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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第79章

「何、笑ってんの?」


 まるでその様子を見ていたかのようにルシファの声がした。


 振り向くとすこし足を引きずるようにルシファが玄関を出てきた。


「さしあたり、私を肴に盛り上がってたんだろ?」


「察しがいいね。その通りだよ。」


「まったく、一休みしようと部屋を出たら外から馬鹿笑いが聞こえたよ。」


「ほら、聞いてごらんなさい。」


 キャッシーが肩を掴んでギルをルシファの方に向けた。


 ルシファはどんな状況だかわからずにうつむくギルを見た。


「僕・・・。ジーンリッチになる。」


 顔を上げた。


「でも、その後、僕、どうなるの?」


 ルシファは首をかしげた。


「知るわけないだろ。」


 状況のまるでわかってないルシファはきっぱりいった。


 キャッシーが抑えきれずに大爆笑した。


「ひどい! ひどいわルシファ!」


 キャッシーが笑い転げながら叫んだ。


「だってそうだろ? ギルの人生だ、私にわかるわけがない。」


 困ったようにルシファは答えた。


 何もいえずに呆然と立ち尽くすギルにアランが助け舟を出した。


「この子はね、ジーンリッチになったら君の目的達成で、自分はもう君といる理由がなくなって、一緒にいられなくなるんじゃないかって心配してるんだ。」


 ルシファはまた首をかしげた。


「そんなこと考えてたの?」


 2人と同じ反応。「どうして一緒にいられなくなるなんて思うの?」


「ルシファといていいの? ずっと一緒にいてくれるの?」


 ギルはすがるようにルシファを見上げた。


「一緒にいよう。君が嫌だと思わない限りね。」


「本当に? 本当に一緒にいていいの?」


「ああ。私は一緒にいて欲しい。」


 ルシファの微笑みに不安が消えた。ギルは輝く目でアランとキャッシーに振り向いた。


「いいね~。愛の告白。結婚式の立会人になった気分だよ。」


 アランがうっとりといった。


「そんなロマンチックなことはこんな顔じゃない時にしたいものだよ。」


 ギルの額の傷を確認するように前髪をすいた。


 ギルはルシファの顔の傷をじっと見た。こうなることを覚悟の上で一緒にいてくれたんだ。


「人のこと茶化してる場合じゃないだろ。自分はどうなんだい?」


 突然振られてアランの顔が赤くなった。


 心を落ち着かせるように大きく息を吐くと、胸ポケットから小さな箱を取り出した。


 キャッシーはヴィレッジで会ってから、彼の胸ポケットに何かがずっと入ってるのが気になっていた。


「君にずっと贈ろうと思ってたんだ。受け取ってくれるかい?」


 差し出された箱を少し震える手で受け取った。


 箱の中はキャッシーの額の石に近い色だが、少し赤味が抑えられれピンクがかった涙型の石のペンダントが入っていた。


「かわいい。」


 早速つけようと首に回したが、手が震えていてチェーンがうまくつけられない。


 代わりにアランがつけている間、キャッシーは少し震えながらじっと立っていた。


 草花は2人を祝福するように揺れていた。


「はい。どう?」


 胸に下がる赤みを帯びたピンク色のペンダントが、日の光を受けてキラキラと輝いていた。


「ありがとう、アラン。」


 突然キャッシーはアランに抱きついて頬にキスした。


「なかなかいい結婚式に立ち合えてうれしい限りだ。ね、ギル。」


 ルシファがうれしそうにギルを見た。ギルはルシファの仲人はなかなかすごいと思った。


 慌ててキャッシーはアランから離れた。


「どう? 似合う?」


照れ隠しにギルの方に向いた。日の光を受けてキラキラ輝くペンダントは、情熱的な赤色にかわいらしいピンクをまとっている。そのせいか、キャッシーが女らしく見えた。


「キャッシーがかわいく見える。」


「それって褒め言葉なの? いつもは違うみたいじゃない?」


「いつも以上にかわいく見える!」


 ギルは即、訂正した。



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