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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第73章

 画面ではビルが倒壊し、あちこちに火が燃えている。上空から映し出されたその風景の中、何機ものヘリコプターが横切って行く。


 ヘリのプロペラの音、風の音の中、アナウンサーが何か叫んでいる。


 画面下方のテロップではマグニチュード7の文字が現れた。


 騒然とした画面を見ながら、彼は満足げに微笑んだ。


「だからいったじゃないか。あの地区で今日、地震がくるって。」


 祝杯をあげるようにグラスに注いだ液体越しに瓦礫と化したビルを見た。炭酸の泡が昇っていく。


 別な画面を立ち上げると沢山の文字が流れた。


「すごいよ。ぴったり今日だ。」


「マグニチュードまで当たってる。」


「なんでわかるの~?」


「ぜひ俺が住んでる地区も予想してくれ。」


 彼の地震予想の的中を褒め称える書き込みが次から次へと流れた。


「僕の予想はその辺の地質学者や気象屋なんかとは違う。気象、磁場、地形、温度、湿度、宇宙にある月の位置、惑星の位置、太陽風、その他にもいろんな事象を勘案して打ち出したデータだ。外れるわけがない。」


 書き込みを満足しながら眺めていた。


 その中にちょっとひっかかる文があった。


「そんなちんけな特定地域じゃなく、世界中の地震を予想してみれば?」


----「ちんけ」だと?----


 特に悪意のある書き込みではないのだろうが、何とも神経にさわった。


「地震はプレートの動きだけでいつ起こるかなんてわかるわけじゃない。そう簡単に広範囲の地域なんか無理に決まってるだろ。」


 吐き捨てるようにいったが、自分の口で「無理」という言葉が出たことが気に入らなかった。


「面白そうじゃないか。やってみるかい?」


 グラスを飲み干すと地震のニュースを消した。




 まずは地球のプレートのデータ。地形等地質的な情報をかき集めた。


 そして世界各国の過去の地震データ。


 これは非常に情報量が多く、時間がかかる。特定地域であってもかなりのデータになる。世界各国となると膨大すぎる。とりあえずはプレートの位置からいくつかの拠点をピックアップしてその地区だけに絞ることにした。地域に偏りがないように、地球の満遍なくいろいろな地域を選ぶ。


「とりあえず10箇所でスタートするか。」


 ピックアップした10箇所の過去データを拾う。


「なんだよこれ、今年になってからどこでも地震が増えてる。過去データ消えてるわけじゃないよな。」


 流れるデータを見ながらその膨大な量に少し絶望的な感じを受けた。


「次は気象データ。」


 10箇所の気象データを検索。その他、いつも使っているデータの世界10箇所のデータを検索して取り込んでいく。


「さすがに時間がかかるね。」


 機械をそのままにして今夜は寝ることにした。



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