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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第74章

 目が覚めると機械の画面はスリープしていたが、1晩で必要なデータは落とし込んでいたらしい。


「さて、僕の自慢のソフト、がんばってくれよ。」


 自分が作成した自慢のソフトで解析を開始した。


 機械はフル稼働で静かな音を立てながら必死に解析しているらしい。


「あれだけのデータだからな。かなり疲れるだろうけど、がんばれよ。」


 しかし、彼の予想を遥かに超える時間がたってもまだ解析を続けている。


 このまま画面の前で待っていてもイライラするだけだ。


 機械はフル稼働で、ほかの事をしながら時間をつぶせないので、久々に外に出ることにした。




 最後に外に出たのは一体いつだっただろう。かなり記憶と違う風景になっている。それとも記憶自体が間違っているのか?


 最後に外に出たのは何をしに出たんだっけ?


 街をそぞろ歩く人々が馬鹿馬鹿しく見えて街は嫌いだった。


 何をそんなただの時間つぶしにしかみえないことばかりやっているんだろう。そんな無駄な行為ばかりの人間をみるとつくづくあきれてくる。


 人気の服? すぐに飽きられて捨てられるものに群がって。


 おいしい料理? 別に錠剤飲んでれば空腹だって感じないのに。


 無駄な消費、無駄なおしゃべり、無駄な時間、全てが無駄。


 どうしてそんな無駄なものばかりがあふれているんだろう? どうしてもっと建設的なことに時間を使わないんだ?


 喫茶店でお茶を飲みながらおしゃべりしている女性客、彼女たちはそのおしゃべりから何かを得られたのだろうか? ただの時間つぶしなんだろ? 


夜寝るまでの時間つぶし、死ぬまでの時間つぶし。無駄な時間、無駄な人生。


 自分はそんなごみのような人間にはなりたくなかった。


 街にいるのも疲れてきて、早々に部屋に戻った。


 やはり、この空間は落ち着く。


 スリープしてる画面に触れると、画面が明るくなった。


「嘘だろ?・・・。」


 解析は終わったらしい。映し出された世界地図のラウンドマーク10箇所が全て真っ赤になっている。


「マグネチュード10以上、1年以内で設定して、ピックアップした10箇所全部が100パーセントって・・・。」


 自分が開発したこのソフトに何か重大な欠陥があるのか? そんなはずはない。


 ぶち込んだデータが間違っていたのか?


 まず磁場の情報を取り出して目を通す。


「磁場が・・・磁場が急速に弱くなっている。」


 地球上の磁場の様子を時間を追ったシュミレーションで見てみた。


「狂ってる・・・。」


磁場の強弱がうねりながら変化しているが、確実に色が薄くなってきて、弱まってきている。そのうねりは巨大な怪物が地球の上をのたうってるようだった。


磁場の関連記事として、イルカやクジラが座礁した件数も2年ほど前から急激に増えている。渡り鳥の落下も同じく増えている。いくつもの事象がピックアップされた。


データの数字だけじゃない。実際にもう起きている。


「磁場が弱くなったら、太陽フレアや宇宙からのいろんな光線がダイレクトに地球に届いてしまう。」


 有害な宇宙の放射能、太陽のフレアによる更なる電磁異常。地球の磁場は宇宙から身を守るバリアのような働きをしている。それが薄れてきてる。


「このまま磁場が消えていったら、地球はズタズタになる。」


 まずすぐに影響が出るのが太陽フレアによる電波故障。


 慌てて太陽のデータをあさる。


「地球の磁場だけじゃない。太陽も狂ってる。」


 太陽の黒点は過去類をみないほどに、その数の変動が大きくなっている。


太陽フレアもXクラスが増えている。


 太陽からの影響を和らげるバリアが薄くなってきているのに、地球に向かって放たれる影響は大きくなっている。


「このまま、進めば、マトモに電気系統が動かなくなる。」


 太陽フレアによる電気異常を調べると、大規模な停電、コンピュータの誤作動、通信不能の事故が多発してきていた。


「電気が使えなくなったら、どうなるんだ?」


 こうして毎日向かっている画面はブラックアウトしたままだ。錠剤の供給も滞る。室温管理はされないだろう。外が暑ければこの部屋も暑くなる。池が凍ればこの部屋も凍ることになる。空調管理もされずに、雑菌だらけの空気になるだろう。電気が使えない状態が3日も続けば間違いなく死に至る。


 彼は背筋が凍った。


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