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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第80章

「ジーンリッチになるには、1つやってももらわなきゃならないことがある。」


 報告書が上がって、2人が帰った後、ルシファがいった。


「人造人間の私がジーンリッチになるために、戸籍上は私を創った研究者が父になったって話したよね。」


 石は全て登録され管理される。戸籍、年齢、住所、血液型、その他あらゆる情報が石に登録され、マザーコンピュータにインプットされる。


「君が石を手に入れるには、誰かの戸籍に入らなくちゃいけない。養子縁組のようなものだね。そこで血縁の誰かに保証人になってもらわなくちゃいけないんだけど、君のお父さんはわからないし、お母さんは意思決定不可の状態。そこで決定できるのは私の父なんだけど、父は私に関する全てを自分の弟に任せている。」


 ギルはややこしくて正直よくわからなかった。


「私には叔父に当る人。彼が保証人にならないと、君は私の戸籍に入れない。」


「ルシファの戸籍?」


「そう。私の弟あたりでどう?」


「僕が・・・ルシファの弟?」


「石を登録するためだけの戸籍だよ。嫌かい?」


 ギルは力いっぱい首を振った。


 ルシファと家族になれるんだ。ギルはうれしさに体がうずうずした。


「そこで、叔父は保証人になることは承諾済みなんだけど、1度も会ってない人の保証人っていうのもね。だから1度叔父に会って欲しい。」


「叔父さんってどんな人?」


 一人ぼっちだと思っていた過去が嘘のように家族が出来ていく。


「優しい人だよ。怖くないから安心していい。」


「お父さんは?」


 ルシファの表情が冷たくなった。


 どうしてルシファはお父さんの事は話したがらないのだろう? 聞いてはいけなかったのかもしれない。


「戸籍上とはいえ君にとっても父になるわけだからね。あまり覚えてないけど、覚えてる範囲で話してあげるよ。」


 そういって無表情のまま話し始めた。


「彼は宇宙が好きでね、今頃は宇宙船で空に浮いてると思うよ。・・・私が創られたのはおそらく地上だと思うけど。研究室なんて地上でも宇宙でも同じだから、よくわからない。ガラスケースから出された私を世話してくれたのは入れ替わり立ち代り、いつも違う研究員達だった。」


 ルシファもラボのような所にいたってこと?


「父は私を自分の助手にしたけど、私は全くその仕事に興味がなかった。」


 あまりにも遠い記憶を探し出すように、遠くを見つめて、無表情のまま話している。


「あの宇宙船の中には生物がいないんだよ。いるのは生物になる細胞組織だけ。培養すれば生物になる。その原型しかいない。顕微鏡、シャーレ、試験管。無機質な物ばかり。私もそうやって創られたのかと思うと気が滅入ってね。私は父の助手を辞めてこうして呑気に生活している。父の元を離れる時、父は叔父に私を任せた。もともと彼は子供が欲しかったわけではなく、助手を創りたかったわけだから、失敗作の私には係わる気はない。」


 思い出せるのはそれだけだというように、視線をギルに戻した。


「失敗作って、そんな・・・。」


「父は自分の右腕となる助手を創りたかったんだ。失敗作だよ。でもだからって父に辛く当られたわけじゃないよ。彼は私のこの呑気な生活を責めるわけでもなくこの家と資産を私に与えたんだから。」


 悲しそうな顔をしているギルに微笑んだ。


「君は私が父を嫌ってると思ってるでしょ? 別に私も父も特に愛着がないだけで憎みあってるわけじゃないんだよ。」


 複雑すぎてよくわからなかった。



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