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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第2部 第3章

「長旅、疲れただろ。ここが保護施設だよ。」


 広々とした草原にいくつものログハウスの建物が点在していた。


草原の向こうにはすぐに山が広がっていた。


「広い・・・。」


「オオカミのテリトリーは今ここに広かる草原よりももっと広い。山も彼らのテリトリーだ。」


 ギルは両手を広げて思いっきり草原の空気を吸い込んだ。


「気持ちいい。」


 空気が肺から全身を駆け巡り、エネルギーを満たしてくれるように、体も喜んでいる。


「初めはもうすぐ野生に返すオオカミを見せてあげよう。」


「おいおい、休みもなしに案内が始るの?」


 ルシファは不平をいった。


「何をいってもムダよ。オオカミのこととなると人が変わるんだから。」


 キャッシーが諦めるようにいった。


 颯爽と歩くアランについていくと、柵に囲まれた広い敷地に入った。


「ここのオオカミはもうすぐ野生に返すから、人間に慣れていない。オオカミ本来の生態が見られるよ。」


 柵の中とはいえ、入り口に近いベンチに座った。


 10頭ほどいるオオカミは思い思いに地面にふせたり、仲間とじゃれたりしていたが、人間が入ってきたことを横目で確かめていた。


 その中の1頭が顔を地面すれすれに下げて、じっとこちらを見ながらゆっくりと近寄ってきた。


「ここのリーダーだよ。ああやって、俺達のことを観察している。」


「おいでっていってる。」


 ギルはベンチから立ち上がるとそのオオカミに近づいて行った。


「おい、ギル! 危ないよ。」


 しかし、近づいてきたオオカミはギルが近寄ると先導するように向きを変えて歩き出した。


「大丈夫だよ。彼は僕たちに何かを見せたがってる。」


「マジかよ・・・。」


 アランは他のオオカミ達を刺激しないように足音を出来るだけ立てないように大またでギルの後を追った。


 オオカミに導かれるままに歩いていると柵まで来てしまった。本当はこの柵のもっと先まで案内したいようだった。


「ごめん、君のいいたいこと、よくわからないよ。」


 ギルは足元のオオカミに謝った。何かをいいたがっている。何かを見せたがっている。それはわかるのだが、はっきりその内容まではわからなかった。


「この先に何があるんだろう?」


「こっちの方向には特に何もないと思うけどな・・。」


 アランが顎に手を当てて悩んだ。


「あるとすれば明日行くシャーマンの所がこっち方面だというだけだな。」


 足元のオオカミをみると、役目が終わったかのようにどこかに行ってしまった。


「そのシャーマンに会わせたいんだ。」


 ギルは確信した。




「大丈夫? 襲われなかった?」


 ベンチで待っていたキャッシーは戻ってきた2人の体を隅から隅まで見回した。

「いや、びっくりしたね。初めて見る行動だったよ。」


 アランは振り向いて、いつもどおりのオオカミ達を見た。


「オオカミとお話できたの?」


 ルシファがギルに聞いた。ルシファはシャーマンの話を聞きたくなさそうだったので適当に答えた。


「僕たちに何かを見せたいみたいなんだけど、よくわからなかった。」


「おっとこんな時間だ。夕食にしなきゃ。」


「もう?」


「私たちじゃなくてオオカミのよ。」


 キャッシーがため息混じりにいった。



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