第2部 第7章
「どうやらあの家のようだ。」
森の木々に囲まれた平地にログハウスの家と、その横にピティがあった。
「ライブラリで観たシャーマンの生活そのものだわ。」
キャッシーは車から降りて、珍しそうに辺りを見回した。
ピティの前の丸太に男が座っていた。
「彼がホーク・ウィスパラー。シャーマンだ。」
アランが彼に近づいたが、彼はずっと木を削っていた。
彼は不思議な雰囲気をかもし出していた。威圧感とでもいうのだろうか、とても大きな存在感で容易に近づけなかった。3人は車から降りたままアランと彼を見ていた。
声をかけようとした時、彼が顔をあげた。
「君たちが来ることはわかっていたよ。聞きたいことも。」
アランに向けられた目は鋭く、本当にホークの目に見えた。アランは何もいえずに立ち止まった。
「セレモニーは日が落ちてからだ。夕方になったら来るがいい。」
それだけいうと、削っていた木を持ってピティに入ってしまった。
アランは仕方なく車に戻った。
「すごい緊張感だ・・・。野生のオオカミのボス並みの威圧感だ。」
アランは車まで戻ると大きく息をした。
「君はあの人を知ってるね。」
ルシファは自分の服をしっかりと握っているギルにいった。
ギルは頷いた。
「あの人・・・。僕のお父さんだ。」
3人は息を飲んだ。
しばらく、ギルの様子を見つめてた。ギルはルシファの服を強くつかんだまま立っていた。
アランがギルに近づいた。
「帰ろうか?」
ギルは大きく何度も首を横に振った。また、自分のせいでみんなに迷惑をかけたくなかった。
「ルシファ。僕、『お父さん』と話がしたい。僕のこと、話してくれる?」
母との過去もしっかりと清算し、何かを振り切ったようなギル。おそらくここで『父』と話さなかったら、いつまでも後悔だけが残るだろう。
「いいよ。セレモニーが終わったら話してみよう。」
ギルはうれしそうに微笑んでルシファの服を離した。
アランは不安だったがギルとルシファが決めたことなので、それが1番いいことなのだろうと思った。
「日が暮れるまで時間があるね。どうしよう。」
アランが太いたくましい腕にしている時計を見た。
「この先にきれいな滝があるよ。」
ギルが笑っていった。
ギルの明るい顔を見てキャッシーも安心した。
「行ってみようか。」
ギルとキャッシーは走り出した。
「いいのか?」
アランがルシファにいった。
「母の記憶を追ってるんだ。閉じ込められて、殴られて、そんな彼が唯一楽しみにしていたきれいな自然の母の記憶をね。」
楽しそうに走っていく二人を見た。
「人の記憶じゃない、自分の体験にしてやりたい。」
ルシファは二人の方へ歩き出した。




