第2部 第4章
オオカミの食事は少なからずショッキングだった。
原型を留めてはいないとはいえ、血と骨の付いたシカの肉をオオカミが群がり、互いに引っ張り合い、引きちぎって食べていた。
「自然は過酷なんだ。ただかわいい。きれいだけじゃない。いつでも生存競争をし、死と向かい合わせで生きている。明日は自分が何かの餌になって死ぬかもしれない。そんな世界で必死に今を生きている。」
ギルは引き裂かれる肉をじっと見つめた。シカの命が今、オオカミに引き継がれている。
「昔ね、シカを守ろうとオオカミが大量に殺されたことがあったんだ。その後どうなったと思う?」
ギルは肉を食べるオオカミからアランに顔を向けて首をかしげた。
「シカはどんどん増えて森中の木を食べつくし、森の木は枯れて、食べ物がなくなったシカは急速に数を減らしたんだ。」
「意味ないじゃない。」
「そうさ。人間はよかれと思ってやったことが、結果シカを飢え死にさせ、森を壊したんだ。自然はよく出来ている。人間が自分の我侭でどうにかできるものじゃない。元の環境に戻すため、今度はオオカミを保護してる。」
「オオカミは森を守ってるんだ。」
「そうだよ。ある国では『大きな神』って書いてオオカミって呼んでいる。オオカミは森を守る神様なんだ。」
「ねえ、アラン。軟弱なジーンリッチはそろそろ疲れてきたんだけど。」
後ろからルシファの声がした。
「悪い、悪い。ギルにいろいろ教えたくて、つい熱が入ってしまったよ。」
つまらなそうに後ろにいる2人に振り返った。
「ギルはすごいわね~。よく大人しくアランの話がきけるわ。」
キャッシーがわざとあくびをしながらいった。
「だってとっても面白いよ。もっと聞きたい。」
「明日でもいいだろ?」
仕方なそうにギルは黙った。




