第2部 第2章
外のベンチに座っていると、程なく車が横付けされ、アランが窓から顔を出した。
助手席のキャッシーが身を乗り出した。
「お待たせ。乗って。」
2人が乗り込むとアランはアクセルを踏んだ。
「ここから約2時間のドライブだ。」
「おやつもあるから心配しないでね。」
キャッシーが紙袋を見せた。
「今回のプランはすごいよ。今日は保護施設でオオカミと戯れて、明日はシャーマンの所へ行こう。」
アランが全開の窓から入る風の音に負けない大きな声で言った。
「シャーマン?」
初めて聞く言葉にギルは首をかしげた。
「ナチャラルの中のナチュラルよ。自然と共に生きて、自然や見えないスピリットと話ができるの。」
「動物とも? 花とも?」
ギルは目を輝かせた。
「もちろん。それだけじゃなくて目に見えない、彼らはスピリットって呼んでる存在とも話が出来て、人の病気がわかったり、悩みがわかったり、未来がわかったりするのよ。」
「すごい。魔法使いみたいだ。」
「そうね。魔法使いに近いかな。」
「キャッシーは会ったことあるの?」
「私も今回初めてよ、ワクワクするわ。」
「ルシファは?」
「ないよ。」
そっけなくいった。
「実は俺も初めて会うんだ。友人が教えてくれてね。でもシャーマンってのは必要なときにしか会えないないらしいぜ。予約なんて一切なし。行っても会えない可能性もある。」
そしたらみんなでドライブを楽しむだけでも十分楽しい。
「ルシファ、君ももちろん行くだろ?」
アランがちらりとルシファの様子を伺った。
「一人でオオカミの世話をさせられたくないからね。でもアラン、ギルをダシに使うのは卑怯じゃないか?」
「そうでもしなきゃ、君は行かないだろ?」
「ルシファは会いたくないの?」
不服そうなルシファが気になった。
「乗り気ではないよ。」
それ以上話を続けたくなさそうに外の景色に顔を向けた。
「いい加減、腹をすえたらどうなんだ? 俺にはどうして君が目をそむけるのかわからないよ。」
ルシファは無視した。
「ギル、オオカミに会う前に注意事項を言っておこう。」
アランが話題を変えた。
「保護施設にいるオオカミは野生に帰すことを目的としている。人間がかかわるのは最小限。愛玩動物のように人間が何から何まで世話するわけじゃない。」
ルシファの様子が気になったが、アランの方に向いた。
「人間に慣れ過ぎると野生で生きていけなくなる。」
「どうして?」
「人間から餌をもらうのが当たり前になったら、野生で獲物を獲ることができなくなる。かわいいから、かわいそうだからって人間が世話をすると逆に野生で生きていけなくなってかわいそうな目にあわせてしまう。」
それはまるでジーンリッチのようだった。病気をおそれて殺菌ばかりして、ワクチンなしでは自然に触れられない体になってしまった。
「人間から餌をもらうことを学んだオオカミは獲物が獲れなかった時に、人間の住んでいるところに獲物を求めてやってきて、家畜やペットを襲う悪者になってしまうんだ。」
アランの話は楽しいだけでは聞いていられない、悲しい現実を教えてくれた。それでもオオカミを愛し続けるアランがとても好きだった。




