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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第76章

「自殺というよりは事故だね。」


 ルシファがいった。


 ギルは我に返った。その顔は怯えていた。


「本当にあんな事、起きるの?」


 ルシファは横になったまま手を伸ばして石を受け取った。


「さあ。わからないよ。でも世界中で異常気象や災害が起きているのは本当だ。今、ヴィレッジの研究者が分析している。おそらく、ヴィレッジ以外の人たちも異常に気付いた者は何かしらしてるだろう。」


 ギルは怯えた目でルシファを見た。


「私たちは研究者じゃない。彼らが何かを見つけるまでどうすることもできないよ。今は待つしかない。心配したってしょうがない。」


 ゆっくりと体を起こした。体中の筋肉が痛んで、ぎこちない動きしかできない。


「痛い?」


 ギルは申し訳なくて上目遣いでルシファを見上げた。


「キャッシーに軟弱だといわれるだけのことはある。でも君と対等に遣り合えたと思うよ。」


 微笑むルシファの腫れた顔が痛々しかった。


「さて、報告書をまとめてる間、君は何してる?」


 首に手をあてて肩や首をまわした。


「キャッシーに会いたいな。」


 ボソリといった。きっと心配してる。ちゃんと謝りたかったし、キャッシーに聞いてみたいことがあった。


「キャッシーだけじゃなきゃ駄目?」


 意味がわからなくてギルは首をかしげた。


「アランと二人っきりの楽しい時間を邪魔しちゃ悪いだろ?」


「え? キャッシーはアランが好きなの?」


「君の鈍感ぶりは見事だ。誰が見たってそうだよ。否定してるのは本人達だけ。」


 ルシファは腕を組んで肩をすくめた。


「全く、ジーンリッチだナチュラルだなんていってないで、好きなら好きでいいじゃないかと思うけどね。」


 組んだ腕をほどいて宙に上げた。


 ギルはうつむいた。ジーンリッチとナチュラルはあまりにも体が違いすぎる。アランが普通に暮らしている世界でジーンリッチはワクチンなしで生きられない。


 そう簡単には気持ちのままには行かないのだろう。


「邪魔しちゃ悪いね。」


「アランもここに来ればいい。2人でいられればどこだっていいんじゃないの?」


 あっけらかんとルシファがいった。


「ルシファは強いからそんなふうにいえるだろうけど・・・。」


「強い弱いなんて関係ないさ。自分の心に嘘をつくほうが辛いことだと思うよ。常識に縛られて自分を押さえつけて、後で後悔するより、当って砕けた方がすっきりするよ。」


「だからルシファは強いっていってるの!」


 ルシファは全く聞いていなかった。机の所に行くと何やら機械をいじった。


「やあ、キャッシー。」


 机の上の画面にキャッシーが映った。


「あら、ボコボコにやられた美形さん、何かしら?」


「まだ怒ってるの?」


 キャッシーは横目で睨んだ。


「アランもいるんだろ?」


「いるよ。」


 画面には映らないアランの声がした。


「今から私は珍しく仕事をするんで、暇があればギルの相手に来て欲しいんだけど。」


「俺も行っていいか?」


 突然画面にアランが現われ、ギルと目が会うと笑顔で手を振った。


「アランもきてくれるなんてうれしい。」


「私は?」


 画面にキャッシーのアップが映った。


「もちろん。キャッシーに会いたい。」


 ギルの無邪気な答えにキャッシーのご機嫌はすぐに治った。


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