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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第83章

キャッシーはいつもポニーテールにしてる髪を降ろしてアランからもらったペンダントをしていた。ピンクがかったペンダントは髪を下ろしたキャッシーを女性らしくしていた。


「キャッシー、なんだかかわいい。」


「本当? うれしいわ。ルシファもアランもそんなこといってくれないのよ。」


「悪かったね。鈍感な男で。」


 既にソファに座っていたアランがいった。


「おめでとう、ギル。」


 ソファから立ち上がるとしっかりとした大きな手で握手した。


「その石、君の黒髪よく似合ってる。」


 アランが額を見つめた。


「あら、私は褒めないで、ギルの石は褒めるの? でも、ルシファが選んだにしてはセンスいいわね。あなたにぴったりよ。」


 キャッシーも並んで額の石を見つめた。


 何だか落ち着かなくて、前髪をいじった。


「どう? 私の力作よ。」


 キャッシーはケーキをギルの目の前に差し出した。


「すごい、こんなかわいいのキャッシーが作ったの?」


 丸いデコレーションケーキにはラズベリーとミントの葉が彩りよく乗っていて、真ん中にはろうそくが立てられていた。


「もちろん私が愛情込めて作ったのよ。だってあなたの誕生祝いよ。」


 テーブルに置くとろうそくに火を点けた。


「さあ、吹き消して。」


 3人が見つめる中、照れくさく感じたが、思いっきり一息で吹き消した。


「来年は2本同時に吹き消すんだよ。」


 アランが頭を撫でていった。


「アランは何本吹き消したの?」


「男に年齢を聞くんじゃない。」


「じゃあ、キャッシーは?」


「今年は18本よ。」


「嘘をつくときにはバレない程度についた方がいいよ。」


 ルシファが茶々を入れた。


「まったく! ギル。食べましょう。あなたがみんなに配って。」


 ケーキナイフを渡された。


 以前、ナイフを見ただけで怖かった。持つと手が震えた。それなのに今はなんともない。それどころか、みんなでケーキを食べるのに必要でありがたいものだという気分になった。


 できるだけ上に乗ってるきれいなラズベリーとミントが崩れないように慎重に切った。


「はい。キャッシーが1番大きいの。」


 均等に切ったつもりでも大きさが若干違った。


「ギル。よくキャッシーにしつけされてるね。」


 アランが感心した。


「失礼ね。」


「ラズベリーがいっぱい乗ってるのはアラン。」


 取り分けたお皿をアランの前に置いた。


「どうして俺はラズベリーなんだい?」


「だってラズベリーってキャッシーみたいじゃない?」


 ルシファが笑い出した。


「ギル、君は最高だよ。」


 アランとキャッシーは顔をあわせて赤らんだ。


「きれいに切れた方がルシファ。」


 みんなの前にケーキが揃った。


「じゃあ、ギルの誕生を祝って乾杯!」


 キャッシーの音頭でグラスを合わせた。祝福するようにきれいな音を立てた。


 1番大きなラズベリーを食べると、初めてラズベリーを食べた時のことを思い出した。


 ルシファが手に蚯蚓腫れを作って、キャッシーが作ってくれたラズベリーパイ。


 あの時、自分がどんな状態か把握できていなかった。新しい世界が見え始めたばかり、まだ不安と恐怖に怯えていた。


 あれからそんなに時はたっていないはずなのに、こんなに世界が、自分が変わった。


「みんな、ありがとう。夢みたいだ。少し前まで、想像も出来なかったくらい、今、とっても幸せなんだ。こんなに優しい人たちと一緒にいられるなんて・・・。」


 ギルはなぜか涙が溢れてきた。


「もうあなたの新しい世界がスタートしたの。これからもっともっと楽しいことが沢山あるのよ。でももし、何か辛いことが起きた時には、私達がいることちゃんと思い出してね。あなたは一人じゃない。」


 キャッシーの言葉に更に涙が止まらなくなった。


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