第2部 第5章
アランが用意してくれた部屋はジーンリッチ用のロッジだった。
他の建物はログハウスなのに、このロッジだけは殺菌のクロス張りだった。
「ログハウスじゃないんだね。」
ちょっと残念そうにいった。
「ここはヴィレッジの様に野生を知りたいジーンリッチも受け入れてる。設備も整えてあるんだよ。」
「沢山のジーンリッチがここに来て自然を学べるといいね。」
フカフカのベッドに横になって、大きな枕を抱きしめた。
「君は本当に自然が大好きなんだね。」
「大好き。」
「よく生肉を食べるオオカミを見られるものだ。私は苦手だよ。」
「僕だってあまり気持ちのいいものじゃないよ。でも生きていくためには仕方ないんだよね。」
「私は割り切れない。」
ルシファも隣のベッドに横になって天井を見つめた。
「人間が生物のピラミッドの頂点にいて、動物にはない知性を持っているのは、何故なのか時々考えるよ。」
ギルは枕を避けてルシファを見た。
「人間が特別なのは動物や自然を支配するためじゃない。彼らを助けるためじゃないかと思うんだ。」
どういうことだろう。
「動物たちはいつ自分が餌になるかわからない状況で生きている。飢え、怪我の苦しみもある。人間はそれを避けたくて文明を発展させ、飢えない生活、殺されない生活を開発してきた。」
ルシファがギルに顔を向けた。
「ジーンリッチの軟弱さは嫌気がさしてるけど、文明の発達を全て否定しているわけじゃない。おかげで自分の家族や友人が明日誰かの餌になるなんて心配なくなったんだから。ただ、それを当然だと思って、その見返りに自然を破壊する乱開発することを何とも思わないのは間違ってる。自分たちが得た安心な生活を自分達だけがむさぼってないで、本当はそれを人間以外にも還元するべきなんじゃないかと思うよ。」
ギルはベッドを飛び降りてルシファの手を取った。
「ルシファすごい。やっぱり僕が大好きなルシファだ。」
「なんだよ急に。」
驚いてルシファは起き上がった。
「ライブラリで環境汚染や乱開発で自然が壊されていくのを見たら、人間なんてこの世界にいちゃいけない存在に思えてきちゃったよ。でも本当は壊すためじゃなく、守るために存在してるんだね。」
「でも、人間はまだまだそんな考え持っていない。守ろうと思ってシカも森も破壊してしまうくらい勉強不足な状態だよ。」
「僕、もっと自然や人間を知りたい。人間の存在が地球にとって『いらないもの』なんかじゃなく『必要なもの』になりたい。」
「それは『自分』のことかい?」
ルシファが自分の手に乗せられたギルの手を握った。
母に「お前さえいなければ」とののしられ、「いらないもの」扱いを受けていた。その自分が「必要なもの」になりたいということなのだろうか?
「少なくても私には君は必要なものだよ。」
ギルは照れくさくなってルシファの手を離した。




