第1部 第75章
「どこか安全な土地は・・・。」
狂ったようにいろいろなデータを検索した。
ピックアップした10箇所は少なくとも大きな地震が来る。地震が起きればプレートも刺激されて山は噴火を起こすだろう。海岸沿いは津波がくる。
他に考えられる条件は?
地震や津波で化学工場が被害を受ければそこから有毒な物質が漏れるだろう。放射能なんかが漏れたらもう手をつけられない。見えない毒は気流、海流に乗って地球中に広がるだろう。
どこでもいい、とりあえず、少しでも安全な土地は?
いろんな土地を検索してみる。
ある土地は異常旱魃によって作物が全滅している。
ある土地は季節外れの豪雪で家が潰されている。
ゲリラ的な集中豪雨による洪水は至る所で起きていた。
「どこにも、逃げ場がない。」
データを検索する手を止めた。
画面には昨日の地震のニュースが流れている。
昨日よりも倒壊したビルが増えている。火災は鎮火したのだろうが、黒くすすけた瓦礫の山が広がっている。遺体なのだろう、毛布に包まれた物体がいくつか瓦礫の間に置かれている。
「僕も1年以内にはああなるっていうのか?」
ガラスの破片が飛び散っている。あの上を歩くなんて無理だ。
なんだよ、あのコンクリートの塊は。あんなの落ちてきたらぐちゃぐちゃじゃないか。
ヘタに足だけ潰されたら、痛くても動きが取れないじゃないか。
あの瓦礫の中の空間に閉じ込められたら? 近くで火が燃えていたら、生きたまま蒸し焼きかよ。
自然と画面から離れるように後ず去った。
「うそだろ? うそだろ?」
画面は地震のニュースから火山のニュースに変わった。どこかの山が噴火したらしい。
「地震のせいか? 地震でプレートが刺激されたせいで噴火したのか?」
プレートはつながっている。どこかが動けばそのしわ寄せがどこかに伝播する。
後ず去っているうちにソファに躓いて床に倒れた。
「狂ってる、気象も磁場も地球も太陽も。みんな狂ってる!」
溶岩が大木を焼きながら押し倒していく。あんなものに飲まれたら大木より早く炭化するだろう。
彼は震え、声も出ないまま、画面の中の地獄から逃れるように、床を這った。
「嫌だ、あんな死に方、嫌だ。」
炎に巻かれる大木。
もう背が壁に当った。これ以上は下がれない。地獄の画面から離れられない。
いきなり画面がまた地震の現場に戻った。生存者がいたらしい。瓦礫の中からぐったりとした人が救助隊の何人かに引っ張られていた。
そして、やっと瓦礫から体が抜けた時、その人の右足がなかった。左足も、ありえない形をしていた。元はそこに足があったという証拠に大量の血があふれ出していた。
「嫌だー!」
彼は必死に逃げようと、力の加減もできずに、窓を開けて身を乗り出すと、自分の体が宙を落ちるのを感じた。




