火の光で照らされた彼の顔。そして炎で揺らめく彼の大きな影。
「地球はただの岩の塊ではない。地球は生命体だ。」
静かに口を開いた。
「ヘビが脱皮をして古いものを脱ぎ捨て、新しい皮膚で生まれ変わるように、地球も古いものを脱ぎ捨てないと、生まれ変われない。」
アランが息を飲んだ。




